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4 お腹がすいたヒロシ



 目覚めると、サンタのプレゼントよろしく頭の近くに一冊の本が置いてあった。


 「”サルでもわかるアウトドア入門〜急なサバイバルにも対応〜”? 」


 サルがキャンプをしているイラストに一瞬和む。


「これはどう考えても、あいつの仕業だよな。 確かにありがたいが、 素直に喜べない!」


「よし、落ち着いた。とりあえず外に出てみようかな。状況を知るのも大事だしな」


 ヒロシは寂しさを紛らわすように独り言をいう。


 ギィーとドアを開ける。外からは木々のざわめき、小鳥のさえずり、時折獣の鳴き声が聞こえてくる。

 

 ヒロシは何も言わず扉をしめた。


「これはアウトドア入門ではどうにもならないのでは、今度襲われたら死ぬ自信しかないよ」


 昨日もらった薬草のおかげか、怪我はよくなっているが一日目にしてヒロシの心はボロボロなのだ。


 ひとまず食べ物と水を確保しなければ生きていけない。


 その為には外に出ないといけないと頭では理解しているが、今まで半引きこもり生活面をしていたヒロシには足が上がらなかった。


 しかし以前の逃げていた自分とは違う、生死をかけ魔獣と戦った。幼いながらも死ぬ気で戦った経験がヒロシの背中を押した。


 自分に言い聞かせるように何度も大丈夫と呟く、ヒロシは刀を持ち死神からもらった本をリュックにいれて扉をあけた。


 相変わらず獣の唸り声が聞こえてくるが、自分の足に喝をいれて一歩踏み出した。


「まずは家の回りから調べてみよう。野草やキノコが見つかるかもしれない」


 家の回りを歩きながら食料を探し続けた。


 幸いアウトドアブックに食べれる野草やキノコが載っていた。


 これはこの世界のガイドブックみたいだ。


 不本意ながら死神に感謝してアウトドアブックに目を通しながら周辺を探した。

 

 しばらくしたらリュックの中にはいろいろな種類の野草とキノコでいっぱいになっていた。


「案外見つかるものだな、これでしばらくは大丈夫か。」


 一度家に食料を置き、今度は水源を探しに、今一度家を出た。


「食料はなんとかなったが水源はどうしようかな。とりあえず本見てみるか。」


 ヒロシはこのどうしょうもない感情をどこにぶつければいいのか迷っていた。


 簡単にいうとイライラしてたのである。


 確かに本には水源の探しかたというページはあった。


 ひとつのページの片隅に....


 本に書いていたのはただ一言【気合い】とだけ書かれていたのだ。


 ここにきての精神論に彼は本を地面に投げつけたい衝動をこらえ、現在イライラしながら川を探している。


 茂みを刀でかき分けながら歩き続ける。


「なんだよこの本、猿に精神論など通じると思ってんのか。」と口を開く度に文句が止まらない。


 ふいに近くの茂みがガサガサと音をたてた。ヒロシはビクッと小さく驚いたが、軽く深呼吸し、体勢を立て直す。


 刀をいつでも抜けるように構え、緊張を切らさないように茂みをかき分けた。


 そこにはプルプルした半透明なゼリー状のなにかだった。

半透明のなかには丸い赤黒い球体のようなものがあり、遠くからみると浮いてるようにも見える。


 ヒロシはなんか見たことあるようなやつに戸惑いながらもここは異世界なのだと実感したと同時にこのイライラをあいつに発散しようと心に決めた。


 意を決して茂みから飛び出し、ゼリー状のやつに刀を振るう。

 完全にヒットした、その証拠にプルプルしたやつは半分に別れている。


「ごめんな、恨むなら死神を恨んでくれ!」


 だがゼリー状のそいつはプルプルしながら2体に増えた。

やっぱみたことあるなこいつ。とヒロシは心のなかでツッコミをいれる。


 良く見ると中にある赤黒い球体も2体の真ん中にそれぞれある。


「やっぱりなんかのRPGでみた、あの球体が本体か、動きは遅いし知能はないみたいだな」


 ヒロシは二体に板挟みにならないように注意しながら動く、そして球体目掛けて刀を振るった。


 刀は球体にあたりパリーンっと、ガラス玉が割れるような音がした。


 割れた瞬間ゼリー状の身体も泡となって消滅した。


「よし、1体は倒した。あともう1体だ!」


 ヒロシは刀を構え、距離をとる。


 相手はプルプルとゆっくり近づいてくる、ヒロシは真ん中にゆらゆら浮いてる球体を目掛けて刀を振るった。


 球体は同じようにパリーンと割れて、ゼリー状の身体はブクブクと消滅した。


「某RPGのあいつはあんなに可愛いのに実際はこんな感じか」


 ヒロシは軽く溜め息をつきながら、晴れやかな顔でいた。


 いつのまにかイライラもおさまったようだった。


 また川を探すために歩きだした。


 

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