7 必死なヒロシ
「それでヒロシは、なんでここにいるの?こんな魔物がうろつく森で」
ヒロシは今までの経緯を説明した。
「なるほどね。それで森に住んでいる訳ね。たまたまお姉ちゃんが通りかかってよかったね」
「下手したらそこに横たわってるのはヒロシだったかも知れないよ?」
目の前の美少女はにっこりあっさり宣告する。
「爽やかに怖いこと言わないでください!」
ヒロシはツッコミをいれるが、この世界にきてはじめての同年代の子とやりとりをして内心嬉しかった。
ふとヒロシがエラの後ろをみると身の丈より大きなかごを担いでいた。
ヒロシは二人に尋ねる。
「これからどこいくんですか?」
いまのところヒロシの食糧難の問題は解決していない。
ただキノコと野草の見分け方が上達した程度である。2人がいれば餓死を逃れるかもしれないとヒロシは藁にもすがる思いだった。
エラはヒロシの質問に答える。
「これからおねぇちゃんと、修行のついでに森の中の食料の探索にいくのよ」
エラに続いてレイラも話を続ける。
「この森は魔物がでるせいか、地元の人は近づかないの、だから果物や野草とかの食べ物が豊富にあるのよ。私たちはそれを取りに来たの」
ヒロシの目が光る。
「俺もついていっていいですか!」
ヒロシの必死さが二人を一歩下がらせる。
エラに至ってはすこし怯えていた。
レイラはヒロシの必死さに圧倒されながらも話し出す。
「ついてくるのは構わないわ。ただ自分の身は自分で守るのよ?いざとなったら守ってあげられないかも知れないわ」
異世界では魔物や魔獣が当たり前のようにいる。
実際そいつらにヒロシは二度も殺されそうになっている。
ヒロシは緊張で握っている刀をさらに強く握りしめた。ごくり、と喉を鳴らす。
ただヒロシもこの数日で強くなった。身体ではなく心が知らないうちに強くなっていた。
「わかってます。邪魔はしないのでついていってもいいですか?」
ヒロシはこのまま行かなくても数日はキノコ生活が待っている。
そう思ったらが必死だった。
レイラはヒロシの強い目におされ、同行することを認めた。
「わかったわ。でも危険を感じたら一人でも逃げるのよ?わかった?」
「わかりました。ありがとうございます。」
この時ヒロシの頭のなかは食料のことでいっぱいであった。レイラとエラがのことを女神とさえ思った。
ヒロシは大変単純に出来ていた。