第16話『始まりの継承者』
ユイが目覚めてから三日――
レインの庇護のもと、ユイは静養していた。
けれど彼女の左目は、確実に変化していた。
虹の義眼。
その中心に、淡く輝く“白”の光。
それは“始まり”を示す力――そして、世界の理を知る者の証。
「ユイ、その目……」
「うん。“白”が現れたの。たぶん、眠っている間に、あの存在たちと……」
言葉を途中で切ったユイに、レインは問いかけた。
「“あの存在たち”……七神か?」
「……わからない。ただ、意識の奥で、私に何かを託そうとしていた。
“すべてを継ぐ者”として……私が、選ばれた理由を」
そのとき、窓の外で、強い光が弾けた。
鳥たちが一斉に飛び立ち、空が一瞬だけ白く染まる。
「……来たわね」
声がした。
部屋の扉の前に立っていたのは、一人の少年だった。
白銀の髪。
白い外套に包まれた整った顔立ち。
そして、その両目――左右ともに、白く光る義眼。
「初めまして、ユイ。僕は“ナギ”――白の継承者だよ」
「……あなたが?」
ナギは優しく微笑む。
「ようやく、君に会えた。
君の義眼に“白”が宿ったとき、僕は目覚めた。
僕の使命は、君にすべてを伝えること――この世界の創造、継承者たちの起源、
そして“神核”の真実を」
ユイは拳を握りしめた。
「私は……知りたい。私の力の意味を。
なぜ“記憶”が代償で、なぜ“生きる”ことがこんなにも……苦しいのかを!」
ナギは小さく頷いた。
「ならば、“始まりの記録”を開こう。
そこに、すべてがある。君自身の、失われた記憶も――」
その瞬間、部屋の空間がねじれ、白い空間が広がっていく。
二人の身体は、光に包まれながら、記録の奥へと吸い込まれていった。
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次回予告:第17話『記録の回廊』
始まりの記録――そこは継承者たちの誕生と、“神の罪”が刻まれた場所。
ユイは自分の過去、そして最初の“死”と向き合うことになる。