3.一緒に昼食!?
1限目の数学は何にも頭に入ってこなかった。せっかく程々の受験勉強で入れる高校だったのに入ってからいきなり躓いてたらやばい。次からは集中しよ。そんな事を考えていたら彼女が話しかけてきた。
「あまり浮かない顔だね。分からないところでもあったのかい?」
分からないのはお前だよと言ってやりたかったが私は高校生、大人なのだ。本音を隠さなければ
「そうなんだよね。中学までは二次関数得意だったのに高校入っていきなり分かんなくなっちゃった。」
「難しいよね。教えてあげようか?」
これは素直にありがたい
「ありがと!」
そんな事を繰り返しているうちに四限が終わった
「やったーー昼ごはんだーー」
そう何を隠そうこの私、橘琴葉は食事が好きなのだ。
中学までとは違って自由なものを自由な席で食べられる。最高か?
「琴葉、一緒に食べない?」
私は西園寺さんに誘われた
「いや、でも私はいっつも一緒に食べてる子たちがいるから...一緒に食べる?」
「嫌、二人で食べたい」
グイグイくるな。わがままな子供みたいな事を言っているがこれも彼女なりのアプローチなのだろう。仕方がない
「ごめーん今日は西園寺さんと食べるね」
「うん、行ってらー」
軽いな。それはそれで少し寂しい
私は西園寺さんに聞く
「どこで食べる?」
「静かなところなら何処でもいいよ、何か希望はある?」
「じゃあ空いてる教室を借りよう」
静かな美術室で二人きりの食事。少し緊張はするけど西園寺さんのことをもっと知りたい。
「西園寺さんって化粧とかするの?」
「突然だね?」
「いや、素直にすごい美人だから知りたくて」
「しないよ。する必要も無い」
なんだコイツ、ムカつくな。話していてわかった。コイツ女王様みたいな性格をしてる。恐らく幼い頃からなんでも出来て甘やかされてきたのではないだろうか。生意気なやつだ。
「琴葉はしてるのかい?」
「まあね。私のことはいいでしょ」
「君は私に聞いてきたのに?」
ごもっともだ
「西園寺さんに自分のこと話すの緊張しちゃって」
西園寺さんは不思議そうな顔をする
「それはどうしてかな?」
「なんか、何でも完璧な西園寺さんからすると凡人の私の事なんて興味無いみたいなのかなぁ〜って」
「君は...」
西園寺さんは何かを言いかけてやめる。少し気になるがまあいいや
西園寺さんが続けて言う
「それは君と私の間にある距離が原因じゃないかな?」
「そう...だね」
「距離があると私の好意も伝わりずらいだろう
それなら...君も私の事を下の名前で呼ぶといい」
「えっ?」
「いや、そんなの...恐れ多くて」
「いいじゃないか、私がいいって言ってるんだから」
「じゃあ......よろしくね雫」
彼女はまるでハートに矢を撃たれたかのような反応をする
「中々良いものだね」
お互い照れてしまった
これはたまに下の名前で呼ぶのが西園寺さんをからかうのに効果的なのでは?よし、そうしよう
「西園寺さん、授業遅れちゃうよ?早くー」
「呼び方が戻っているよ」
私は西園寺さんを無視して教室を出る
話していてて分かった。生意気だけど意外とからかいがいのある人だ。恋人とか置いといて普通に仲良くなれた気がする
5時間目、6時間目と過ぎていき、気づけば放課後だ。私は部活だけど西園寺さんは部活に入ってるのかな?
「西園寺さんって部活入ってるの?」
「あいにく私は部活には入っていないんだ。やることがあるからね。どうしても同じ部活で過ごしたいなら今から入るが?」
「別にいいです」
そう言って西園寺さんと別れた。やることか。モデルでもやっているのだろうか?それとも普通に勉強?まあいいや。バイバイと言い手を振る西園寺さんは可愛かったがこれは決して恋愛感情では無い。ないよね?
私の所属している女子テニス部はゆるい雰囲気で顧問もこない。だから自由に会話ができる。そこで恋人についての話を友達に聞こうと思った。この部活には中学からの仲の良い友達がいるのだ。クラスこそ違えど今でも交流は続いている
「ねぇ咲〜 人のことを好きになるにはどうすればいいの?」
「急にどうしたの?ついに琴葉にも春が訪れた?」
「まあそんな感じー」
私は適当に流した。
「んーやっぱ相手のことをよく知る事じゃないかな?」
私はため息をつく
「そんな基本的なこと言うなんて。これだから素人は」
「アンタから質問してきてるんでしょうが」
ごもっともです
「やっぱり相手の良い面も悪い面も受け入れて初めて人を好きになれると思うんだよねぇ」
「おっいいこと言う」
「アンタ本当に質問してる側なの?」
そんな事を話しているうちに遠くから声が聞こえた
「橘さ〜んちょっとこっち来て〜」
そのタイミングで私は先輩から呼ばれて離れなければならなくなってしまった
「ありがとね、咲」
琴葉が先輩の元へ行った後で小さな声で咲はつぶやく
「琴葉の良い面も悪い面も...私は...」