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日向はまだこの男が誰なのかがわからなかった。

しかし日向が変な化け物に二度殺されかけたことを知っている。

また狙われるとも言っていた。

話を聞かないわけにはいかないだろう。

日向は末藤を見た。

真面目で誠実、そして意志が強い。

そんな第一印象を日向は受けた。

少し目つきが鋭いが、とても悪人には見えない。

道すがら少しばかり話をしたが、男は詳しくは答えてくれなかった。

男が言っていたのは、日向が落ち着けるところ、誰にも邪魔されないところで話がしたいと言っていた。

そうなると日向の下宿しかない。

大学の近くにいくつもある学生用の下宿の一つに、日向は住んでいたのだ。

近いので歩いて大学に通っていた。

そんなわけで男とそれほど話さないうちに下宿に着いた。

「どうぞ」

「失礼させてもらうよ」

学生用の狭くて古いアパート。

そこに日向が入り、末藤が入った。

そして小さなテーブルをはさんで座った。

末藤が言った。

「まだ名乗っていなかったな。私は末藤と言うものだ。神社に、社会的にいえば勤めていることになるな」

「神主ですか?」

「神主ではない。神主は別にいる。おじさんだが」

「そうですか、ところで」

「聞きたいことがあるなら、答えられることは全て答える。私も言いたいことは全部言うが、それでもいいか?」

少しばかり上から目線の物言いだが、柔らかい言い方とよく通る声で、悪い印象はなかった。

むしろ聞いてて心地よい。

日向が言った。

「どうして僕が化け物に二度命を狙われたことを知っているんですか?」

「感じたからだ」

「感じた?」

「私にはそういう力がある。いろんな力を感じ取るという。あれは四度人の命を狙い、二人を殺した。そして君はあれを二度とも追い返した。君にはその時の力の残り香のようなもの、と言うか残りかすのようなものが今でも少し残っている。それを感じたから声をかけた」

「そうですか。ところであの化け物はまた狙って来ると言いましたが、それは本当ですか?」

「二度あることは三度ある。殺し損ねた人間を見逃すような甘さはあれにはない。現に今までに四回人の命を狙っているが、そのうちの二回は君だ。君は二度とも追い返したが、その時にその不思議な力のほとんどを使っている。元に戻るにはしばらく時間がかかるはずだ。もとに戻る前に狙われたら、もう追い返せない。つまり君はあれに殺されるというわけだ」

「えっ、では僕はどうすればいいんですか?」

「協力してくれ」

「協力?」

「あれは私の先祖が八百年前に封印したものだ。しかし今になってごく一部ではあるが封印を解いて、また人を殺している。それに対抗する人間は、今のところ四人しかいない。仲間は一人でも多い方がいい。君は物心ついたときからいろんな力を感じ取っていたこの私でも一度も感じたことがない力を持っている。それは使いようによってはあれに十分対抗できるはずだ」

「そうですか」

「とにかくあれを再び封印しなければならない。そうしないと君は殺されるし、それだけではなく、全人類が滅んでしまうだろう」

「えっ、全人類がですか?」

「あれがすべての力を取り戻し、本気になればおそらくあっと言う間にだ。一日ともたないだろう」

「そんな化け物なんですか。あれっていったい何なんですか?」

「その生まれについては、よくわかっていない。が、その特性についてはある程度わかっている。簡単にいえば次々と人を殺し、ある時点でその数が一気に増える。そして覚醒と言うか本気と言うかその状態になれば、とんでもない力を発揮する。そうなれば人類が百億人いようが千億人いようが、皆殺しにされるだろう。一日ともたない。おまけに人類は百億人も千億人もいない」

「そんな化け物なんですね」

「だから何がんでも封印しなければならない。何がなんでもだ」

「……」

「と言う話だ。このままでは全人類が滅亡するが、君はその前に狙われるだろう。全人類のためとは言わない。自分の命のために我々と一緒にあれと戦ってはくれないだろうか」

「……はい」

日向はそう答えた。

そうするしかないだろう。

日向には末藤が言っていることが嘘には思えなかった。

現に顔と手だけの黒い化け物に二度命を狙われているし、末藤はそのことを知っていた。

誰にも言っていないことを。

感じる能力。

それがどんなものか日向にはわからないが、末藤は持っている。

それは日向には疑うことができなかった。

そして日向は二十歳になったばかりだ。死にたくなんかはない。

「そう言ってくれると思っていた。よろしく」

「日向京介です。よろしくお願いします」

「力強い仲間ができた。これで少しは心強くなった」

「で、聞きたいんですが?」

「なんだい」

「あれって、なんですか?」

末藤は少し考えて言った。

「人類を滅ぼすものだ」

「名前は?」

「名前はない。ああいったものにこの世の名前を付けると、より現実化してしまう。この世での存在が増してしまうんだ。だから名前は付けずに、ずっとあれと呼んでいる」

「全人類を滅ぼす力と言いましたが、それはどんな力なんですか?」

「正確なところはよくわからないが、あれの力を見抜いた者がそう言っている。八百年前の人物だが。そのあやかしの力を見抜く能力は確かなものだと伝えたれている。疑っても仕方がない。信じなくてもし本当だとしたら、取り返しのつかないことになってしまうからな。信じるしかないだろう」

「しかし、そんな化け物が現実にいるなんて」

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