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――神魔の剣か……。

剣があるとないとでは、あれを封印する難易度が断然変わってくる。

というよりも神魔の剣がないとあれを封印できる確率はほぼゼロなのだ。

――すこしはこっちも協力するか。

末藤は本質的にはあれそのものを追っているのだが、神魔の剣探しに少し労力を回そうと思った。


大道は考えた。

何回も考えた末に結論を出した。

実の娘二人。

かなえとかなでにあれのことを伝えることにしたのだ。

最初二人には「大事な話があるから、明日の日曜日には朝から家にいてくれ」と伝えた。

二人は「はい」とだけ答えた。それ以上何も聞いてこない。

わが娘ながら本当に素直に育ったものだと思った。

それだけに娘にこの荷を負わせるのはつらい。

しかしあれを見守る一族に、自分も娘も生まれてしまったのだ。

おまけにこの数年で、末藤や刈谷の両親をはじめとして、事故や病気で多くの親族が命を落としている。

大道の妻も含めて。

したがって戦力は多ければ多いほどいいのだ。

親の欲目などこの際言っていられる状況ではない。

――もう動き出したんだ。進むしかないんだ。

大道は自分にそう言い聞かせた。

そして明日のためにいつもよりも少し早めに床についた。

しかし大道は全く眠ることができなかった。


朝になった。

いつもの日曜日よりも目覚めが遅い。

どれくらい眠れたのだろうか。

一時間。

二時間。

いや二時間は寝ていないだろう。

いつもなら目覚める時間に、ようやく眠りについたのだから。

鈍い頭を無理矢理に動かしながら居間に行くと、娘二人は起きていて父を待っていた。

「あら、お父さん、おはよう」

「いつもよりも遅かったわね。疲れていたの?」

屈託のない笑顔で父を迎えた。

朝食の準備もできているようだ。

妻が死んでから、まだ小学生だった二人は、頼みもしないのに家事全般をやるようになった。

家事ももはやベテラン主婦の域に達している。

「さあ、朝ご飯食べてね」

「今日は大事な話があるんでしょ」

「ああ、そうだ」

大道はご飯を食べた。

娘二人も一緒に食べ始めた。

しかしほんと、中学一年でこんなにも料理がうまくなるなんて、妻も料理は上手だったが、今やその妻さえも超えている。

本当にいい娘に育ったものだ。

大道はいつにもまして感慨深かった。

それは今日、娘にあれのことを告げると決めているからだ。

大道は思わずそれを中止するころを考えたぐらいだ。

――やはり伝えないといけないだろうな。

娘が果たしてこんな話を信じるのか。

いったいどう受け取ってくれるのか。

それはまだ話をしていない大道にはわからなかった。


大道二郎は刈谷からの連絡を受けた。

刈谷が神魔の剣を探すことをメインにしたという話だ。

たしかにあれの封印には一番、というより間違いなく必要となるものだ。

――もう一度探すか。

二郎が神主を務める神社は歴史が長い。

あれに関するものを含めて、先祖代々のものはほとんどここにある。

ということは行方不明になった神魔の剣があるとしたら、この神社の可能性が高いのだ。

そんなわけで二郎は前にも一度、神社を探したことがあった。

しかしそれらしいものは見つからなかった。

でも何か見落としがあるかもしれない。

二郎は今度こそなにがなんでも見つけるつもりで探すことにした。


大道は話し始めた。

まわりからは小学生に間違われる小柄で童顔の娘二人にむかって。

大道の両親が昔、自分に説明するために、八百年前の資料を現代語にかいつまんで訳したものがあるが、両親と同じように大道もこれを娘に見せながら話をした。

あれについて。大道はごく自然に穏やかに話すことができた。

自分でもびっくりするくらいに。

娘たちは最初は驚き、戸惑っていた。

しかしだんだんとその目が真剣なものになっていった。

全てを話し終え、資料も見せた後に、沈黙の時が訪れた。

長い沈黙。

誰も動かないし口を開かない。

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