新種の魔物②
「ご注文の品です」
クリスの前のテーブル。
そこに水の入ったコップを置く、猫森。
そのコップを手に取り、クリスは目を見開く。
そして声をあげた。
「ど、どうしてこんなに冷たい? こ、氷も入ってないというのに」
冷たい水。
それにクリスは驚く。
「ど、どんな魔法を使った? よもや、氷魔法の使い手か?」
「氷魔法? い、いえ。わたしはただの猫カフェの店員です」
「た、ただの店員がこのような芸当できるはずがない」
「にゃ?」
ふくよかな猫。
その無防備なお腹を撫でながら、穏やかな表情で猫森へと声をかけていくクリス。
「魔法使いの血筋。し、しかし。このような新種の魔物を飼い慣らしているとなれば魔物使いという線も」
「にゃーん」
クリスの撫で撫で。
それに気持ちよさそうな顔を浮かべる、ふくよかな猫。
「え、えーっと。水が冷たいのは冷蔵庫のおかげです」
「れ、れいぞうこ? なんだそれは」
「そ、その。色んなモノを冷やす道具です」
「冷やす道具。よ、よくわからないな」
困惑する、クリス。
「これは、報告が必要だ。未知の氷魔法。可愛すぎる新種の魔物……ほうっておくわけにはいかない」
少しだけクリスは険しい表情になる。
しかし、泣きそうな猫森の顔と不安そうな猫たちの表情にすぐに和らぐ。
「悲しい顔をするな。わたしは、そこそこ地位のある騎士。善処はする」
「わたしも、その。こ、こう見えて、可愛いモノには滅法弱いからな」
自分を見つめる猫たちのつぶらな瞳。
それに頬を赤らめる、クリス。
そのクリスに、猫森はぺこりと頭を下げる。
「あ、ありがとうございます。そ、その。優しい警察さん」
「けいさつではない。クリスだ」
「ありがとうございます。優しいクリスさん」
「時に名は?」
「猫森。猫森 咲夜です」
「覚えておこう」
微笑む、クリス。
「にゃん」
「にゃーん」
そして猫森に倣い、猫たちも嬉しそうな鳴き声をあげていくのであった。