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「虹彩ノ神眼」  作者: 赤虎鉄馬
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「虹彩ノ神眼」第1話『片目の少女

第1話『片目の少女』





 目を開けると、世界が半分、消えていた。


 左側の視界が真っ暗だ。音も、匂いも、何もない。





 ここはどこだろう――病院。消毒液の匂いと、機械の低い電子音がかすかに聞こえる。


 ユイは、ベッドの上でゆっくりと体を起こした。





「……あれ……?」





 頭がぼんやりする。自分の名前は――ユイ。十五歳。事故に遭った……それだけは、覚えている。


 だが、それ以外の記憶は、煙のように曖昧だった。





 ふと、手が顔に触れる。


 左目に違和感がある。そこには何かがはまっていた。


 ――冷たい、なにか。





「義眼……?」





 声に出してみると、ドアが静かに開いた。


 白衣の女が現れた。金髪で、肌は雪のように白い。日本人には見えなかった。





「目覚めたのね、ユイ。あなたの名前、覚えている?」





 女の声は静かだが、どこか感情が読めない。


 ユイはうなずいた。口が乾いていたが、なんとか言葉を絞り出す。





「……なんで……私の目に、これが……?」





 女は少しだけ笑った。その笑みは優しくもあり、狂気を孕んでいるようにも見えた。





「その義眼は、“神の目”。七つの色を持つ、禁忌の装置。あなたには……適合したのよ」





 ユイの脳裏に、何かが焼きついた。


 ――色のない世界に、七つの光が差し込む映像。


 赤、青、緑、黄、紫、白、黒。


 それぞれの色が、異なる力を持つ。





「……ちょっと待って、何の話……?」





「じきにわかるわ、ユイ。もうすぐ、“最初の試練”が来る」





 女がそう言った瞬間、病院の外からけたたましいサイレンが響いた。


 それと同時に、壁が“溶けた”。





 ねっとりとした影が這い寄る。人の形を模しているが、明らかに異形――。





「ユイ、見なさい。あなたの義眼を。最初の色を、選ぶのよ!」





 義眼が発光した。瞼の裏に色が浮かぶ。


 ――赤。





 その瞬間、ユイの体が熱を帯びた。血が沸騰し、筋肉が膨れ上がる。





「う、あああああっ!!」





 叫びと共に、ユイは跳ね起きた。


 そして、“影”に向かって拳を振り抜く――!





(第1話・完)








---





次回:第2話『義眼の目覚め』へ続く

















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