明星家の朝
「おはよ~。二人とも~」
複雑な雰囲気が漂っていた二人にまどろんだ声音が割って入る。
「あれ? 今日は起きていたの?」
「珍しいな。お前が起きているなんて」
「ん~。今日はなんか………そういう日なんだよ」
ふぁあ~とあくびをしながら気だるそうに話すのは、獣人種である明星キュンティアである。
キュンティアはこの家の住人で最も自由に一日を過ごしている。
性格は基本人任せ。
言えばやることはやるのだがほとんど動かない。また先ほどのアメリアが言っていた通り、特に縛られるのが嫌い。もっと言えば圧迫、締め付けが苦手だ。
今も着ている服装は見た目はきちっとした浴衣のような和装なのだが、かなりの軽量化してあり最低限の重量で作られている。
「キュンティア。お前、今日もその服しか着ていないのか?」
「そうだよ。これがあればじゅうぶん。もんだいない」
服の裾をもってパタパタさせながら話すキュンティアを見ながら、アメリアはそのいつもの服装に一言。
「でもキュンちゃん。その服装はかなり薄いから、寒くなったらちゃんと上から何か羽織るんだよ」
「それについてはわかっている」
アメリアの気遣いをあくびとと共に噛み砕く。
「確かにその服は薄いからほとんど下着を隠しているようなものだからな」
「キュンは二人みたいに大きな胸じゃないから問題ない」
キュンティアは容姿こそ整っているが、二人と比べてしまうとお子様体系であるのが、本人は特に気にしておらずむしろ軽くていいと開き直っているぐらいだ。
「それにキュンはこの家でいちばんまとも」
ふっふっふと笑うキュンティアにキルラも同調する。
「そうだな。一番まともじゃないのはアメリアだからな」
「えー。あたし? どう見たって二人の方が良くないでしょ」
髪を指でくるくると巻きながら反論する。
「いやいや、アメリアの方が総合的に見て一番ヤバい性格だからな。私達はともかく善吉には必要以上に迷惑をかけるんじゃないぞ」
「え~。そんなにかなぁ。でも可愛いのは好きだし。善吉君とはもっと深め合いたいし。えへへ~。ダメだよ~善吉く~ん」
表情を崩してにやけるアメリアを二人はやっぱりと言いたげな表情で眺めていた。
「そう。それが原因だという事を分かっていないことがもはや証明だな」
「そうそう。キュンもそう思う。ふわぁ~。かお洗ってくるね」
キュンティアはそのまま一旦部屋を出て行く。
「おーい、飯が出来たぞー」
善吉はお盆に乗せて出来上がった最後の料理を机に配膳していく。
「善吉君。あたしも手伝おうか?」
「アメリアはこの後に仕事があるんだから先に食べていていいよ」
「ありがとう善吉君。それじゃいただきます」
「キルラも先に冷める前に食べてくれ」
「悪いな。それじゃいただくとしよう」
アメリアとキルラは先に食事を始めると、キュンティアが戻って来た。
「ゼン。おはよ~。」
「おはようキュンティア。そろそろご飯だから座っていてくれ」
「うん。わかった」」
そのままキュンティアは先に座っていた善吉の太腿の上に座る。
「こら、キュンティア。ここはおまえの椅子じゃないだろ」
「ごめんなさい~」
えへへと無邪気に笑うと善吉の表情も自然と緩んでしまう。
「キュンティアには困っちまうな」
口では困っているように言っているが、その表情は困ったようには一切思えないように緩んでいた。
この光景に慣れているキルラは用意してもらった食事が冷めてしまわないうちに食べて始めるのだがチラッと横を見ると、朝からベタベタと仲よくする光景に、熱く視線を送り続け息を荒げるアメリアがいた。
それに気づいていたキルラはやれやれといった感じで、善吉に聞かれない様に小さな声でアメリアの耳元で囁く。
「アメリアには何度も言っているけどそういうところ。だめだぞ」
「え? なんのことかな⁉ 全然キュンちゃんと変わってほしいとか思っていないんだからねっ!」
「その言葉はきっと誰も信じてくれないと思うぞ」
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