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「来た!」

三人は見た。

目の前に霧のような煙のような大きな黒い顔。

その目は真っ赤だった。

そして巨人のような大きな手が二つ現れた。

「来たな」

「ああ、来たな」

「本当にいたんだ」

みなが注目する中、赤い大きな目が一人ずつ見た。

そしてその目は日向のところで止まった。

――えっ?

顔は明らかな歓喜の色を浮かべた。

そして巨大な手の一本が日向の胸をつかみ、もう一本が首をつかんだ。

「うっ」

日向がもだえる。

それを見た三人が各々動こうとしたとき、あれがわかりやすく苦しみだした。

――なんだ?

巨大な手が日向から離れ、そして力なく垂れ下がった。

黒い顔も先ほどとは打って変わって、生気をなくしたような様子になった。

見れば日向が倒れている。

しかし目は開いていた。

あれを跳ね返した時に力を使い果たし、極度の疲労で倒れたのだろう。

――それにしても。

封印がすべて解かれ、一日足らずで百人近くを殺したあれを跳ね返すなんて。

かけらのかけらの時とはわけが違うはずのに。

とんでもない奴だ、この男は。

末藤は思った。

そしてあれの力が極端に弱まっていることに気がついた。

「こいつは弱っているぞ。今だ」

正也は十字架を掲げ、二郎は動きの止まったあれの顔に、次々とお札を張り付けていった。

末藤は何度もやったことのある悪霊封印をやってみた。

その辺の悪霊なら、ものの数分で封印してしまう力がある。

末藤は悪霊封じをしながら周りを見た。

まず正也。

全くなんの力もない。

もともと霊的な力は皆無だということは知っていたが、キリスト教徒でもないのに十字架をかかげて、真っ赤な顔で踏ん張っている。

全く戦力にはなっていない。

次に二郎。

すでに多くのお札を黒い顔に張り付けているが、その一枚一枚には少しは力があるようだ。

しかし全部合わせてみたとしても、あれを封印するにはほど遠い。

そして自分の悪霊を封する力。

それなりの効果はあるようだが、これも封印するには全く足らない。

あれは動きを止めているし、こちらには決定打がない。

――まさに膠着状態だな。

しばらくその状態が続き、末藤がどうしたもんかと考えてた時に、気づいた。

――まさか。

あれの力が復活してきているのだ。

しかもそれが急速に早くなっている。

末藤が見ている前で、あれは本来の力に戻ってしまった。

そして顔が動くと、張り付いていたお札がすべてはがれて地に落ちた。

――まずい。

末藤はさらに力を込めた。

しかし末藤にはわかっていた。

自分の力では今のあれには足止めにすらならないことに。

あれは日向を見、二郎を見、正也を見てそして末藤を見た。

末藤を見た瞬間、その顔に怒りの色が現れた。

直前まであれを一番苦しめていたのは末藤なのだ。

末藤は文字通り必死で悪霊封印の力を使った。

しかしあれにはほとんど効果がなかった。

あれの顔が末藤の前に迫り、二本の太い腕が末藤の首をつかんだ。

――ううっ。

逃れられない強い力が末藤の首を圧迫する。

末藤は感じた、

それは首を絞めるというよりも、命そのものを破壊するような力なのだ。

正也と二郎が騒いでいるが、あの二人にはどうすることもできないだろう。

――もうだめだ。俺も、全人類も。

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