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異世界帰りの妹は、ケダモノになっていましたッ!?  作者: カイ
第3章 敵はアメリカ
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第24話 強襲揚陸艦イオー・ジマを拿捕します

――中島由香


 米軍の強襲揚陸艦は通常、海兵隊の揚陸作戦用にホバークラフトを内部に格納しているが、梓別班長は強襲揚陸艦が今回の作戦のために漁船に偽装した揚陸艇を運んできたことを教えてくれる。

 その場合、運べる人員や装備は大幅に少なくなるが、時間と場所を選べば海上保安庁の目から逃れることも可能だし、上陸地点も砂浜に限定されず堤防や喫水の浅い岩場なら地上部隊を揚陸させることができる。


「あと付け加えると、オントネーを攻撃している部隊は米軍の正規兵ではなくPMCダーク・ウォーカーの社員を使っています」

「PMCの社員を強襲揚陸艦で運んだんですか!? いや、ありかPMCを使えば作戦が失敗したときでもトカゲの尻尾切りができる」


 PMC――日本語で民間軍事会社と呼ばれる存在は21世紀になって登場した比較的新しい種類の民間企業だ。

 業務内容は戦争の代行。

 政府から依頼を受けて高額の報酬と引き換えに、軍人の代わりにサラリーマンが戦争をやる。

 PMCの社員が死んでも正規の軍人とは違い政府は戦死報告をしなくてもよいし、政府の職員ではなく民間企業の社員なので作戦が失敗したときに責任を押し付けることも出来る。

 オントネー分室襲撃のような、明らかに非合法な軍事行動をやらせるにはうってつけの存在だ。


「上陸部隊は不測の事態があっても切り捨てられるPMCを使って、作戦の責任者は津軽海峡のどこかに居る強襲揚陸艦の上か。聞いてるとすごく腹の立つ話なのだ」


 カゲトラは憤りを隠そうともせず語気を荒げる。

 これだけの事件を起こしておきながら、事件の首謀者は何が起こってもの逃げ出せるようになっている。

 カゲトラと同じく、私もあまりの理不尽さにハラワタが煮えくり返りそうな怒りを感じる


「そういうわけで、中島課長が考えた、退路を断つ、司令官を確保するってアイディアはどちらも難しいですね。退路を断つにはクシロからエリモ間の広大な海岸線を全て封鎖する必要あるし、司令官を確保するためには米海軍の強襲揚陸艦を拿捕しなくてはならない。どちらも夢物語です」


 梓別班長は先ほどと同じく淡々とした口調で、私達に出来ることは無いと告げてくる。


「北海道警察の人員を総動員して道南に非常線を張りましょう。米軍の回収艇が着岸できそうな場所は限られているはずです。そこを抑えれば……」

「強襲揚陸艦イオー・ジマを拿捕します」


 海岸に非常線を張ることを提案する河口長官の言葉をさえぎって、私は強襲揚陸艦の拿捕を提案する。


「イオー・ジマの拿捕って出来ると思ってるんですか? あれはただの軍艦じゃない。総排水量4万トン以上。ヴァイパー戦闘ヘリとF35戦闘機を搭載している上に、対空ミサイルと機銃でハリネズミのように武装した巨大な暴力装置ですよ」


 今まで淡々とした口調で話していた梓別班長が、動揺を隠せない様子で強襲揚陸艦の強大な戦闘力について説明してくれる。

 彼の言う通り、最新鋭の戦闘機と戦闘ヘリの攻撃をかいくぐって強襲揚陸艦に近づくのは、海上自衛隊の護衛艦でも容易ではないだろう。

 しかし……。


「多分……大丈夫です。私とカゲトラの二人で、イオー・ジマを拿捕できると思います」

「二人で強襲揚陸艦を拿捕できるか。マジンの能力でそれが出来るというなら、降伏しなければ別班は壊滅していましたね」


 マジンの恐ろしさを改めて実感したのだろう。

 梓別班長が苦笑いを浮かべる。


「先ほど別班は異世界生物対策課に無条件降伏すると言いましたよね。要求を追加します。梓別班長、強襲揚陸艦イオー・ジマの現在地を教えてください。別班はその情報も把握してるんですよね」

「ええ、把握しております。強襲揚陸艦イオー・ジマは釧路から50キロほど離れた海域に居ます。ずっと同じ場所に停泊しているわけではないですが、上陸部隊と無線通信を行う必要があるので陸地から離れ過ぎないように周辺海域を周回していますね」


 梓別班長は地図データ表示して、米軍の強襲揚陸艦が周回している海域の位置を教えてくれる。


「カゲトラ、上空からの目でイオー・ジマを見つけられそうですか?」

「相手は排水量4万トンを超えるデカイ船なんだろ、これだけ絞り込めているなら楽勝なのだ」


 カゲトラは自分に任せろと言わんばかりに、両翼をパタパタとはためかせる。


「決まりですね。私とカゲトラはこれから米軍の強襲揚陸艦イオー・ジマの拿捕に向かいます。ただ、釧路までは陸路を移動する必要があるので、申し訳ないけど誰か車の運転をお願いします」

「中島課長、ちょっと待ってください」


 米軍の強襲揚陸艦を拿捕するために席を立った私は、佐藤本部長が呼び止められた。


「ここから車で釧路に向かったら海岸に着くまでに4時間はかかりますよ」

「そうですが他に方法は……」

「中島課長、札幌飛行場まで来てください。警察航空隊のヘリコプターに出動命令をかけます。釧路沖までヘリで移動すれば時間をかなり短縮できるはずです」

「とてもありがたい話だけど、いいんですか?」


 佐藤本部長の提案通りヘリで釧路に向かえば、海岸にたどり着くまでの時間は車の半分――いや半分以下の時間でたどり着ける。


「我々の目的は、日本国内で軍事行動を起こした非道なテロリストの逮捕です。中島課長が敵司令官の確保に向かうなら微力ながらお手伝いさせてください」

本作を読んでいただきありがとうございます。

私の作品があなたの暇潰しの一助となれましたら、幸いでございます。

お気に召して頂けたならばブックマーク、評価など頂けましたら幸いです。

そしてもし宜しければ賛否構いません、感想を頂ければ望外のことでございます。

如何なる意見であろうと参考にさせていただきます。

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