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散文

誰かに宛てる書

作者: 永井晴

誰か、私のたよりとなりうる心強い誰かにこのふみを送りたいと思います。きっとこれは先人のイミテーションなんかではなく、恐らく皆さんらが薄らにお思いなある感情やら状態に由来するのでございます。誰もが心当たりのない、それでいて突きつけられると何故かハッと目を逸らしたくなるようなものです。ここで重要なのは誰もそれに気がつかないといった様子です。しかし私のこれを送る誰かは、私のひどく信頼の置ける人でありましょうから、もう隠し立てはしない覚悟です。いつものように(現実ではいつもそうです)もったいぶっていても仕方がありませんから白状しますと、それは一体、孤独と名付けられるものなのです。


私は、貴方が孤独なのを知っています。きっと他の友人と面白おかしくこれを読む貴方は、頓狂にはあ?!と言うのでしょう。でも内心ハッとするのです。ほら、笑みが段々とぎこちなくなってきましたね。もちろん私も孤独ですが、我々が本当の意味で相対することなど殆どありえないことでありましょう。

我々はいつもそうです。孤独であると明らかな人ももちろん孤独でしょうが、一方孤独でないと明らかそうな人もまた、かえってひどく孤独なのであります。私が貴方の目にどう映るかなんてのは興味が無いといえば、それは嘘です。しかしもうそんな事を気にしていても仕方がないのです。私は散々その類の無謀なスクラッチを掻いてきました。一切が閉ざされたようで、本当は分かりきっている、そんな答えはいつも孤独なのです。分かったところで、何もありませんでした。

近頃、私は孤独の対義語を見つけたような気がしています。それは愛です。在り来りですが、やはり愛なのです。

しかし我々はよく気をつけなければなりません。何故なら愛を感じる人というのは、皆おしなべて孤独とは反対側の世界を歩いているふうに見えるからです。我々の世界とはまた別の、向こう側に広がるのは何処までも美しい花園です。そこでその人が踊るようにして何とも軽やかに歩いているのです。そんな時も、無論我々は孤独を歩いている訳で……もう悲しくなってきますから、ここらで止めにしておきましょう。貴方にはきっと理解が出来るはずですから。

でも人は皆孤独を生きています。愛をくれるあの人もまた、孤独を歩いているはずなのです。我々は時々、何故かそう言ったことに恐れます。そして過ちを犯すことがしばしばです。

私は何も無愛想に、貴方に孤独を突きつけたい訳ではなくて、貴方の幸福を誰よりも願っているのです。そのために私の智見を使って貰えればと思います。ここらの土壌はひどく不安定です。もしかすれば今にもひっくり返って、世界は逆さまになってしまうかも知れません。もしそうなっても、貴方の目が正しくあれるような、そんなことを私は願うばかりなのです。

孤独とは貴方自身のことです。これは胸を張ってよろしいことです。誰もが傍に見えるような、そんな世界をみんな生きているのは同じなのですから。


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― 新着の感想 ―
 タイトルに惹きつけられ、本文も孤独というテーマで短くまとまっており、最後まで興味深く読み通せました。
嫌な言い回しではなく、やんわりとした感覚で本音を言い当てられて楽になれました。私自身「孤独」だと数年前から自覚していますが、この作品を拝読しました後、それに対して不思議と安心感に包まれたわけです。寂し…
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