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5 女神と出会ったヒロシ


 刀で茂みをかき分けながら進むとどこからかザァザァーと水が流れる音がしていることに気がついた。


 ヒロシは音が聞こえる方に歩みを進ませる。


 その間何度かさっき戦ったゼリー状の魔物を遭遇し、倒していった。


 歩いているうちに音が大きくなってきた。そして心なしかひんやりとしてきた気がした。


 ヒロシは歩みを早めて、水辺を目指して歩いた。


「ようやく川にたどりついた。」


 目の前に見える川は決して大きな川とは言えないが、よく水が透き通っている川だった。


 ヒロシはギルがリュックに入れてくれた水筒に水を汲む。


「なんとかいけるものだな。川には魚も泳いでるみたいだし、今度は釣りでもしてみようかな。」


 岩に座って休憩をとる。


 川の周辺は相変わらず緑が生い茂り、ひさしぶりにホッとできた。


 良く見ると緑が生い茂っているところに一本道があるように見える。


 時刻はだいたいお昼過ぎくらいかだいぶ、長く森を彷徨っていたらしい。


 暗くなると小屋まで戻れないかもしれないが、ヒロシは初めてのこうけいで好奇心を抑えられなかった。


「軽くいってなにも無さそうならすぐ、戻れば大丈夫かな。」


 ヒロシは一本道を歩きだした。


 相変わらずそこの部分だけ草木が生えておらず、明らかに歩きやすくなっている。


 獣道とも違うみたいだ。


 しばらく道なりにいくと祠のようなものが見えてきた。


「あれは、祠かな作られたものみたいだけど一体どうして。」


 作られた目的は不明だけど明らかに最近まで誰かが来ていたことは明白であった。


 ヒロシは中に入ってみる。


 多少暗がりではあるが、あまり深くはないみたいですぐに奥がみえてきた。


 見えてきたのは小さい鳥居に神様が祀ってありそうな小さな祭壇があった。


 ご丁寧に誰かがお供え物も置いてあった。


「誰が一体お供えしたんだろ、まさか魔獣も神を信じるのかな?」


 ヒロシはぷって軽く吹き出して独り言をいった。


「なにはともあれこんな機会がないと祈ることないし、祈ってみようかな。」


 ヒロシは目をつぶり生き残れることと強くなれるように祈った。


 暗闇から声が聞こえる。


 鮮明に頭の中に響くその声はまるで女神みたいな綺麗な声で俺に訪ねてくる。


『青年よ、私の声が聞こえていますか?』


『初心者ヒロシというのですか?変わったプッなま....ぷっくくく...ですね』


「見られてる!しかもそこはかとなく笑われてる!」


 ヒロシは周りを見渡しても誰もそこにはいなかった。

 声を出して訂正した。


「俺は田中ヒロシっています!!」


『田中初心者ヒロシですか。やはり変わってますね。ぷっくくく』


 ヒロシは急いで訂正する。


「初心者いらないです!!」


 頭に響いている声は仕切り直したように冷静に透き通った声で続ける。


『まぁそんなことはどうでもいいことです。ヒロシは力を望みますか』


『あなたはなんのために生き延びたいと思いますか。もし答えらたなら私が微力ながら力を与えましょう』


 ヒロシはいきなりの質問に戸惑った。


 生きることは当たり前だと思っていたし、力は死神に課された課題のようなものであったから、深く考えていなかった。


「生きる意味など正直考えたこともなかったです。でも初めて死を感じたときに強く死にたくないと、生きていたいと思いました」


「この世界で生きるために身を守る力が欲しいです。答えにはなっていないかもですが今はこれしかわかりません!」


 俺が正直に話すと女神は優しい声で話始めた。


『確かに答えになってないかも知れませんが、ヒロシの正直な思いに免じて良しとしましょう』


『あなたが持っている魔導書をみてみなさい。新たな力が手にいれることが出来るでしょう』


『ただし、ここではなく外でその使いなさい、使い方は言葉を発するだけで利用できます』


「女神様ありがとうございます。大事に使わせていただきます!」


 ヒロシはお礼を言ったがなにも反応は返ってこなかった。


 ヒロシは一礼して外に出た。


 カバンから魔導書を取り出す。


 パラパラとページをめくると一ページだけ光を発していた。

 これは読める!ヒロシは声を出して呪文を唱える。


「聖なる炎よ、出ろ!」


 ヒロシの右手は暖かくなり前につき出すと同時に炎がでた。


「おぉーホントにでた!だが小さいな!おい!新たな力ホントに微力だな!」


 出てきた炎はビー玉サイズくらいで飛ぶと言うより手から落ちていったという方が正しかった。


 でも確かに新たな力がついた、ヒロシの中二心がくすぶられた。


 ヒロシは嬉しくなり、川を抜け、ログハウスに帰る。


 いつのまにか陽は落ち始めていた。


 死神が用意したログハウスは寝床と小さなテーブルと椅子しかなかった。


 それにトイレが備え付けられていた。


「せめてお風呂と台所はほしかったなぁ」


 ヒロシは小さく愚痴をこぼす。


 布団に寝転び魔導書を見てみたが他の文字は読めそうにない。


 そのうちヒロシは疲れからかうとうとしはじめ、意識は遠退いていった。




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