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猫脱走①

とはいったものの。


「お、お城の役人さんか。きっと厳かな感じの人なんだろうな」


イーグルが店を後にしたのち、咲夜の胸中は不安でいっぱいだった。


「健全で安全な場所。だと理解してもらう為には、うん。まずはお掃除からだ」


内心で呟く、咲夜。

いつも不安になった時。咲夜は掃除をして、気を紛らわせていた。


告白して、失敗した時。

新卒で就職した会社。そこでパワハラを受け、自主退職を余儀なくされた時。

同じ時期に猫カフェに入社したアルバイトさんが、結婚を理由に退職をした時。

その他、諸々。


心といっしょに身の回りの掃除をすればーー


っと、そこに。


「ちゅうちゅう」


咲夜の足元。

そこに、1匹のネズミが現れる。


「あれ、ネズミさん? ふふふ。この世界にもネズミさんがいたんだね」


しゃがみ、優しい笑顔で咲夜はネズミに問いかける。

しかし、ネズミは「ちゅう?」と小首を傾げ、その場に佇むのみ。


「迷いネズミさん。あなたはいったいどこから」


きたのかな?


響かんとした、咲夜の問い。

だがそれを、「んにゃッ!!」という、猫の鳴き声が遮った。


「ちゅう!?」


「ふしゃぁッ!!」


昨夜の周囲。

そこをネズミと猫は駆け回る。


「こ、こらタマ」


「うにゃあ!!」


落ち着いてやれるか。

そう言わんばかりの、タマの興奮っぷり。


「落ち着いて。は、話せばわかるよ」


何事だ。

とばかりに、他の猫たちも様子を伺いにくる。


だが、それと同時に。


「にゃん!!」


「ちゅう!!」


咲夜の焦燥声と、他の猫たちの戸惑いの視線。

それに応えるように、タマとネズミは脱兎のごとき速さでその場から逃走。


風を置き去りにし、半開きになった窓から、外へと駆け出していってしまったのであった。


「ま、待ってよー」


半泣きなり、咲夜もまた扉を開け、外へと駆け出していく。

そして、その後を猫たちも、「主様の一大事だ」という面持ちで、懸命に追いかけていったのであった。


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