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異世界帰りの妹は、ケダモノになっていましたッ!?  作者: カイ
第2章 突撃ッ!! 天原衛探検隊
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第31話 協会の輸送隊はこんなデカブツ運べるのか?

――天原衛


 牧童達に案内されて俺達は、ようやく川岸にあるウルディンの集落にたどり着いた。

 川岸の集落は川を背に、半円上に十キロにわたって防壁が築かれている。

 中世の都市国家といえば石積の城壁をイメージする人が多いと思うが、ウルクの防壁は石積の城壁ではなくコンクリートで塗り固められた防壁が集落を守っている。

 集落にたどりついてグレンゴンの死体を下ろしたところで、ようやく俺は人間の姿に戻ることが出来た。

 恵子も牧童達にハンター協会の輸送隊を呼んできて欲しいと頼んだ後、人間の姿に戻って一息ついている。


「きつかった……」


 人間の姿に戻った俺は、その場でベタンと大の字に寝転がる。


「とりあえず服着てよ。ここ一応人里なんだから、ウルディンですら服着てるんだからクサリクのマモちゃんが裸まま寝たりしないで」


 素っ裸で寝転がる俺に、顔を真っ赤にした恵子が服を投げ渡してくる。

 ああそういえば、人間の時は服着ないといけないんだったな。

 変身してるときはずっと裸なので、長時間変身してると感覚がマヒして来る。


「たしかに、ここに居る犬、みんなポンチョみたいな服着てるな。あいつら自前の毛皮があるのに何で服着てるんだ?」


 服を着ながら周りを歩く人を横目で流し見る。

 ウルディンの居住区と言われるだけあって、道を歩くのは9割以上がオオカミから進化した知的生命体ウルディンだ。

 シェパードのようなブラック、秋田県のようなジンジャー、ライカ犬のようなホワイトと多種多様な毛色の犬達が街を闊歩している。


「多分オシャレのためじゃないかな。あと、ウルディン達は服着るのが常識って文化なの」


 服のデザインは4足歩行の邪魔にならないポンチョタイプの貫頭衣が大半だが、着飾って個性を出したいという欲求は知的生命体共通のものらしく、ウルディン達もそれぞれ布地の色や柄で自分の個性を演出している。


「カゲトラに会ったときも感動したけど。ウルディン達もすごくアメージングですね」


 ウルディンを自分達と同じ人類と認めたアイリスは、集落を練り歩く彼等にキラキラした視線を送っている。


「とりあえず、マモちゃんおつかれさま。あとはハンター協会の輸送隊が運んでくれるから休んでていいわよ」


 ミ・ミカ達もここまでグレンゴンの死体を運んでくれたことに感謝しているらしく手を合わせながら『ありがとう』とお礼を言ってくる。


「こいつを担ぐのから解放されるのは助かるが、協会の輸送隊はこんなデカブツ運べるのか?」


 体重400キロのトラを運ぶのとはわけが違う、体重が2.5トンもあるグレンゴンの輸送には地球でも大型トラックが必要になるだろう。


「運べるわよ、ほらあそこではもっと大きな竜を運んでるし」


 恵子は川岸に向かう竜車を指差した。

 馬車ではなく竜車。車を引くのは角竜でも最も体格の大きなトリケラトプスだった。

 トリケラトプスが引く荷車は、竜を運ぶために台車の上にオリが据え付けられた構造になっていて中には、トリケラトプスより一回り体格の小さいパキリノサウルスが二頭閉じ込められている。


「まあ、あんな感じで車があれば1頭の竜で2頭の竜を運べるってわけ。もっとも、車を引くのは一番パワーがあるトリケラトプス限定だけど」

「なるほどね。トリケラトプスがばんえい馬なら、パキリノサウルスは一回り小さなサラブレッドって感じだな」

「そんな感じ。中央島は狭い道が多いから、トリケラトプスだと入れない道が多いんだよね。だから、中央島ではトリケラよりも小柄な竜に車を引かせてるの」

「なるほど竜車か。確かにこれならあのデカブツも軽々運べるな」


 俺は地球には存在しない竜車を、目を細めてじっくりと凝視する。


「天原妹。俺の目が確かなら、あの竜車、ホイールがスチールで、タイヤにはゴム履いてるように見えるんだが気のせいか?」

「気のせいも何も、竜車は金属製のホイールとタイヤは空気パンパンに入れたゴムタイヤだよ。5トン以上の重量を運ぶんだから木製のホイールや車輪だと強度が足りなくてすぐに割れちゃうじゃない」

「えっと……もしかして、ニビルの文明レベルって中世より進んでるのか?」


 どうやらニビルの文明レベルは、俺達が想像していたよりもはるかに進んでいるようだ。


「そう……かも、銃や内燃機関は発明されてないけど誰もが思い浮かべる剣と魔法の世界じゃないわね」

「エクセレントッ!! 最初はDNAサンプルの採取だけでも十分だと思いましたが、ウルクで作られた工芸品はとっても魅力的です。下手をすれば地球の産業界に革命を起こせるかもしれません」


 ウルクが小説に出てくるありふれた中世の国ではないと知り、知的好奇心が爆発したアイリスが歓声を上げる。


「そんな大したものないわよ……ニビルの文明レベルは地球より100年くらい遅れてるし、都市国家同士の交流が盛んじゃない影響で世界地図すらないんだから」

「そんな人の交流の少ない世界で、地球に近い水準の金属加工やゴムのプレス加工をやってる時点で異常なんだよッ!」


 地球では長らくオリエント世界と交流が無かったアメリカ大陸は15世紀になっても鉄器の製造技術がなかった。

 ヒトモノカネの交流がなければ文明は簡単には発展しないのだ。


「小学生じゃないけど工場見学とかやりたいな。竜車とかどうやって作ってるのかスゴイ気になるわ」


 牙門とアイリスは、ニビル調査隊の本分を思い出したのかウルクの内情を調べる気満々のようだ。

 もっとも、二人共問題を起こさない振る舞いをわきまえているので、調査はあくまで穏便に合法的に進められるだろう。

 そんな話をしているとハンター協会の輸送隊がやってきた。

 輸送隊は竜車を伴っていたが、車を引いているのは角の無いパキリノサウルスで車の大きさも先ほどトリケラトプスが引いていたものより二回りくらい小さかった。

本作を読んでいただきありがとうございます。

私の作品があなたの暇潰しの一助となれましたら、幸いでございます。

お気に召して頂けたならばブックマーク、評価など頂けましたら幸いです。

そしてもし宜しければ賛否構いません、感想を頂ければ望外のことでございます。

如何なる意見であろうと参考にさせていただきます。

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