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「ふうっ、あれがそうか。人類を滅ぼすもの」
二郎の言葉に末藤が答えた。
「ああ、そうだ。あいつは確実に人類を滅ぼす」
「なんだって」
「おまけにたった今、あいつの封印が解けた」
「えっ!」
二郎は思わずブレーキをかけた。末藤が言った。
「とりあえず帰ろう。話はそこでだ」
「わかった」
車は再び走り出した。
神社に戻った。
奥の部屋で二人向かい合う。
二郎が言った。
「あいつの封印が解けたって」
末藤が答える。
「もう時間の問題だったんだが、神井を殺した瞬間、その封印が全て解けてしまった」
「そうか」
「それにあいつには人類を滅ぼす力が確実にある」
「どういうことだ?」
「封印は解けたばかりなので、今のあいつには全力を出すほどの力はない。しかし問題なのは今の力ではなく、その奥にある真の力だ」
「真の力?」
「あの時、あれを見た時に確かに感じた。人ひとりを殺す力を一とするならば、あいつの真の力は軽く数十億はある」
「すると」
「本気を出せば一度に軽く数十億の人間を殺すことができるということになる」
「そんな」
「昔、力が見える人が言ったことは、本当だったんだ」
二郎は少し考えて、言った。
「これからどうするかだな」
末藤が返す。
「はっきり言って、あまり時間はない。
するとやることは一つしかない。あれをもう一度封印する」
「えっ、どうやって?」
末藤は内ポケットから何かを取り出した。
それは神井が持っていた小型のトライデンだ。
「これにはなんともいえない不思議な力がある。力あるものがこれを使えば、あれを呼び出すことができる。おそらくこの俺でも」
「そうか。でもどうやって封印する?」
「総力戦」
「総力戦?」
「あれを知るものを全員集めてあれを封印する」
「神魔の剣はないぞ」
「なくてもやらないと。全人類が滅ぶまでに、俺の見立てではもう一週間もない」
「えっ、そうか」
「おじさんは正也おじさんに連絡して。刈谷はまだ動けそうにない。おれは日向に連絡する」
「あれを追い帰した学生か」
「そう。日向の力、そしてなみの悪霊なら封印できる俺の力。その他もろもろ。全ての力をあいつにぶつけてなにがなんでも負印する。おじさんも少しは効果のあるお札ぐらい持ってるでしょう」
「早急にできるだけ集めてみる」
「急いで。やるのは明日。おじさんの神社で。正午に」
「明日やるのか」
「言ったでしょう。時間がない」
「そうだな」
「それじゃあ今すぐ連絡して」
「わかった」
二郎は携帯を取り出した。
末藤も同じく携帯を取り出した。
日向は考えていた。
もちろんあれのことだ。
そこに電話が鳴った。
出ると末藤だった。
「明日の正午、おじさんの神社に集合だ。その前に俺が君を迎えに行く」
「どうしたんですか?」
「あれの封印がついに解けた」
「解けたんですか!」
「ああ、あと数日で人類は滅ぶ。そのまえにあれを封印する」
「なんとかという剣は見つかったんですね」
「ない」
「えっ?」
「ないから俺と君、その他もろもろの力をつぎ込んであれを封印する」
「できるんですか」
「そんなことを考えている暇はない。やるしかないんだ」
「わかりました」
「じゃあ、明日迎えに行くから待っていてくれ」
「はい」
電話は切られた。




