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「虹彩ノ神眼」  作者: 赤虎鉄馬
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第7話『赤き炎、守護者の誓い』




 爆風とともに舞い上がる火の粉。


 ユイの目の前で、赤の義眼を宿す少年――カイが、黒の使徒と対峙していた。





 その姿は痩せていて、どこか不器用な立ち姿だったが、


 彼の右目に宿る赤の輝きは、見る者すべての心を震わせる何かを放っていた。





「ユイを狙うってんなら、容赦しない。俺は――“守る”って決めたから」





 赤の義眼が強く燃える。


 カイの足元に赤い紋章が浮かび上がり、その中心から熱が噴き出す。





「炎の召喚術式…か。記録にある通りだな」


 黒の男は一歩も動かず、冷静に構えたままだ。





 次の瞬間、カイが飛び出す。


 その手から放たれるのは、火炎槍フレイムスピア


 空間を裂き、黒の使徒に向かって真っ直ぐ突き刺さる――!





「無駄だ」





 黒の男が手をかざしただけで、炎はかき消された。


 周囲の酸素ごと“喰らわれた”かのように、完全な無音の空間が現れる。





「黒の力……“虚無化”……!」





 カイが目を見開く。だが、怯まない。


 肩から抜いた二本目の短剣に炎をまとわせると、地を這うように一閃。





「ユイを狙うなら、俺の記憶ごと焼き尽くしてみろよ!」





 叫びと共に、刃が黒の男のマントを裂いた。


 煙と焦げた布の匂いが漂う中、ようやく男の姿が露になる。





 ――半身が、機械だった。


 右半身が完全に義体化されている。瞳だけではない、腕も、胸も、声すらどこか金属的だった。





「……君は、ただの継承者ではないようだな」





 男は一歩、後退した。そして、口元だけで不気味に笑う。





「だが覚えておけ。“黒”は、いずれ全てを呑み込む。


 君も、彼女も、“神の再構築”のための材料にすぎない」





 男が身を翻すと、空間がぐにゃりと歪み、黒い渦の中へと消えた。





 静寂が戻る病室。


 カイはゆっくりとユイのもとへ歩み寄った。





「ごめん、驚かせたよな。でも、ちゃんと話す。俺も、七色の義眼の一人で――」





 言いかけたカイの言葉を、ユイは震える手で遮った。





「……ありがとう。助けてくれて」





 その瞳には、微かに涙が浮かんでいた。


 不安と恐怖と、そして――安堵の涙。





「これから、話して。……全部、知りたいから」





 こうしてユイは、初めて“仲間”と呼べる存在を得た。


 だが、それは同時に、より深い闇との戦いの始まりでもあった。








---





次回予告:第8話『青の監視者と、記憶の扉』


次に現れるのは、冷酷な「青の義眼」の継承者。


ユイの過去に隠された封印が、ついに解かれる――。










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