10総士との出会い
俺は城に戻るとすぐに自室へと戻った。裏で陰口を言われているということは知っているが、ここは軍。
上官の命令絶対であり上官の侮辱は禁止されているので、表立って行動する者はおらず表面上の信頼が今日も総士を出迎えてくれた。
この王国は基本平和なので今では特にすることも無くすることといえば、たまに任務に出ることを除けば、訓練ぐらいであるが、総士が参加することはないので、気づかれることなく誰もいない部屋に戻った。
今日も惰眠を貪ろうとしたとき、急に部屋の扉が開かれつかつかと許可なしに誰かが入って来たので視線を向けるとよく知ったオッドアイの少女と目が合った。
「よう。今日はいつも以上に不機嫌だな」
「全くもってその通りだ。……貴様。本当に役に立たんな」
鋭くに睨むその赤目はいつも以上に鋭さを感じさせた。
さらにその言葉は想像以上に鋭く突き刺さる。さっきまで俺ならダメだったかもしれないけど今の俺は大丈夫。持ちこたえられる。
「そうだな。王女様の命令を達成出来なくて打ちひしがれているよ」
「ならばもっと反省しているように見せてみろ! 今の貴様からは全くと言うほど反省が感じられない」
まだ背が小さいくせに妙に大人びているのは、こいつの出自のせいなのか妙に説得力がある。もう少し可愛くなればいいものを。
「俺が活躍する戦いも無いし、平和で何よりだと思うぜ」
「貴様のその言葉を聞くだけで虫唾が走るな。少しは期待した私がバカだった」
「そりゃどうも。それで何しに来たんだよ。みんなの代表で俺を罵倒しに来たか。あいにく俺には効かないぜ」
「いや、貴様を罵倒するなどという無駄はしない」
「じゃあ何をしに来たんだよ。夜這い——————」
「おい? 殺すぞ?」
態勢が不利だったとはいえ、一瞬にして総士は喉元に刃物を当てられ身動きが取れなくなる。
「すまん。口が滑った」
「そうだろうな。貴様もよく分からない出自だから許してやるが次はないからな」
少女は刃物をしまう。本当に油断できねぇ相手だ。
「それでマジで何しに来たんだよ」
「王女様から伝言だ」
総士は王女様という言葉を聞いて明らかに表情を曇らせた。
「そう……ですか。それでなんと言っておられましたか?」
「なんで急に敬語なんだ……」
「いや、だってな……」
姫さまはこの世界に俺を呼んでくれた、いわゆる恩人なのだ。
その恩人に恩を返す機会を自ら用意してくれたのに俺が応えるということが出来ていないことは許されることではないだろう。
いくつも予想される言葉に震えながら耳を傾ける。
「今度はなんでそんなに怯えているんだ……。王女様は今回のことは気にしていないから、とにかく行ける日は毎日行けと言っていたぞ。それに貴様の心配もしている。ったく。その王女様が気にしている奴とはいったいなんのだ」
心配していると聞かされた時は、感情が揺さぶられ込み上げるものがあったがなんとかこらえる。
「それは俺と似た奴だよ」
「え⁉ そんな役立たずに会いたいのか⁉ それはあれだな。王女様を止めさせないと。しかもこのまま無駄な奴に税金を使うのはよくないし、もう一度給金の査定を提案させてもらうとするか」
「ちょっと待て! 一度にお前は多くの人を敵に回しているぞ」
俺の事はともかく、善吉の事を馬鹿にすればきっとあの三人が黙っていないに違いない。
「何を言っているのやら。貴様も私の実力は知っているだろう。それに向かって来るならば私は容赦しないぞ」
少女は総士の言葉を笑い飛ばす。
「その言葉、後悔しないといいな」
「ふん。私は後悔などしないからな。それに出来事のことは書類で確認すればいいことだ。それでは伝えた事からな、失礼する」
少女は言いたいだけ言ってどこかに行ってしまった。本当に見た目は可愛いのに言葉が鋭すぎるんだよな。
「とりあえず命令通り明日も菓子でも持って行くとするか。あと、手は打ってあるから調べても分からないだろうけど」
もちろん内容に嘘は書いていない。俺は負けた。善吉のヒロインは確かな実力があるとも記載した。
でも、善吉本人の力については、俺もなんとなく気づいた程度なので詳細についてはここでは何も報告しておらず、部下にも詳細については一切語らないことを命令として伝えてあるのだ。
「さて今日もこれで帰るとするよ」
「どうせまた明日も来るからな」
「仕方がないだろう。これも与えられた任務だからな。それにこうしているだけで結構気持ちも楽になるもんだぜ」
「それなら良かった。それにそろそろ俺も行こうと思っていたところだ」
「お⁉ マジか! ようやく城に来てくれるのか!」
「まぁな。ようやくここら辺の事も分かって来たし、そんなに呼んでくれているなら一度は会いに行かないとならないだろ」
「オーケー! そうしたら決まったら教えてくれ!」
「そうだな。気をつけて帰れよ」
「おう! じゃあな」
総士を見送り俺はゆっくりと腰を上げる。
「さてと俺も行くとするか」
家にいるキルラとキュンティアに声をかけてから、俺は街へと向かうのであった。




