初心者マーク、なおベンツ
こんにちは、のどあめです。
通勤途中で高級住宅地なるところをよく通り抜けします。
田園調布や宝塚、芦屋ほどでは無いのですが、それなりの高級住宅地に並ぶマンションの駐車場から出入りする高級車。ベンツ、アウディ、レクサス、マセラティに稀にリンカーン(狭い二車線道路に収まらない位に縦横に長い。やっぱりアメ車は日本の交通事情にあわんと思う)。はじめは高級車をガン見してはお金持ちっているんだなあ、凄いなあと感心していたものですが慣れって怖い。何とも思わずに通り過ぎる様になりました。
そんなある日のこと。
路上に止まるメルセデスベンツを見かけました。まあ、よくある光景です。
ん?ぺっかぺかのシルバーのかっこいいベンツになんか違和感が。車体を見るとこれまたぺかぺかの若葉マークが貼ってあったんです。
え?思わず二度見した。若葉マークだよ。
三ツ矢サイダーの様なエンブレム(お金持ちのお子様は三分の一をベンツのマークって覚えるらしいんだぜ?それで通じる所が恐ろしい)に立派な車体。前後にしっかりはっきり貼られてる若葉マークは思いきりミスマッチだ。
どんな人が乗るのかなぁ。
やっぱり金持ちの坊ちゃまお嬢様が乗るのかなぁと思いを馳せていて思い出した。
昔々、のどあめが免許を取った時のこと。舞い上がった小娘のどあめは早速、オカンに「車が欲しい」とねだったのだが。
私は周りの友達と同じ様にトヨタか日産やホンダの小回りの利く軽自動車が希望だった。お値段お手頃で、多少擦ったりぶつかってもあまり罪悪感を感じないしね。だって初心者だし。
娘の細やかなお願いにオカンはこう答えた。
「ベンツならいいわよ」
「は?」
オカンは土地つき家つきの元お嬢だった。孫の私が物心ついた頃には「うちは元々どん百姓だから〜」とのんびり自家製野菜作ってた祖父母は、戦後復興の波に乗って景気が良かった頃があったらしい。そんな時に着物に車、更に土地家を与えられた母。たまに経済観念が違いすぎてついていけないことがある。
しかし。横でオトンが頷いている。
「お母さんの言うとおりだぞ。事故があったら生き残れるのはベンツだからな。正面衝突した時に国産車はぐちゃぐちゃになるけどベンツは潰れないらしいぞ。頑丈なベンツにしなさい」「え?」
我が家の中では良識派に属するオトンが。
まあ、だいたい家庭と自分の平穏のために母につく人だったが。
当時はバブル時代。さらに言うとオトンはかなり稼ぎが良い人だった。家のローンが無い分、手持ち資金に余裕があったのだろう。
しかし、想像してみよう。二十歳そこそこの小娘がメルセデスベンツ転がしてるなんて……。そんな分不相応は耐えられないと当時の私〜ほぼ田舎で育った中身はどん百姓の孫〜は思った。第一、おちおち車を傷つけられないじゃないか。
私の中では、ベンツは運転手さんが送迎に使うお高級な車だった。あるいは反で社な方々がおらついて乗る車だ。
「え〜。ベンツは嫌〜」
「ならVOLVOね」
「ええ……」
「VOLVOは頑丈って聞くから」
またごつい車がでてきたよ。
どこの女子が乗るんだよ、そんな車。私の希望は国産の軽か、小さくて可愛いローバーミニ(当時人気だった)なのに。
それでも粘って国産の軽やローバーのちっこい車をおねだりしたが、あえなく却下された。ごつい車に乗ってまで車を運転する気力がなかった私はペーパードライバーになった。
今なら思うけどね。
買ってもらえるうちにベンツでもなんでも買って貰えよって。
メルセデスベンツの子もそんなやりとりがあったのだろうか。
それとも。「〇〇ちゃんはフェラーリ買って貰ったんだって〜、だから私はベンツね!」となったのか。「△△がベンツ買って貰ったんだって。だから僕にも買ってよ〜、出世払いするからさ〜」と親に拝み倒したのか。
はたまた相続対策でぽんとベンツを買い与えられたのだろうか。歩きながら妄想が止まらない。
しばらく行くと、古びたマンションの屋外駐車場に若葉マークの車が。
新車だろうか。ぴかぴかの青い車はトヨタのミニバン。昔の私が乗りたかっただろうコンパクトな車体。
やっぱり、はじめはそうだよね。
ちょっと安心した。
おしまい
(おまけ+加筆)
後日、件のベンツに乗り込む人の姿を見かけた。運転手は嬢ちゃんでも坊ちゃまでも無かった。
外国の方が日本で免許取得して一年未満の場合、若葉マークの標示義務があるそうです。
感想でのやりとりで、若葉マークは自分は外国人だけど高級住宅街に住みベンツを買えるだけの所得がある。そして日本の法を遵守しますというアピールになるなと気がつきました。
そう考えると車体の目立つ位置に若葉マークをべったりつけたのが分かる気がします。
若葉マークといえば免許取り立ての若者のイメージが変わっていくかもしれない。時代の流れを感じます。
金満成金の嬢ちゃん坊ちゃまはいなかったんや。
最後までお読み頂きありがとうございます。




