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14.国境線前の戦い Ⅱ



 レグさんの言葉の後、彼の後方から武器が降ってきた。降物としては棺桶よりはよほど納得できるものだったけど、やはり穏やかではない。

 紡錘のような形をした槍のような奇妙な武器は、あたしとレデヤ君の合間を縫うように正確なコントロールで飛んできて、そのまま砂利の地面に深く突き刺さった。


「ッ……! エナ!!」


 レデヤ君の叫び声の直後、更に騎士団員たちに取り囲まれ、遂にレデヤ君と分断されてしまう。だがもちろん、不運はこれだけでは終わらない。

 槍が飛んできた方角、まだ薄れない砂埃の中から、白雪騎士団でも硝子騎士団でもない、まだ見たことのない騎士団の姿が現れたのだ。


 花弁の紋章が施された、柔らかな薔薇色の装甲。

 白雪騎士団、硝子騎士団に次ぐ騎士団の一つ―――薔薇騎士団のものだ。


 大陸の未知の区域を探査することが目的の遠征部隊。業務上、その誰もが戦闘に長けており、対人戦以外でも負け知らずの騎士団だと教えられている。


 ……三大騎士団、ついに揃い踏みだ。


「な、なんで……」


 今あたしは冤罪も含む諸々の罪で指名手配中だから、刑戮と踏査が役割の前者二組に追われるのならまだ分かる。だけど、そんな戦闘特化の騎士団を加えた三大騎士団を揃えてまで、あたしを捕まえようとするなんて。


 淡い薔薇色の団員の中、唯一兜を脱いだ赤い癖っ毛の青年がいた。恐らく先ほど飛んできた槍の持ち主だろう。他にも腰に剣を携えている。

 この外見の特徴からして、恐らく彼が、あたしが伝え聞いていた薔薇騎士団の団長……


 冒険者であれば名を知らぬ者はいない。

 彼の名はメッサ。若年ながら団長に選ばれた最強の騎士。職は違えど、冒険をする者たちの頂点にして、戦闘のエキスパートだ。


「会いたかったよ、エナちゃん」


 メッサは満面の笑みであたしの名を呼ぶと、ゆっくりと腰の剣を手に取った。

 会いたかった、と言う割には戦う気満々らしい。マゾ男のような戦闘狂じゃないといいけど……あたしは咄嗟にシレンさんのナイフを取り出す。リーチがあまりに足りないけど、頑張れば防御ぐらいはできるだろう。

 だが、メッサの剣はあたしに向かわず、なぜか地面へと振り下ろされた。


 途端、刀身が蛇の腹のように別れ、鞭のように撓る。

 次のもう一振りであたしの手元まで飛んでくると、鞭のようになった刃は器用にナイフの刀身だけを絡め取り、メッサの手元へ帰っていった。周囲の騎士団員はもちろん、あたしも無傷だ。


 妙な変形をしたメッサの剣と、突如として空いてしまった手のひらの空間とを交互に見て、思わず「なにその武器!?」と叫ぶ。前の世界で……漫画かアニメで見たことがあるような気がする。確か蛇腹剣というやつだろうか。あくまでフィクションの武器だったと思うけど、まさか異世界で目にすることになろうとは……


「見惚れてちゃ危ないよ、エナちゃん」


 見慣れぬ武器にあたしが困惑していると、再びメッサが剣を振るった。次はあたしの体めがけて刃を伸ばす。

 鞭状の武器のスピードは途轍もない。ただの鞭と同等の速度かどうかは測れなかったが、この武器も咄嗟ではとても避け切れないほどの速度を帯びていた。


 ダメだ。避け切れない―――

 次の瞬間、体のどこかを襲うであろう痛みを想像しながら、あたしは目を瞑った。



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