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じゅんけいさん。  作者: ジョウビタキ子


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情緒が…



前の仕事を辞めて、農業を本格的に手伝い始めた。



長年勤めた前職に別れを告げて

心機一転頑張ろう

そう意気込む気持ちではあるのだが

どこか落ち着かない。



きゅうりの荷詰めをしながら

ざわつく心をため息で誤魔化してみる。



静かだ…。

声がしない。



今まで周りに溢れていた

あの沢山の声。

笑って泣いて語ってと、

人と接し続けてきた日常が

本当に終わったのだと思い知らされた。



自分で終わらせておいて

寂しい…と、

感じてしまったのだ。



勝手な事だ。

新しく道を行くと決めたのは自分なのに、

惜しむ声に感謝しつつも選んだ道なのに、

急に独りになってしまったような…

置いていかれてしまったような感覚。



これはマズイ。



実はこの堂々巡りは4日ほど続いている。



前職では今頃

いろいろな準備をしている頃だな、とか

あ、今昼休憩かな、とか

そんなことばかり考えている。



この気持ちをどう例えたら良いんだろう…



アナウンサーさんがフリーになったら同じ感覚かな?

子猫が親猫から独り立ちする感覚?

昔遊びのかごめで残された感覚にも近い。



とにかく

仕事をしていることには変わりないのに

孤独感が凄まじい。



耳に入ってくる作業音が

今までの当たり前な日常には戻れないのだと

静かに教えてくれている。



風にざわめく木々の音

鳥のさえずり

ビニールの擦れる音

遠くで走る車

低く鳴る機械音



それだけ。



癒しの要素すら感じる音なのに

今の私には不安を煽る音にしか聞こえない。



だめだ。

このままでは日本語を忘れてしまうかもしれない。

なんなら話せなくなって

ほっぺが下がってしまう可能性もある。



人と話したい。

家族ではない誰かと…。



そう。

環境がガラリと変わりすぎて

娘はだいぶおかしくなっていたのだ。











その日の夜。

呼び出した友達はこう言った。



「おかしくなってるな〜とは思ってたんだよね〜」



スマホに表示された文脈からも読み取れたらしい。

とても冷静に話を聞いて

アドバイスしてくれる友達。



「ま、大丈夫〜みんなそんなもんだよ」

「そっか…そんなもんか」



ちょっと安心した娘。



そこで少しだけ余裕が出てきたのか

呼び出した友達の食べているものに目が移る。



卵かけご飯って…

フードコートにあったんだ…

食べてる人

初めて見た。



「美味しい?」

「コレ?美味しいよ〜」



そりゃ良かった。








翌日からはきゅうりのお世話と田植えが重なり

忙しさに忙しさが重なって

忙殺された娘。



そこから

余計なことは考えなくなった。



…とは、

ならないけれど、



休みに入ったら

絶対に美味しいものを

食べにいく



それを目標に

乗り切る事にした娘であった。


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