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1明星家の住人

「ふわぁ。おはよう。善吉くん。今日の朝ごはんは何かな?」

 

 手を口元にあてて未だに残る眠気を押さえながら少女はキッチンで今も自分のエプロンを纏って朝食の準備をしているこの家の住人、明星(あけぼし)善吉の名を呼ぶ。


「おはようアメリア。今日は新鮮な卵をいっぱい使った、卵料理のフルコースだ」

「わー。朝から手の込んだのを作るね~。 あ! それにもしかして、いま作っているのは、フレンチトーストかな!」

「そうだよ。アメリアも大好きなフレンチトーストだ」

 

 大好きなフレンチトーストを目視すると、先程まで残っていた眠気を吹き飛ばして目を輝かせながら近づいて来たのが、明星アメリアである。

 

 アメリアは肩までかかる桜色の髪を揺らしながら、今から焼かれようとしている卵液にどっぷりと浸かれたパンに対して、嬉しそうにその双峰を向けている。


 我が家の住人は甘いのが基本好きなので、喜んでくれるだろうと思ってメニューに加えたのだが、すでに喜んでくれているので選んでよかった。


「フレンチトーストが朝から食べられるなんて今日はいい日だね」

「そんなに嬉しいか?」

「もちろん嬉しいよ! あたしとしては、善吉君が料理をしてくれるって聞いただけでテンション上がるのに、大好物まで用意してくれるなんて、これからの朝ごはんがますます毎日楽しみになっちゃうよ!」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど一応ご飯係は交代制だぞ」

 

 アメリアはなんでもよく食べるが、特に卵が大好きであるので朝ごはんから基本楽しそうにしている。

 

 昨日買い物に行ったときに卵が安かったから多めに買っておいたけど、こうして喜んでくれているなら大成功である。


「そうだ! あたしも何か手伝えることがあればするけど何かあるかな?」

「もう少しで完成だから、とりあえずアメリアは椅子に座っていてくれ」

「はーい。じゃあそうしています」

 

 アメリアは指示に従って椅子に座ると、先に座っていたこの家の二人目の住人と挨拶を交わす。


「おはよう。アメリア」

「おはよう! キルラちゃん」

 

 アメリアと向かい合うようにすでに座っていたのはこの家のもう一人の住人、明星キルラであった。

 

 キルラは蒼い瞳に綺麗に整った銀髪の持ち主であり、容姿もアメリアと同等で男の注目をひく魅力的な女性である。


「今日は早くから起きているね。昨日は早く寝たの?」

「ああ、そうだとも! 昨日はあまりムラムラしなかったから早めに寝て、次の夫婦の営みのために体力を温存しておくことにしておいたのだ。それに今日は私と善吉は何も予定が無いからきっと熱い夜になるに違いない!」

 

 頬を赤くしながら朝がまだ始まったばかりだというのに、夜の話をしているキルラだが、すでにアメリアはこの状況に慣れているので、冷静に会話を続ける。


「それは単純に善吉君が昨日も早く寝たからだよね。それにしてもキルラちゃんは落ち着いて言葉を選ばなきゃダメだよ」

「ふっふっふ。それぐらいで善吉が困ってもらっては逆に私が困るな!」


 どやっ、と聞こえてくるところがキルラらしいが、アメリアは馴れた態度で受け流す。


「家ならまだいいけどお外では本当に気をつけてね。この間も急に二人してどっかにいったと思ったら、始めちゃっているし」

「あの時は周りに誰もいないと思ったら急にこう…………な。分かるだろう。それにキスぐらいでそんなに言うことないじゃないか」


 その唇を優しく細い指でなぞる姿がどこか艶めかしく、感じられアメリアは顔を紅潮させる。


「それ以上に発展しそうだったから困ったわけで……………とりあえず。お外では節度とルールを守ってくれればそれでいいから過激なのと、下品な言葉はやめてね」

「もちろんだ。それは善吉と二人っきりになった時にとっておきたいからな」

「ほんとに、ほんとーうにお願いだからね」

「善処するぞ」

 

 またしもどや顔で返事をしてきたキルラに、アメリアはより善吉のことが心配になったがこればっかりは悩んでも仕方がない。あとは善吉に頑張ってもらうしかない。


「そういえばキュンちゃんはまだ起きていないのかな。そろそろ起きないと朝ごはんが出来ちゃうよ」

「私もキュンティアが起きているのを見ていないぞ。それに起きてこないのはたまにあることじゃないか」

「キュンちゃんは普段から自由にしているし、束縛されるのが嫌いって言っているからな~。でも朝食出来ちゃいそうだし起こしてこようかな」

「キュンティアは自由なのは慣れたが、今日はせっかく善吉が朝食を用意してくれたし、たまにはみんなで食べるのがいいだろう。それとアメリア。ちょっといいか?」

「ん? どうしたの?」

「その、朝から束縛とかそういう表現はやめてくれないか。少し興奮してしまったじゃないか」

 

 もじもじとしているキルラを見てアメリアは目を細める。


「…………うん。ごめんね。今のはあたしが悪かったよ」

 

 急に静かな声でキルラが話していたので、聞き逃さないように集中して聞こうとしたことを後悔するアメリアであった。



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