いつかの未来に、
掲載日:2026/08/02
「終わりだね。」
寂しそうに背中に大きな翼が付いた少女が言う。
翼が西日を優しく裂いている。
海辺を駆けた。山を登った。星を見た。
「楽しかったね。ユーカ。どうだった?」
由翔。天狗の少女。
「そりゃ、楽しかったよ。今更でしょ。」
私の大事な友達だ。
「この夏も、もう終わりだね。」
私はつぶやく。
ずっとこの夏が続いて欲しい。
そう私が願ってしまうから。
でも、これ以上私は居られない。
居ちゃいけない。
「そう、だね。」
夏は終わる。
「200年か。長いなぁ....」
彼女は天狗だから健康にしていれば生きているだろう。
「どんな世界になってるかな?人間が今以上に増えてるか、自滅するか。」
無邪気を装って、悲しい顔を見せないように、喋る。
「知らないことだらけなんだろうね。」
寂しそうな声が返ってきた。200年も経てばいろんな知らないことができる。
私は眠る。長い一年の夏を終わらせるために。
終わらないこの夏の記憶を抱いて。
「遊ぼう!200年後の世界で。」
伏せた君の横顔に声で触れる。
「だから―――――」
だから笑って。何度でも繰り返す夏を待ちわびて、いつかの未来で逢いに来て。
教えて、君の 物語 を。
また、その時まで私は鼓動を続けるから。
二人だけの、物語。




