魔法使い?①
「お待たせしました」
にっこり。
イーグルの前にあるテーブル。
そこに淹れたての紅茶を置く、猫森。
猫柄のティーカップ。その中からは、甘くて香ばしい湯気がたちのぼっていた。
「ありがとう。咲夜は火の魔法も使えるのだな」
ほんのり温かなティーカップ。
それに触れ、イーグルは猫森に微笑む。
「ちなみにこの魔法はなんという? 人肌ぐらいの絶妙な温かさ。それに温度をキープする魔法。是非、知りたいものだ」
「魔法? え、えーっと。コンロで水を沸騰させて、海外から取り寄せた特別な茶葉を使っただけなんです」
「? コンロ? はじめて聞く魔法だな」
「あのぉ」
「なんだ?」
「わ、わたしは魔法使いなんかじゃありませんよ。た、ただの店員さんです」
「こんなことができる咲夜がただの店員? S級魔法使いの間違いじゃないか?」
「え、えすきゅう? な、なんだかすごそう」
ごくり。
唾を飲むこむ、猫森。
「ちなみに。出身はどこだ?」
紅茶を一口飲み、ティーカップを持ちながら、イーグルはにこやかに問いかける。
「見たこともない装備。それにこの建物。どこの国から転移してきたのだ?」
「転移?」
「いわゆる空間魔法というやつだ。この世界では許可を受けた者にのみ使用を許されている」
途端、固まる猫森。
猫たちも猫森と同じように固まってしまう。
た、逮捕されちゃう。
無許可だよ、無許可。
で、でも。神様の仕業だし、ふ、不可抗力だし。
猫森は汗を滲ませる。
「ん? どうした?」
「え、えっーと。日本という国から」
「ニホン?」
「は、はい」
「聞いたことがない。王の名は?」
王? 偉い人?
えっーと。総理大臣の名前ってなんだっけ?
むむむ。日頃ニュースを見ないから、全然わからない。
固まる、猫森。
「あ、あの。その、む、無許可の場合。た、逮捕されちゃうですか?」
「にゃー」
「にゃん」
猫森を守るように、足元に正座する猫たち。
その顔は臨戦体制。
しかし、イーグルは笑う。
「たいほ? よくわからないが、それが捕まえるという意味だとすれば」
側の子猫。
その小さな頭を撫で、イーグルは微笑む。
「この街の治安トップはこのわたし。わたしが許可を出せば、そんなことはない。そしてたった今。わたしの独断で許可が下った」
「そ、それじゃあ」
「あぁ。咲夜を捕まえることなどしない」
言い切った、イーグル。
その顔は実に穏やか。




