「真冬のさよなら」
「これで最後……なのね」
わたしは毛糸の手袋で包まれた両手にハァとあたたかい息をふきかけながら、寂れた商店街の片隅に佇んでいた。目の前には不機嫌そうに眉をしかめるクラスメイトの男の子。
「ねぇ、全部なかったことにして、もう一度、初めからやり直すことはできないのかな……?」
上目遣いに、彼をみつめる。どうしても、わたしにはあきらめることが出来なかったから。
「そんなこと、出来るわけがないだろう?」
彼は無情に首を横に振った。
「だって、いくらなんでも、ひどすぎると思う」
……三十回もしたのに。なのに、そんなに冷たい顔で終わりを告げるなんて。彼には情という物がないのだろうか。わたしが、これほど想っているのに。恋焦がれているのに。
「……いつまでそこでそうしているつもりなんだ?」
「ねぇ、お願い! もう少しだけ、待って」
わたしは小さく深呼吸して気持ちを落ち着けようとした。
「……じゃあ、いくね」
神様、お願い。奇跡を起こして! このままさよならだなんて、そんなの絶対にイヤなの!
カラン、と軽い音を立てて転がった玉の色は白。
「ほら、残念賞のティッシュ。終わったならそこ退けよ。待ってる人いるんだから」
商店街のハッピを着た彼は無情に終わりを告げて、わたしを台の前から押しのけた。
わたしは渡された三十一個目のポケットティッシュを胸に抱えて途方にくれた。
……ニ等賞のクマのぬいぐるみ、すっごく欲しかったのに。ぐすん。
初回でニヤリとできた方は、できればオチを踏まえた上でもう一度最初から読んで主人公の言動を笑ってやってください。かなり無茶苦茶言ってますこの子。
ちなみにこのあと主人公は、商店街のおもちゃ屋で泣き落としして値切ったクマたんを無事にげっとしたようです。