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末藤が言った。

「いったい何を見せてくれるんだ」

「この世の真実と言っただろう。見せてやろう。ありがたいありがたい救世主様だ」

「えっ?」

「なんだって?」

二人は驚いた。

まさかあれをここに呼び出すというのか。

神井は驚く二人をしり目に何かを取り出した。

三又の槍。

トライデンらしきもの。

それを小型にしたものだ。

末藤は神井からもよくわからない力を感じていたが、そのトライデン自体からも、別で未知なる力を感じた。

――なんだあれは。

特別なものであることは間違いがない。

それにしてもこんなものを一体どうしたと言うんだ。

まさか神井が作ったとでも言うのか。

神井はトライデンを掲げると、自体から何とも言えない不思議な力をトライデンに向けて放出した。

するとトライデンがぼんやりと発光した。

そして末藤は感じた。

――あれだ。

あれがやって来る。

そして来た。

雲のような煙のような黒くて大きな顔。

大きな目は真っ白で、瞳と言うものがない。

そして通常の人間ではありえないほどの巨大な二つの手。

末藤も二郎も実際にこの目でみるのは初めてだった。

あれの一部の一部。

それだけでも感じる力のある末藤には、吐き気を覚えるほどに禍々しいものだった。

「おお」

「これが」

「救世主様なの?」

どうやら後ろにいる三人も、あれを見るのは初めてのようだ。

神井が言った。

「見たか、三流神社の愚かどもめ。これが救世主様だ。まだ完全ではないが、完全体になるのはすぐそこだ」

黒く巨大な顔は、その顔をゆっくりと一人一人に向けていった。

三人の信者、二郎、末藤。

そして最後に見たのが神井だった。

そして巨大な瞳のない顔は、神井を見て明らかに笑ったのだ。

「えっ、救世主様?」

神井がわかりやすくうろたえた。

何かを感じ取ったのか。

末藤ははっきりと感じ取っていた。

黒い欲望。

殺意とそれに伴う喜びだった。

「ちょっと」

それが神井の最後の言葉となった。

巨大な二本の手が、神井の胸をつかんだ。

「!」

神井の身体がこれ以上はないくらいにぴんと伸びた。

そして小刻みに震えている。

神井の胸をつかんでいる巨大な手は、その指の大半が神井の体の中に入っていた。

神井は痙攣していたが、やがて白目をむくとその場に倒れた。

末藤がすかさず神井の脈を見た。

「死んでいる」

「うわっ」

「きゃああーlっ」

「あああっ」

信者三人が叫びながら部屋を出て行った。

二郎が言った。

「逃げるぞ」

「ああ」

末藤は部屋を出る前にあれを見た。

その顔は歓喜に満ちていた。

そして瞳のない白い目は、全て真っ赤に染まっていた。

――こっ、これは!

「末藤、早く。逃げるぞ」

「わかった」

二人は家を飛び出した。

そのまま車に乗り込み、発進させた。

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