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異世界帰りの妹は、ケダモノになっていましたッ!?  作者: カイ
第2章 突撃ッ!! 天原衛探検隊
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第29話 上手くいった、ウソみたい

――天原衛


「穴を掘る?」


 俺の提案したアイディアを聞いて、恵子はキョトンとした顔で首をかしげる。


「そっ、ひと1人というかぶっちゃけ俺が入れるくらいの穴を掘って、俺がそこで寝そべって待機する。その上にグレンゴンの死体を持ってくるんだ」

「そうか、その状態で衛がグレンゴンに変身すれば変身完了と同時に、衛がグレンゴンの死体を背負っている状態に出来るわけか」

「そういうこと」

 

 結論から言うと、俺の提案したアイディアは上手くいった。

 死体の真下で変身を開始すると、変身が終わった時には、俺はグレンゴンを背負った状態で大地に立っていた。

 人は楽するために努力するとはよく言ったものだ。

 難しく思える問題もアイディア一つでいくらでも、楽に効率的に解決することが出来る。

 グレンゴンの背中は平坦ではなく盛り上がっているのでお世辞にも荷運びに向いた体型とは言えないのだが、同じグレンゴンを背負った場合、引きずるときには邪魔になる後ろ足が引っかかって巧い具合に固定することが出来た。


「上手くいった、ウソみたい」

「いや、変身魔法の特性を上手いこと利用したいいアイディアじゃないか」


 ミ・ミカ達も死体運びが上手くいきそうなのがうれしいらしく。

 三人揃って、俺に向かって手を合わせてくれる。

 グレンゴンの死体を運ぶ算段をつけた俺達は、ミ・ミカ達の案内でウルクへと向かうこととなった。



――天原恵子


 ウルクにたどり着くまでに、私達は3日ほど広い森を歩くことになった。

 普通に歩けば2日でたどり着くらしいのだが、1日余計に時間がかかったのはグレンゴンの死体を運んでいたからだ。

 グレンゴンの体重は2・5トン。

 同じグレンゴンに変身して、さらに肉体強化魔法を使ってパワーをあげているとはいえ、やはり2.5トンの荷物を運ぶのはしんどいらしく、マモちゃんは3時間くらいで魔力切れを起こして度々休憩を挟む必要に迫られた。

 マモちゃんはとても頑張ったと思う。

 魔力切れを起こすまで変身魔法で身体を酷使し、小休止を挟んで寄生虫や雑菌がどれだけ湧いているかもわからないマモノの生肉を食べて再び変身。

 そして、再び魔力切れになるまでグレンゴンの死体を運び続ける。

 おそらくマジンでなければ死んでしまうんじゃないかと思うような、無理に無理を積み重ねてグレンゴンの死体を運んでくれた。


 そして……。


「着いた」

『帰ってきたッ!』

「着いたぁぁぁッ!!」


 ウルクの城壁が見渡せる丘までたどり着いた私達は一斉に歓声をあげた。



 ウルクはこの地方で最も大きな川であるイディグ川の川沿に作られた都市国家だ。

 都市が建設されているのはイディグ川の流域でも特に川幅の広いところで、2000メートルを超える大きな広大な川幅の中心にある中州に都市の中心部は建設されている。

 中州と言っても洪水ですぐに水没してしまうような小さな中州ではなく、幅500メートル、長さは2キロほどある川の中の島と言ってもいい巨大な中州で川がマモノや外敵の侵入を防ぐ天然の防壁になっている。

 島の周囲には防壁兼、洪水の際に都市に水が流れ込むのを防ぐための堤防が築かれていて、戦争の際は川と壁の二重の防御によってウルクは難攻不落の要塞に変貌する。

 川の対岸は、北側が多数の角竜を飼育するための広大な放牧地に、南側には麦やコメを作るための畑が広がっており、中州にアクセスしやすい川岸に放牧や農業を生業にする人達が住む集落が形成されている。

 私達がいるのは北側の森なので、都市に行くためには竜の放牧地を横断する必要がある。


『しかし……このまま丘を降りても大丈夫でしょうか?』


 ミ・ミカが、グレンゴンを背負ったマモちゃんを見上げながら不安を口にする。

 おそらく彼女は、マモちゃんがこのまま竜の放牧地に向かえば放牧している竜を襲いに来たマモノだと誤解されてしまうんじゃないかと心配してるんだろう。


『そうは言っても、マモちゃんが変身解いたらグレンゴンの死体運べないじゃない。まあ、誤解されそうなら私がなんとかするわ』


 私はミ・ミカの不安を解消するための、オオカミの姿に変身して丘を駆け降りた。

本作を読んでいただきありがとうございます。

私の作品があなたの暇潰しの一助となれましたら、幸いでございます。

お気に召して頂けたならばブックマーク、評価など頂けましたら幸いです。

そしてもし宜しければ賛否構いません、感想を頂ければ望外のことでございます。

如何なる意見であろうと参考にさせていただきます。

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