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――どうしようか?
大道は考えた。
しかしそれはただ思考が堂々巡りするばかりだった。
神井の前で信者たちが騒いでいる。
その内容は、教団の敵をどうするかだ。
「教祖様、どうされます」
「なにか思うところがあれば、おっしゃってください」
「なんでもします。全人類の救世主に敵対するなんて、許せません」
「いっそ叩きつぶしてやりましょう」
みなが思うことを口々に神井に告げていた。
神井は何も言わなかった。
それに対して信者たちも少なからずいらだちを覚えた。
口調がきつくなり、声も大きくなってゆく。
すると神井が口を開いた。
「とりあえず、探りましょう」
「探る?」
「私たちがですか?」
「もちろん最初からそのつもりですよ」
「やりましょう」
神井がそれに答える。
「みなさんで探ってください。敵はいったい誰なのか。数人いるようですが、どんな組織なのか。できるだけ詳しく調べてください。敵の正体がわかったら、それから次の行動を考えましょう」
「わかりました」
「今すぐに探ってきます」
「はい、行ってきます」
「教祖様、待っていてください」
全員がそう答えて、そのまま家を出て行った。
残された神井がつぶやいた。
「僕に敵するなんて。神をも恐れぬ不届きものめ。神罰が当たって後悔するがいい」
刈谷は相変わらず教団を探っていたが、ここのところ目新しい情報はなかった。
――そろそろいいかな。
もちろん末藤と相談する必要があるが、今やるべきことは教団の調査だけではない。
メインはあれの封印なのだから。
――一番大事なことは、神魔の剣を探すことなのでは。
そんな気が強くしてきた。
もともと最初からしていたのだが。
――やはり教団はもういいか。
あれの封印の一部を解いたようだが、それ以降は少なくともあれに関して目立った動きはないようだ。
それなら何とかするのはあれを封印してからでもいいのではないか。
もちろんあれを封印したら、またこりずに封印を解いてしまう可能性はあるのだが、それはその時に考えればいい。
封印をしてしまってからでも遅くはない。
――そうしよう。
末藤はまた感じた。
――あれがまた人を殺している。
また少し離れている。
今から言っても間に合わない。
あれは殺せば殺すほど力をつけ、いずれ自らにかかった封印を解いてしまうだろう。
今でもやっかいだが、そうなればもっとやっかいだ。
人類滅亡へのカウントダウンが始まってしまう。
現時点でも始まっていると言えるのだが、それがさらに確実なものになってしまう。
――いよいよ急がないと。
すると携帯に連絡が入った。
見れば刈谷だ。
「もしもし、どうした」
「ああ、教団の件だけど、今のところ目立った動きはない。それで教団は一旦置いといて、神魔の剣を探してみようと思うんだが」
「神魔の剣をか」
「ああそうだ」
「あれはたしかに必要なものだが、六百年前から行方不明になっているぞ」
「もちろん知っている。でもこの六百年の間、本気で探した人はいなかったんじゃないのか」
「そう言われてみれば、そうかもしれない」
「あれはずっと封印されたままで、現世に現れたことがこれまで一度もなかった。だから誰も本気で探さなかった。ゆえに剣が見つかることもなかった」
「そうだな。その通りだ」
「だから本気で探せば見つかる可能性もあると思うんだが、どう思う」
「そうだな。見つかる可能性はあるな」
「それじゃあ教団はしばらく無視して。神魔の剣を探してみる」
「そうしてくれ」
「わかった。それじゃあ」
電話は切られた。