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異世界帰りの妹は、ケダモノになっていましたッ!?  作者: カイ
第3章 敵はアメリカ
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第4話 衛さん、意識はあります。死んでませんか?

――天原衛


 俺とミ・ミカは向かい合い、相手が魔法を使うタイミングを慎重に伺っていた。

 魔法戦のやり方を教えてもらうためにミ・ミカと練習試合をするのがここ最近の日課になっている。 


 獣魔法≪ケモノノハドウ≫

 獣魔法≪ケモノノハドウ≫


 俺とミ・ミカは同時にケモノハドウを発動して一直線に互いの距離を詰める。

 獣魔法で戦うとき最も多用されるケモノノハドウは、一言で言い表すと自分の身体をロケットに変える魔法だ。

 推進剤の代わりに魔力を噴出させて、自分の身体を一瞬でトップスピードまで加速させる。

 相手がマモノならこのスピードに乗せて、肘打ちや跳び膝蹴りで攻撃するが、相手が人間なら話は別だ。

 なんの策もなく跳び込んで攻撃すれば確実にカウンターを食らうので、俺もミ・ミカも両腕を立てて顔と上半身を守るように構えながら突撃する。

 守りの構えを取りながら飛び込むくらいなら、立ち止まってカウンターを狙えばいいと思うかもしれないが十分な距離を確保した上でケモノノハドウを使えば術者の最高速度は軽く500キロを超える。

 時速500キロの人間砲弾を立ち止まって受け止めればカウンターを仕掛けた側が確実に力負けするので、ケモノノハドウで飛び込んでくる敵に対する対抗手段は突撃をかわすか、自分も同じように加速して相手に負けないだけの運動エネルギーをぶつけるしかない。

 互いのカウンターを警戒しながら突撃した俺とミ・ミカは、接触する直前にストレートパンチを繰り出す。

 同じタイミングで繰り出した二つの拳が激突し、空気を引き裂くようなパンッ!という打撃音が鳴り響く。

 拳と拳の激突で発生した反発力で5メートルほど引き離された俺とミ・ミカは相手を倒すために再び魔法を発動させる。


 獣魔法≪ケモノノハドウ≫

 獣魔法≪ケモノノハドウ≫


 俺とミ・ミカは、ケモノハドウを使い自身の肉体を加速させる。

 ケモノハドウが戦闘で多用されるのは、この魔法が低燃費で使い勝手が良く、なにより使いこなすことが勝利に直結するからだ。

 速さとは強さだ。

 魔法を使った接近戦は、敵より速く動いて隙を作り、防御をかいくぐって一撃入れればだいたい勝てる。

 2回目の激突は、俺が顔面への右フック、ミ・ミカが腰だめにレバーブローを狙ってパンチを放つが共に相手の防御に阻まれ有効打は生まれない。

 3回目、4回目、5回目――。

 俺とミ・ミカは、相手との距離が離れる度にケモノノハドウを使い敵への突撃を敢行する。

 何度攻撃が防がれても、足を止めれば人間砲弾の的になってしまうため俺とミ・ミカは間髪入れずにケモノノハドウを使い敵への一撃離脱を繰り返す。

 高速機動による一撃離脱を繰り返すこと十数回。

 俺と同じくケモノノハドウを使って高速機動を開始しようとしていたミ・ミカが不意に魔法を使わず前転でその場を跳び退き、俺の突撃をすり抜けた。

 突撃をかわされ無防備な背中を見せている俺の背中を見ながらミ・ミカが魔法を発動させる。


 獣魔法≪ケモノノハドウ≫


 無防備な背中に魔法の力を乗せた肘打ちの直撃をくらった俺は暴走トラックに引かれた歩行者みたいに数十メートルに渡って吹き飛ばされた。


「衛さん、意識はあります。死んでませんか?」

「死んでたら返事できないだろうが、残念ながら生きてるよ」


 吹っ飛ばした俺を追いかけて来たミ・ミカの手を借りて、俺は痛む背中をさすりながら立ち上がる。


「クソっ! また負けた。ミ・ミカは、フェイントかけるの上手いな」


 俺がそうつぶやくと、ミ・ミカは呆れ顔で自分の額を指さした。


「衛さん、霊感の範囲狭くなっていましたよ」

「あっ!?」


 ミ・ミカに致命的なミスを指摘されて、俺は思わず自分の額を両手で覆った。

 霊感とは魔力の流れを感じる感覚器官のことで、魔法を使えば自然と自分の体の中を循環する魔力の流れを感じることが出来る。

 霊感はあくまで生命の身体に備わった感覚器官の一つなので、その機能を肉体強化魔法によって強化することが可能で、霊感を強化する魔法は『天眼』という名で呼ばれている。

 天眼を使えば術者は自分の身体を循環する魔力だけでなく、自分の周囲に渦巻く魔力の流れを感じることも出来るようになる。

 霊感を天眼で強化すれば、敵が魔法を使うことを事前に察知することも出来るようになるので、天眼は基礎的な魔法だがその有効性は非常に高い。


「もしかして、さっきフェイントかけたのって」

「私の立ち位置が、衛さんの霊感の探知範囲から外れているのが判ったからフェイントをかけました」

「ですよねえ……」


 恥ずかしくて顔から火が出そうだった。

 ミ・ミカに稽古をつけてもらう前に、天眼で霊感を強化して敵の魔力を観測し続けるのは魔法戦の基本だと耳に穴が開くほど注意された

 もし霊感で魔力の流れを探っておけば、あの場面で魔法を使うのかフェイントなのか魔力の流れから簡単に判別することが出来ただろう。

 そもそも、ミ・ミカが魔力を収束させていることを確認せずにイノシシみたいに突撃するなんて、知性の無いマモノと同レベルと言われても仕方ない。


「まっ、これは訓練だからよかったじゃないですか。天眼は誰でも使えるけど使いこなすのは難しいです。私だって、同じようなミスを何度もやって、その度にお母さんにぶん殴られました」

「ミ・ミカみたいな女の子に、私も通った道ですってなぐさめられると本気で凹みそうになるな」


 ミ・ミカは、現在14歳。

 学校に行っていれば中学2年生。

 リアル厨二の女の子だ。

 しかし、この少女はミ・カミ様から魔法戦のやり方を徹底的に叩き込まれたバケモノ・ザ・バケモノなのだ。

 ニビルに居るときはバタバタして気づかなかったが、一緒に暮らし始めてその事実を嫌というほど思い知らされることになった。

本作を読んでいただきありがとうございます。

私の作品があなたの暇潰しの一助となれましたら、幸いでございます。

お気に召して頂けたならばブックマーク、評価など頂けましたら幸いです。

そしてもし宜しければ賛否構いません、感想を頂ければ望外のことでございます。

如何なる意見であろうと参考にさせていただきます。

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