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じゅんけいさん。  作者: ジョウビタキ子


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かくれんぼ


きゅうりの成長は早い。

1番上の可愛らしい芽が大きくなりながら伸びていき、

そこからまた小さな芽が伸びていく。

このまま成長させておくと、いつかハウスの天井にぶつかるのかしら?



いえいえ。

そんな事にはなりません。



ハウスの天井に届く前に

自身の重みに耐えきれず

バッサバッサと本体をしならせて倒れるんです。



こうなると本当によろしくない。



ボキン…と大切な茎が折れてしまったり、きゅうりの収穫時に人間の顔や体にベシベシと当たってきます。



正直、お邪魔です。



鬱蒼としたジャングルを進んでいる気持ちになります。

肌に当たると、地味に痛いですし…。



だから娘は身を屈め、小さく地面に座り込んだ。



そう…娘の今日のミッションは、きゅうりの茎から要らなくなった葉っぱを取り除くこと。



自分の手より大きなきゅうりの葉を

茎の成長を確認しながら

数枚ずつ摘み落としていきます。



もじゃもじゃと生い茂っていた葉を取り除くと、スッキリとしてすごく気分がいい。



(今日の私は…きゅうりの床屋さんって感じですね)



パチン

パチン パチン

パチ    

パチン



剪定用の鋏の音だけがハウスの中にリズムよく響きます。



単純作業は脳内が暇ですね。

今日のご飯は何にしましょうか。

チョコレート食べたいな。



娘はマイペースに葉をハサミで摘み続けた。



その時……



「…でっか!!」



盛大な独り言が飛び出す。



「…こんなところに…よく今まで隠れてたね〜。ま〜…まるまると太って……」



葉っぱを取り除きながら感心したように呟き続ける。



娘の目線の先には丸々と成長したきゅうり。



きゅうり…4、5本分かな…

それにしてもでかい。

今にも破裂しそう…



しばらく見つめ続けた娘は考えた。



今、娘が収穫すべきか

明日収穫するであろう母へ、サプライズとして残すべきか。





熟考の末、そのままそっときゅうりを残した。



そう、娘にはミッションがあったのだ。



ごめんね。

君を収穫したら一回入り口に戻らなくてはいけない。

私には床屋さんとしての仕事が残っている。

だから…明日収穫してもらってね。



パチン

パチン パチン パチン



また鋏の音だけが響き始める。



茎だけになったゾーンに

ぶらんとぶら下がっている

まんまるきゅうり



本当は収穫した方が良いんですけどね…。

入口までの往復が面倒だったんです。



それにしてもデカかったな…






翌日。



「あーんな、でっかいきゅうりはね。煮物にしたらいい」



どでかくなったかくれんぼきゅうりは、母の手によって煮物になった。



意外と美味しかった。


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