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11.どっちを見れば

今日は水曜日。西園寺さんとのデートの日だ。別に放課後まではいつも通りだったけどね。さてと。今はホームルーム、先生の話なんてちっとも聞いてないけどまあこの状況でちゃんと聞ける訳ないもんね。

「それじゃあ、気をつけて帰れよ〜」

先生がそう言ってから少しして、西園寺さんが私の元に向かってくる。

「それじゃあ行こうか」

「そうだね。行こ行こ。」

そう言って私たちは一緒に電車に向かった。この学校の最寄り駅は電車が二十分に一本くらいしか来ない。だから乗り遅れちゃうと上映に間に合わなくなってしまうので私たちは早歩きで駅に向かう。




駅には発車の5分くらい前についた。良かった〜。ゆっくり話す時間もできそうだし。

「この学校本当に不便だよね。電車の本数も少ないし」

「そうだね。でも、今のうちから不便さに慣れておくのも良い事だよ。」

「そぉ〜?だいたい映画館に行くのだって1時間くらいかかるんだよ?この近くに映画館があればいいのに」

今日、私たちは立川の映画館で映画を見る。私たちは利用する路線が違うからこの辺に映画館がないと色々と不なんだよね。まあ別に良いけど。

「私としては琴葉と一緒にいられる時間が長くなるからいいんだけどね。だけど琴葉に交通費をかけてしまうのは申し訳ない。」

「まあ、学校から私の最寄り駅までの区間に映画館ないし、しょうがないよ。」

そんな文句を言っているうちに駅についた。

「そういえばなんだけどさ。西園寺さんってこういう恋愛系の映画観るの?」

「もちろん。嗜ませて貰っているよ。昔はそういうのが分からなかったんだけどね、最近は理解できるようになってきたよ。」

「ふーん。それって私のおかげ?」

「あぁ。登場人物と自分を重ねることが出来るようになったのはまさしく君のお陰だよ。」

なんか少し嬉しい。私のおかげで西園寺さんの人生に光というか娯楽が増えたことが。

「そういう君は結構嗜むのかい?」

「そうだね。私はこういうの結構好きだし。なんて言うかキュンキュンしちゃう。」

「私との恋愛にはキュンキュンしないのかな?」

まだ恋愛じゃないだろ。別に私は西園寺さんに恋愛感情を抱いてるのか分かんないし。西園寺さんも咲も同じくらい好きだからね。

「ど〜でしょうかね」

「そんな事より、そろそろテストだけど勉強はどう?」

「まあ、十分できていると思うよ。」

「本当?私全然ダメで。数学も化学もわかんない。文系脳すぎる。」

これは中学時代からの私の悩みだ。私は国語と英語は得意だけど、理系科目が弱すぎる。

「でも君は古典や英語が得意じゃないか。琴葉は得意を伸ばしていけばいいんじゃないかな?」

「でも、今の段階で理系捨てるのはな〜。」

「私は自分の得意を伸ばして行くのは良い事だと思うけどね。でも、君が苦手を克服したいと言うなら全力で応援するよ。」

「別に私は文系でもいいけどさ。そしたら文理選択で私たち離れちゃうよ?」

「そしたら私が文系に進めばいい。」

いや重いよ!私のためだけに理系を捨てるの?

せっかく西園寺さんは数学も化学も生物もできるのに。そんなの私が耐えられない。

「私...頑張る!でも...今日はそんなこと忘れて楽しもう。」





立川の映画館に着いた。私は映画を見る時にポップコーンを食べるけど、西園寺さんは食べるのかな?

「西園寺さん、ポップコーン大きいの買ってシェアしない?」

「いいね。私は普段はあまり食べないけど君となら喜んで食べるよ」

やっぱり食べないんだ。正直解釈通りかな。映画観るのにだけ集中してそうだもん。

チケットはかなり良い席を取れたし絶好調だね。そう思いつつ私たちは座席へ向かう。

今日見る映画は高校生同士の恋愛をテーマにした映画だ。最近人気のアイドルが主人公ということは知っているんだけどあまり役者に詳しくないからわかんない。おっともう上映が始まる。集中しないと。






映画はめっちゃ面白かった。でも...でも...やっぱり西園寺さん美形すぎるでしょ!?映画を観る西園寺さんが綺麗すぎて映画か西園寺さんかどっちを見ればいいか分かんなかった。

「結構良かったね。」

「あぁ。素晴らしかった。」

声を輝かせて言う

「あの役者方の演技力の高さ。本当に恋をしているみたいだった。普段の私もあんな顔をしているのだろうか。」

「うーんどうだろ?西園寺さんも恋してる顔をしてるのかな?私にも分かんないや。」

私たちの会話は映画の感想についでがメインになっていく

「あのシーンは良かったね。まさか女友達だった娘が主人公のことが好きだったなんて。」

「だよね。同性と異性から同時に迫られてどっちを選ぶべきか苦悩しているのがめっちゃ伝わった。」

「まさか最後は女友達を選ぶなんて思いもしなかった。伏線が張られていた事にその結果を知ってから気づいたよ。」

「だよね。でもわたし的には2人とも選んじゃってもいいんじゃないかな〜って思うんだけどね」

「さすがにそれは...不誠実じゃないかな?主人公はそう思ったからこそ1人に選んだわけだし。」

「そう?別に両方の事を愛してるなら2人と付き合ってもいいと思うんだけどなぁ〜」

「じゃあ君は私と里宮さんの両方と付き合えるのかい?」

何でここで私の話が!?いや待てよ...。この映画の主人公の置かれた状況、これ私と似ているぞ。マジかいな。だから没入感が凄かったのか。

「いや〜それは...。確かに。どっちか一人で限界だね。」

「だろう?2人と付き合うというのは困難な事だ。まあ当事者たちの合意と努力があれば不可能じゃないだろうけどね。」

そんな事を言っていたら電車が来た。

「じゃあね。今日は楽しかったよ。また学校で」

「バイバイ、雫」







帰りの電車でさっきのことを考えた。2人で付き合うか...。さっきは主人公は2人で付き合えばいいと思ったけど、主人公に私を重ねてみると難しいことだな。

私には2人と付き合うなんて不可能だ。私はとても不器用だから関係性の維持とか平等性とか、考える事が多すぎて心が壊れちゃう。だって少しでも愛情に偏りがあると思われたら終わっちゃう関係なんだよ?そんなの私には無理。もし平等に愛してたとしても、相手の受け取り方によって偏りは生まれちゃう。そこをなんとかできる程人間ができてはいない。だから...だからこそ私はどっちかを選ばなきゃいけないんだ...




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