2俺の許嫁
「どういうことというのはどういう意味だ? まんま、そこに書かれていることが嘘偽りない現実だ。受け入れろ」
なんかえげつねぇほど硬い言葉で、現実を突きつきられたように感じたがそれよりも。
「その………あれだよ。君たちが俺の…………許嫁なの?」
「そうだが、何か問題があるのか」
ツンとした言い方をするキルラ。
「あたし達は旦那様の許嫁で、これから一緒に暮らす家族だよ。よろしくね!」
「さいしょは戸惑うとおもうけど慣れれば、へーき」
アメリアとキュンティアは優しく呼びかけてくれた。
それにしても俺とは逆に三人は許嫁ということを、すでに受け入れているようだ。
「旦那様…………ええ……マジでか」
俺は逆に三人の返事に困惑する。
異世界で旦那様。それも三人も嫁がいる。どんなハーレム主人公だよ。俺。
そんな俺をよそに三人は並んで深々とお辞儀をする。
『ということなのでこれからよろしくお願いします。旦那様』
この子達を見ても何も思い出すことが出来ないし、俺の母親がなぜこの世界で、許嫁を用意していたかについても何もわからない。
それに急に旦那様と言われて身体が熱くて平常心ではなかった。
この感情を整理するためにも少し時間が欲しいが、返事をしないわけにもいかない。
「ここ、こちらこそ。よ、よろしくお願いします」
俺の挨拶はとてもひどいもので、その恥ずかしさに今は体中が煮えたぎる様に熱い。
そんな気持ちを少しでも誤魔化すために、俺は早口で話しかける。
「な、なぁ。その。君たちはその俺と会ったことはあるのか?」
「私はもちろんあるぞ。それに旦那様には告白もしてもらっている」
「キュンもそう。すでに受け入れてある」
「マジですか」
ダメだ。まったくと言っていいほど思いだせない。
こんなに思い出せないでいると申し訳なくて自分が嫌になってくる。
それにキュンティアにも告白をしてもらっているとなると、俺はすでに異世界にいてそれで記憶を失っていたのか? でも俺の記憶にはそのようなものはないし。
うーん。全く分からん。
「あ、あの。あたしはこうして旦那様として実際に会うのは初めてだよ」
少し恥ずかしそうにアメリアは教えてくれた。
「そっか。でもアメリアさんも急に許嫁とか言われてびっくりしなかったか」
「ううん。それはないよ。むしろ嬉しいです。あ、あとアメリアさんじゃなくてちゃんとアメリアって呼んでくださいね!」
かわええなぁ。っていかんいかん。
思わず見惚れしまいそうになるが、顔を引き締める。
それでもアメリアが頬を赤らめてうつむきながら話すその姿を見て、俺も胸の内が熱くなるのを感じ続けていた。
「悪い、アメリア。そうだよな。俺達婚約者同士だもんな。それにしても……そっか。でもそうなると、何も覚えていないのは本当に…………ごめんな」
申し訳ないと言わんばかりの表情をしているとキュンティアが下から覗き込むように声をかける。
「なにも知らない。しかたない。旦那様はきおくを失っているから」
「なっ………………」
キュンティアに、突然事実を伝えられ、絶句するのと同時に、俺はやっぱりそうなんだと思ってしまい、言葉を返すことが出来なかった。
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