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『緋き秤の剣──衡断の勇者 詩抄』
本日ほんと短めです。
明日以降ストーリー補完しますのでお待ちください。
かつて空は焼け、大地は裂けた。
人の願いも祈りも、竜の咆哮に呑まれていく。
その時、彼は現れた。
肩に陽を背負い、歩みは雷。
声は鐘のように響き、剣は天秤のように揺るぎなく――
「咎を問う剣を持ちし者。歪みを断ち、衡を正す者」
龍は三千の咆哮をあげた。
焔は百の村を焼き尽くす猛威。
だが、彼はたじろがない。
人々の嘆きを背に受けて、ただ一歩、剣を振り上げた。
一閃――
空が割れ、時が止まり、炎は凍りつく。
咆哮は霧散し、龍の影は静かに地に沈む。
人々は言葉を失い、ただ祈るようにその背を見送った。
彼が残したのは、ひとつの詩だけ。
『罪なき者を守ることこそ、我が歩みの証。
剣は測り、秤は断つ。
名も報酬も望まずとも、
ただこの世の不均を正すために――』
そして、彼は去る。
名を告げず、影だけを残して。
人は彼をこう呼ぶ。
衡断の勇者
──天秤にかけられぬ、唯一の剣。




