第6話『黒の予兆、神殺しの影』
朝の光が、重く濁って見えた。
窓の外には晴れた空が広がっているはずなのに、どこか“色”が欠けているような不穏さがあった。
ユイはベッドの上で、胸に手を当てていた。
紫の義眼を外してからも、微かな記憶のざわめきが残っていた。
あの男の言葉――「神の欠片」「世界に狙われる」――
真実はまだ、断片にすぎない。
そのとき、病室のドアが開いた。
入ってきたのは、女医ではなかった。
「……君が“七色の器”か」
黒いスーツに身を包んだ長身の男。
その顔は影のようにぼやけ、どこか人間離れした雰囲気を纏っている。
右目には、漆黒に染まった義眼。
部屋の空気が、ひときわ冷えた。
「名乗るほどの名はないが、組織内では《神喰らい》と呼ばれている」
「……義眼狩り……?」
「否。“神”狩りだ」
男は無感情に告げた。
「神の欠片」を宿す七つの義眼、それは元々、禁忌の力だった。
神を殺し、その魂を削り出し、封じ込めたモノ。
ゆえに――ユイは、“世界の理に反する存在”でもあった。
「君が全てを覚醒させれば、神が再構築される。
その前に、全てを破壊する。それが我々の使命だ」
次の瞬間、男の黒い義眼が光を放った。
圧倒的な重圧。空間が歪み、光が飲み込まれていく。
「……これが、“黒”の力……!」
ユイは思わず床に膝をついた。
視界が揺れる。身体が動かない。黒の力は、すべての色を無に還す力――“終焉の瞳”だった。
「君が覚醒する前に、ここで終わらせる」
男が手をかざす。周囲の空間が、崩れ始めたその時――
「まだ、終わらないよ」
病室の天井が砕け、何かが飛び込んできた。
金属音とともに現れたのは、黒いマントを纏った少年。
片目に“赤”の義眼を宿している。
「悪いけど、ユイは渡さない。俺が守る」
「……“赤”の継承者……か。面倒だな」
黒と赤が、火花を散らすように対峙する。
ユイは、呆然と二人を見上げた。
七つの義眼。その継承者たち。
戦いの火蓋は、ここから本格的に切って落とされようとしていた――。
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次回予告:第7話『赤き炎、守護者の誓い』
“赤”の継承者カイの登場により、ユイの運命はさらに加速する。
彼の持つ“炎”の力と、彼が知る七色の真実とは――?




