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――元に戻るのは明日かな。

日向はそう思いながら、午後の授業に出た。

出席を取るために出た日向は、講義の間ずっと眠っていた。


刈谷はたどり着いた。

――この家か。

この小さな宗教団体が、あれを復活させようとしている可能性がある。

もしそうだとしたら、なんとしてでも止めないと。

――まずは聞き込みだ。

新興宗教団体が、近所の人に好意的に受けいられているはずがない。

それを利用しようと思った。

――まずは隣から。

呼び鈴を押した。

すると中年の女性が出てきた。

平日の昼間だが、専業主婦なら家にいる確率が高い。

「何でしょうか?」

刈谷は努めて丁寧に話した。

「突然ですが、私の身内が変な宗教にはまったらしくて。それでいろいろと調べているんですが」

もちろん嘘だが、あの宗教団体に否定的な人なら食いついてくるはず。

ましてやこの家は隣なのだ。

刈谷がそう言うと、中年女性は露骨に嫌な顔をした。

「あああの宗教ね。隣の。何やってんだか知らないけど、男がひとり来たと思ったらだんだん住み着く人が増えてきて。夜な夜な変な儀式をやっているみたいだし。気味が悪いし迷惑この上ないわよ」

「変な儀式?」

「夜中にみんなで変な呪文のようなものを唱えているのよ。家の防音はいいはずなんだけど、数人で大声で唱えているもんだから、嫌でも聞こえてくるわ」

「何の儀式ですかね」

「知らないわ。救世主がどうのこうのとか言っていたけど。うちにも何回か勧誘に来ているから、その時にそんなことを言っていたような気がするわ。まともに聞いていなかったから、よく覚えていないけど。でもまだあの儀式みたいなやつを続けるのなら、警察に通報してやろうかと思ってるわ」

「そうですか」

「あなたの身内が騙されてるんですか。早く救ってあげないと。何かあるなら私も協力するから、遠慮なく言ってね」

「ありがとうございます。その時はよろしくお願いします」

「本当に遠慮しないでね」

「わかりました」

刈谷はとりあえず、その家を後にした。

――狙い通りだ。

やはり近所の人にはよく思われていないようだ。

そこへ身内が被害にあっていると言えば、初対面の刈谷にも警戒心は持たない。

近所の人も、近所と言うだけで自分も被害者のように感じているからだ。

もちろん夜中の儀式がうるさいという被害に、実際にあってはいるのだが。

それにしても何かの儀式をやっているとは。

末藤はこの家からなんだかの力を感じたと言った。

そしてあれがごく一部ではあるが、封印を破ってこの世にその姿を現している。

刈谷は考えた。

この神井とかいう教祖の若い男。

なんだかの力を持っているようだ。

それに儀式が続いているということは、あれをさらにこの世に呼び出そうとしていると考えられる。

そして姿を現したあれの一部は、すでに人を殺し始めている。

今のところ追い返した者をのぞくと、まだ二人しか殺していないようだが、あれは人を殺せば殺すほど力を取り戻すことは間違いがない。

あやしい教団もいれて、二重に危ないのだ。

――もうすこし聞いてみるか。

刈谷はそうすることにした。


日向は目覚めた。

気づけば教室には誰もいない。教授も生徒も、眠っている日向をそのままにして出て行ったようだ。

――まあいいか。

出席はしているので問題はない。

寝ていたからと言って、欠席にはならないはずだ。

――帰るか。

日向は帰ることにした。

もう日が沈みかけている。


末藤は考えた。

あの家は刈谷が見張っているはずだ。

そうなれば昨日見逃した、あれを追い返した男をもう一度待っていてもいいのではないかと。

末藤は考え、早朝から正門に陣取った。

二日続けて正門に立てば、ひょっとしたら怪しまれるかもしれない。

その可能性が十分あるが、そんなことを言っている場合ではない。

その時はその時だ。

末藤は正門に立った。

そして待った。

朝から待ったが、昼になってもなにも感じることはなかった。

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