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Astrolibra (アストロリブラ)  作者: 夢想の月
1.小さな少年の物語
3/26

2.3枚に釣り合う価値を

問題は、材料だった。


パンなら、なんとかなったはずだ。

けれど——砂糖は、ない。


リトの家には、お金がなかった。

砂糖なんて高級品どころか、“甘いもの”というもの自体が、一つも置いてなかった。


掲示板の前で、何日も、何時間も。

「なんとかなるはずだ」と言い聞かせながら、かじりつくように、依頼の札を見つめていた。


そんなある日——


「リトくん、良い依頼があるよ」


いつものギルドの受付で、朗らかな声が呼んだ。

にっこり笑う、丸顔の受付のおばちゃんだった。


ーーーーーーーーーー


【緊急依頼】


依頼名:製菓店のアルバイト

内容:製菓店で1日働く。厨房作業中心。

推奨ランク:なし

条件:料理系スキル持ち、または調理に心得のある人

最低報酬:銀貨1枚

追加報酬:店主の判断


ーーーーーーーーーー


【通常依頼】


依頼名:公爵家主催パーティの調理補助

内容:2日後に行われる公爵家主催の立食式パーティの調理補助。

推奨ランク:なし

条件:調理に心得のある人

歓迎:女性または15歳以下の男子

最低報酬:大銀貨1枚

追加報酬:未定


ーーーーーーーーーー


「…どちらも受けます!!明日朝から製菓店に、明後日は調理補助に行きます!!」


依頼の手続きをするギルドカードにはFランクの文字。まだ最低ランクだ。


それでも今は依頼が受けられるということ自体が嬉しく、Fの字すら誇らしく思える。


手続き後のカードをお礼とワクワクと共に乱暴に受け取った後、他所様のお店に行くからという理由で大銅貨を握りしめ、銭湯に向かう。


たった一日のバイトに、人生で二度とないかもしれない公爵家の厨房。

そして何より——甘さの価値を手に入れる、その可能性。


Fランクの少年は、少しだけ誇らしく胸を張って、湯の暖簾をくぐるのだった。



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