第13話『神核(コア)の記憶』
深夜――
継承の教会の奥、封印された記録室で、ユイはひとり、古びた石碑の前に立っていた。
レインの案内でここにたどり着いたものの、彼女は「中には入れない」と言ってユイだけを残していった。
扉には、七色の光を象った紋章が浮かび上がっている。
ユイが義眼に意識を集中すると、虹色の微光が走り、扉が静かに開いた。
中は、空白の空間だった。
何もない――と思った瞬間、世界が反転する。
──次の瞬間、ユイは“どこか別の記憶”の中にいた。
広大な空。
崩れかけた神殿。
そして、七人の影。
「これは……夢? それとも……」
義眼が光るたびに、視界が揺れる。
ユイは気づいた――これは、義眼に刻まれた“神々の記憶”だと。
七人の影は、それぞれ異なる色を纏っていた。
赤は破壊を、青は秩序を、緑は再生を、黄は真理を、紫は死を、黒は虚無を、そして――白は“始まり”を意味していた。
『我らが世界を創り、我らが世界を壊す』
『この力、いずれ選ばれし者に託す』
『器となる者よ、全てを受け入れ、全てを越えよ』
その声は、ユイ自身の中から響いていた。
彼女こそが「器」であり、「神核」の継承者。
七つの神性を内包する存在――つまり、“神を統べる人間”になる存在。
「……そんな、私が……?」
視界が崩れ、記憶が終わる。
気がつけば、ユイは記録室に倒れていた。
レインが駆け寄り、肩を支える。
「見たのね。神々の記憶を」
「……私が、統べる? そんな力、私には……」
レインは静かに言う。
「誰かがならなければ、世界は終わる。
七人の継承者がそろうとき、世界は“選ばれる”。
ユイ――あなたしか、できないのよ」
そのとき、義眼が小さく鳴った。
赤、青、そして“紫”が、目覚めようとしていた――
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次回予告:第14話『死神の微笑』
“紫の継承者”と名乗る謎の少女が現れる。
彼女は何を知り、何を終わらせようとしているのか――