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12 鍛えられるヒロシ-(2)

 

「ぬおおおお…」


 翌朝。外は快晴。

 陽の光が窓から入り、部屋を照らしてくれる。

 外では小鳥たちがさえずり、一般的にはすばらしい朝だと思う。


「無理…いや…無理…」


 しかしヒロシには正直どうでもいい。

 ヒロシは筋肉痛でそれどころではなかった。


「うでがすげぇいたいんですけど、というかあがらないのですが」


 だれもいない部屋につぶやく。


「それは仕方ないわね。」


「だれ!?」


 ただの独り言にまさかの返答があったことにヒロシは驚く。


「レイラさんとエラ?」


 布団に寝転がったままのヒロシが目線を扉に向けると、ここ数日で見慣れた存在の姿があった。


「おはよー!」


 エラが無邪気に手を振っている。


「また明日ねって言ったでしょ?開いてたから入らせてもらったわ!」


 レイラが堂々と胸を張っている。


 ヒロシは思う。それは不法侵入なのではと。俺の人権は?


 ただ鍵をかけてないのは確かだし、昨日運んでもらった恩もあり、言葉を飲み込んだ。


「それは確かに手紙に書いてましたね。でもレイラさん、俺は今日腕が上がらないです」


 横になったまま腕をぱたぱたさせて手が上がらないアピールをしてみるヒロシ。


「それなら心配いらないわ。今日は腕使わないもの!」


 レイラは当たり前のように言った。


「今日は足を使うわ!俊敏さと反射神経よ!腕は使わないから平気よ!安心しなさい」


 腕を使わないことを二度も言われたのでヒロシは空気を読み抵抗はしなかった。


「イエッサー」


 何であれ誰かに構ってもらえる事も嬉しかった。


 ○ ○ ○


「ヒロシの家なんにもないね」


 よろよろと重い体を動かしながら出かける準備をしている間、エラがキョロキョロと部屋の中を見渡している。


「仮暮らしだからね」


「えー。ぬいぐるみとか持ってきてあげようか?」


「いらないよ!」


「エラ、ヒロシくんを子供扱いしたらダメよ」


「えー、違うよ!それに大人だって子供だって関係ないよ!」


「それもそうね。ゴルゴンゾラの赤の方ととかがいいかしら」


「うん!最悪火を噴くもんね!」


 エラとレイラが好き勝手に話しているのを聞きながら布団を整え、着替えの服も用意する。

 

 ゴルゴンゾラが何なのかさっぱりわからないし、何が最悪で火を噴くとは何なのか…


「あの、ゴルゴンゾラって…」


「気にしなくていいから早く支度して!」


「ヒロシ早くー!」


「いや、そしたらあの、着替えたいので出てもらえますか?」


「えー!あっち見てるから、陰で着替えていいよ〜」


「私たちのことは気にしないで。のんびり待ってるから」


「あ、はい…」

 

 ヒロシは女兄弟の一番末っ子ってこんな感じなのかな…と思いながらいそいそと着替えた。


 その間も2人はああだこうだと話していて、カーペットやカーテンの話もしだしたので女の子ってすごいなあ、と圧倒されきっていた。


 ○ ○ ○


 それからレイラ達が用意してくれた朝御飯をたべて、ヒロシたちは家をあとにした。

 ついた場所は昨日と同じ原っぱだった。


「ヒロシくん着いたわよ!今日はさっき話したとおり反射神経を鍛えるわ」


「反射神経ってどうやって鍛えるんですか?」


 嫌な予感しかしないがヒロシはレイラに尋ねた


「ルールは簡単よ。私が魔法を放つからヒロシくんは避けるだけでいいわ。手加減するから当たっても殴られる程度の衝撃しかこないわ」


 ヒロシの予感は見事的中していた。


 せめてもの反抗で露骨に嫌な顔をしてみるがレイラは気にしていない様子だった。


「他に質問はある?」


「いいえ」


「何か文句ある?」


「ありません!」


「気合を入れて行くわよ!」


「はい!イエッサー!」


 エラが余裕そうにケラケラ笑っている。



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