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刈谷があんなことになって、今も入院している。
この件に首を突っ込むのは、やはり危険だ。
しかしここなら一応安全と思われる。
二人にはなるべく危険な真似はさせたくはない。
二郎はそのまま二人を見つめるだけだった。
神井は考えていた。
しかしいらだちからか、考えがうまくまとまらない。
――くそう。
そんな中で、神井は一つのことを思いついた。
――それがいい。
神井は残った三人を呼び寄せた。
末藤が歩いていると携帯が鳴った。
大道二郎からだ。
「どうした」
「ちょっと大変なことになった」
「なんだ」
「あの教団から挑戦状が届いた」
「えっ! なんだって」
「簡単に言うと、明日の正午に教団に来いと。見せたいものがあるそうだ」
「見せたいもの。なんだそれは?」
「わからん。わからんがこれは行った方がいいのか」
「うーん、今のところ全てが進展していない状況だ。乗ってみるのも一つの手かもしれない」
「そうだな。それで誰が行く。刈谷はまだ入院中だが」
「おじさんと俺で行こう」
「兄は、双子はどうする」
「とりあえず待機だ。警察に目をつけられているこの状況で、なにかやらかすとは思えないが、絶対に安全とは言えない。全員で行って何かあったら、それこそ取り返しがつかない。二人で行って、残りは留守番ということでいいだろう」
「そうだな、それがいいかも」
「それじゃあ明日の正午に、例の家で」
「おう、わかった」
電話は切られた。
それにしてもここにきて教団に呼びつけられるなんて。
思いもしなかった展開だ。
それに見せたいものとは何だろうか。
意図がわからない。
――もう当たって砕けろだ。
とりあえず末藤は、護身用の鉄扇だけは持っていくことにした。
次の日、正午少し前に末藤と二郎は落ち合った。
二郎は神主の格好で来た。
わかりやすいし、相手に少しは威圧感を与えるかもしれない。
「行こうか」
「そうだな」
約束の時間きっちりに、神井の家に着いた。
呼び鈴を押すと、すぐに神井が顔を出した。
「よく来たな。三流神主とその仲間が」
二郎が言った。
「三流とはご挨拶だな。こっちは身内がお前の信者に刺されているんだ。そんな口がよくきけるな」
「おまえらがよからぬことをするからだ。救世主が、その完全体がもうすぐそのお姿を現そうとしているこの時に」
「救世主だと。あれは全人類を滅ぼす化け物だぞ」
「だから三流というんだ。尊い救世主様を、そんなものと勘違いするなんて。愚かどもめ」
末藤が口をはさむ。
「おじさん、こいつに何を言っても無駄だよ。それよりもあんた、見せたいものがあるとか言っていたな」
「ある。お前たちの真実を見せてやる。この世の真実と言うものをな。とにかく中に入れ」
神井は背を向け、家の奥に進んだ。
末藤と二郎がそれに続いた。
部屋に入ると広い居間だった。
外から見ても大きな家だったが、こんなにも広い居間があるとは。
そしてそこには三人がいた。
四十代に見える男性。
同じく四十代に見える女性。
そして高校生くらいの少年。
信者は四人いたはずだが、一人足りない。
その男が刈谷を刺したのだろう。
そして逃げている。
末藤と二郎はそう思った。
信者はみな、わかりやすいほどの敵意の目を、末藤と二郎に向けていた。
末藤は内ポケットの鉄扇に思わず手がいった。
「そこに座れ」
神井が言ったので、指さされたソファーにとりあえず二人は座った。
三人の信者がその後ろに立つ。
神井は二人の前に立った。




