5.お見舞いと本音
嘘でしょ?今から琴葉が家に来るの?全然片付いてないんだけど。どうしよう。とりあえず床のもの全部クローゼットに突っ込んどいて...
そんな事をしている内にインターホンが鳴った
まずいベットで寝ていないと...
部活が終わった後、咲のお見舞いに行くことにした。
咲は滅多に体調を崩さないのにどうしたんだろう?心配だなぁ〜
インターホンを押すと咲のお母さんが出迎えてくれた。いつ見ても咲に似て優しそうな人だ。
「是非上がってちょうだい」
「お邪魔しま〜す」
そう言って私は咲の部屋に向かった。懐かしい。昔はよく行ってたな。受験期に入ってからあまりお邪魔することはなくなったからか何故か緊張する
「咲、元気?」
「う、うん...元気だよ」
本当に元気そうだ。もう良くなったのかな?
「珍しいね。咲が体調崩すなんて。何かあった?」
「大丈夫だって。少しお腹痛くて」
「ふ〜ん」
これはアレだね。嘘ついてるね。もう何年一緒にいると思ってるのか。咲は嘘をつく時は人の目を見ない。
「で、本当はなんで休んだの?」
「別に...なんでもない」
「言ってよ。私たち友達でしょ?」
「友達...友達かぁ...」
?何故かその言葉は私の胸をモヤモヤさせる
「私達はいつまで友達のままなの?」
「どういう事?」
「いや...ごめん...本当になんでもないの...」
「何でもないなんて事はないでしょ」
「うるさい!アンタのせいで!アンタが...」
「えっ...」
どういうこと?私のせい?私は何かしたっけ。
「どういうこと?私何か嫌われるようなことしちゃった...?」
目から自然と涙が零れる。人に嫌われたくなくて普通になろうとしたのに。また...また誰かに嫌われてしまう。
「あっ...ごめん。違うの...」
「琴葉を傷つけるつもりはなくて...」
「その...少し外歩かない?」
私は何も言えずに咲の言葉に頷くだけだった
最低だ私は。琴葉を傷つけてしまった。あんな事言うつもりはなかったのに...全部私が悪いのに...どうしようもう正直に言うしか...考えがまとまらない、外を歩いてるというのに私達の間に会話は無い。まるで出逢った頃のように。
歩いているうちに公園を見つけた。そして誰もいない公園のベンチに座って会話を始めた。
「私は...何かしちゃったの?」
「違うよ...琴葉は何もしてない」
今は...今だけは名前を呼ぶことに恥ずかしさは無い。
申し訳なさが勝っているからだ
「実は...今日私、見ちゃったの...美術室でアンタと西園寺さんが抱き合ってたのを...」
琴葉の顔が夕色に染まる
「見られてたんだ...でも、あれはあっちが勝手に...」
「それで私は西園寺さんにその事を聞いたんだ。そしたら西園寺さんは琴葉の事好きらしいじゃん?それで少し嫌な気持ちになったんだ」
「嫌な気持ち?」
「中学時代から私と琴葉は一緒にいたじゃん?だから琴葉が取られちゃうって思って...」
「アハハ 咲かっわい〜」
「な〜んだそんなことだったのか。少し安心した」
そんな事?私はかなり苦しんだのに...
「私と西園寺さんがどんな関係になっても私達は『親友』でしょ?」
親友ね...その言葉を嬉しく感じると同時にもう一歩踏み出したいと思ってしまった。でも...踏み出したらもう後戻りはできない。でも抑えられない。
琴葉の耳元で小さな声で震えながら言う
「親友じゃ...嫌だ。私は...琴葉の事が好き...恋人に...なりたい」
「はい?」
まさかの事でビックリした。え?咲私の事好きなの?
何これモテ期ってやつ?どうして高校入った瞬間こんなに告られまくるの?
「まずは、ありがと?」
「こういう時...なんて言っていいか分からないくて」
「良いよゆっくり考えて」
少し考えた後私の口は開く
「私は今、西園寺さんに告白されてまして...その...そっちの返事も保留にしているわけですよ...」
「だから今咲に返事をする訳にはいかなくて」
咲が小さな声で言う
「じゃあ...西園寺さんと...3人で1回話そうよ」
「それで、これからどうするか決めよ?」
「そうだねそうしようか。1回この事は保留にしてとりあえず返事までは親友って事でいい?」
「うん!」
暗くなった空の下。彼女の笑顔は街灯よりも輝いて見えた。とても魅力的だった。
その後、咲は私の家まで見送ってくれた。やっぱここで気まずさを感じずいつも通りに話せるあたりやっぱ咲はすごい奴だ。
食事を済ませ、入浴している時。私は今日のことについて考える
咲も私の事好きなのか〜 なんか女の子にばっかモテますね?これってどんどん普通の高校生活から遠ざかってない?
『最近は女性同士の恋愛も当たり前になっているよ』
西園寺さんの言葉を思い出してしまった。
それでも2人に同時に告白されるなんて。こういう時ってどっちかを振って、どっちかと付き合うべきなんだよね。選べる訳ない...
まあ、考えるだけ無駄か...明日話し合うまで一旦考えるのをやめ...れる訳ないですよね知ってました。
お風呂を出て、寝る時間になっても考えは纏まらなかった。
次の日、私が寝不足で登校したのは言うまでもない。