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その時、本堂の扉が開けられた。

入ってきたのは二人の中学生だ。

そしてその小さな四本の手で何かを掲げていた。

細く長く、それ全体がこれ以上にないほどに錆びついたもの。

「末藤さん危ない」

「今助けます」

二人はそれをあれの顔に突き刺した。

「ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーっ」

あれがかん高くてとてつもない大きな声で叫んだ。

そして赤い目が白くなったかと思うと、黒かった顔までが白くなっていっている。

見れば手の方も白くなっていた。

そしてゆっくりと、実にゆっくりと白い煙が薄くなってゆき、そしてその姿を消した。

「封印したわよ」

「やったね、お姉ちゃん」

二人は掲げていたもの、あれを突き刺したものを床に置き、手を取ってぴょんぴょんはねている。

末藤は床にあるそれを見た。

そして感じた。

これ以上はないほどに錆びついていて、おまけに所々が大きくかけているが、その形は諸刃の剣だった。

間違いない。

床に置かれたものは神魔の剣だったのだ。


疲労困憊の日向は、しばらく神社で療養することになった。

そして全員が集まった。

それまでは口を開くものはほとんどいなかったが、そこで正也が二人の娘に聞いた。

「あれは神魔の剣だな」

「ええ」

「そうよ、お父さん」

「あれをいったいどこで見つけたんだ」

「お墓よ。神社の裏山にある先祖代々の墓」

「六百年ぐらい前に死んだご先祖様の墓の中から見つけたの」

正也は少し考えたから言った。

「それでこの前、家系図を見せてくれと言ったんだな」

「ええ、そう」

「なくなった神魔の剣は必ずこの神社にあると思ったの」

「でもいくら探しても見つからないと聞いたわ」

「それで、探していないところを考えたの」

「それがお墓の中よ」

「六百年前のご先祖様が、自分の墓の中に入れちゃったのね」

末藤は驚いた。

みながこの神社を隅々まで探したが、お墓の中まで探そうと思った者はいなかった。

というより、普通はそんなことは思いつかない。

しかしこのまだ若い少女たちはそれを思いつき、実行したのだ。

正也が言った。

「遅れると言ったのは、神魔の剣を探していたからなのか」

「そうよ。二人でお墓の中を探していたの」

「もう少し早く見つけるつもりだったんだけど、思った以上に手間取っちゃって。でもぎりぎり間に合ったわ」

二人の娘を感動のまなざしで見ている正也の代わりに末藤が言った。

「とにかくあいつは封印された。全人類は救われた」

「うん」

「はい」

「よくやった二人とも。本当にありがとう」

「いえいえ、そんな」

「これが私たち一族の務めですから」

そういう二人の少女の顔は、真っ赤に染まっていた。


あれから数日が経った。

日向は体力を取り戻した。

「君が時間を稼いでくれたおかげで、一人の犠牲者も出すことなくあいつを倒すことができた。ありがとう」

「いえいえ、そんなことはないですよ」

「とにかくいつでも神社に遊びに来てくれ」

「はい、わかりました」

日向は車を降り、にっこり笑って手を振り、自分のアパートに帰って行った。


刈谷は退院した。

そしてめでたくブラック企業を首になり、二郎の神社に勤めることになった。

「そんなに裕福な神社じゃないから、高いお手当はでないぞ」

「おじさん、こんな楽な仕事でこれだけもらえれば十分だよ」

「それなりに厳しいと思っていたが、楽だと言われるとはな」

「まあ、それだけ前の仕事がきつかったんだけどね」

「そうか。まあ、お前がいいと思うのなら、それでいいか」

「そう、それでいいんだよ」


末藤はいつもの日常に戻った。

神社の下働きだが刈谷も入り、より楽しく仕事ができるようになった。

そして今回の件で、もうすぐ末藤が神主になることが決まったのだ。

「神主が二人いてもいいの?」

「別に一つの神社に神主が二人いてはいけないという法律はない。多分。まあ二人いてもいいんじゃない。オカルト的な力なら、私よりもお前の方が上だし」

「おじさんがいいと言うなら」

「うん、いいぞ」


双子も普通の生活に戻った。

しかし前と変化が現れた。

それは神社に来たがらなかった正也が、ちょくちょく顔を出すようになったのだ。

もちろん双子の娘も。

姉が言った。

「私、大きくなったら巫女になるの」

妹が続いた。

「私も巫女になるわ」

正也、末藤、二郎、刈谷がそれを聞いて、笑顔になったのは言うまでもない。


       終

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― 新着の感想 ―
[良い点] ∀・)とてもイイ作品でしたね。ツヨシさんらしいホラーとその中に取り入れ込んだSF感、そして群像劇と。最終的に思わぬ伏線が回収されることで話ができあがっていましたが、日向と未藤のそれぞれのキ…
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