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89、スチーム星 〜巨大なロボットのような住人

 僕はいま、砂漠で会った人達に連れられて、移動している。歩いているわけではない。なぜ、こんなものがこの世界に……。


 いや、うん。ここは、別の星なんだよな。イロハカルティア星ではなく、スチーム星と言っていたっけ。


 イロハカルティア星と同じく、黄の星系のひとつだという。ただ、かなり黄色い太陽から離れた場所にあるらしい。だから、夜は、こんな風に、星が輝く夜空になるんだ。


 まぁ、他の星なら、これもアリなのだろうか。魔法を使えない……いや、使ってはいけないと言っていた。神のやしろという場所でしか、魔法は使ってはいけないらしい。


 魔法を使うと、その場所に、空から何かが落ちてくるという。理解できないけど……魔法を使えないから、別のものが発展していると考えると、納得はできる。



「これは、何という乗り物なのですか」


「へぇ、怖れないんだな。魔法を使う奴らは、魔物かと尋ねるが。これは小型車両と呼んでいる。小さな人型と相性がいいんだ」


(これで、小型?) 


 どう見ても巨大すぎるトラックなんだけどな。でも、荷台には屋根がないから、軽トラみたいな感じかも。


 シャインは、僕の腕にしがみついている。というか、顔を押し付けているんだ。ガソリンか何かの燃料の臭いが嫌なのだろう。


「もっと大きな車両もあるんですか」


「あぁ、ただ、小型車両の方が、どんな場所も走れるから、見回りに使うのは、これだな」


「へぇ、なるほど」


 運転席の方を見てみると、僕の記憶にある車とは少し違うようだ。トラックの運転免許は持ってなかったけど。


 でも、ハンドルやアクセル、そしてブレーキは、普通の車っぽい。僕にも運転できそうな気がする。


「子供は、なんでも興味津々だな。そっちの子は、怯えているみたいだが」


「あはは、あー、はい」


 僕は、適当にごまかし笑いをしておいた。この人達が信用できるとは限らないもんな。



 しばらく走っているうちに、僕は眠ってしまった。シャインが眠り始めたことで、なんだかつられたんだ。


 乗り物の中って、ついつい寝てしまうんだよね。背中に『リュック』を背負っているからかな。僕は安心して眠れた。




「あれ、えらく小さな生き物を拾ってきたんだな」


(うん? 着いたのかな)


 僕は、まだ寝たふりをしている。


「あぁ、砂の墓場に居たぜ。昨日の箱庭とは、別みたいだな。子供二人だ」


 何人かの話し声が聞こえる。でも、わからない言葉をしゃべる人の方が多いみたいだ。


 改めて、別の星にいるのだと実感する。


 リュックくんは、この人達が現れる前から、魔法を使うなと言っていたよね。スチーム星のことがわかっているみたいだよな。



「似たような大きさだから、一緒でいいか」


「そうだな。ケンカをしないように、言葉のわかる者が見張っておけば大丈夫だろう」


「じゃあ、俺が連れていく」


「そっと触れよ? 潰すなよ」


(な、何? 潰す?)


「袋に入れてくれよ。そんな小さな生き物は、うまくつかめない」


「それなら、小型車両ごと、持っていけばいいだろう」


「あぁ、それは楽でいいな」


(はい? トラックを持つ?)


 グラッと、荷台が傾いた。


「おい、そっと運べよ。小型車両も潰すなよ」


「あぁ、悪い。手が滑った」


 ぐんと、すごい勢いで上昇する感覚で、シャインも目を覚ましたみたいだ。


 僕は、しーっと、シャインに合図をした。すると、僕にくっついて、また眠ってしまったみたいだ。


(よく寝る子だな)



 ドシン、ドシンと音がして、大きく揺れる。


 僕は、荷台から下を見下ろしてみた。


(うわぁ……)


 まるで、展望台にいるかのようだな。


 辺りは、夜が明けたのか、うっすらとモヤがかかっているが、随分と明るくなってきている。


 しかし、やはり視界は悪い。なんだか、遠くが見えないんだよね。『眼』のチカラを使ってみようかな。



「おっ、起きたのか。言葉はわかるか?」


 声のした方を向くと、めちゃくちゃ大きな顔があった。さっきの人達と違って、ゴーグルはしていない。


 人の顔というより、ロボットみたいだな。髪の毛がないから、そう見えるのかもしれないけど。


「はい、あの、すごく大きいんですね」


「あぁ、俺から見れば、すごく小さいんですね、だけどな。がははは」


 笑うと、手に持っているトラックが揺れるんだよね。シャインが転げ落ちないようにと、片手を添えた。


「さっきの小型車両の人は、あまり大きくないですよ」


「あぁ、神に仕える人は、身体の大きさを変えられるんだよ。あの大きさの種族が、圧倒的に多いから、外交用の姿だな」


「へ、へぇ。神に仕える人なんですね」


(この星にも神がいるんだ、当たり前だけど)


「あぁ、俺も、一応そうなんだが、子供だから、まだ大きさは変えられないんだ」


「えっ? そんなに大きいのに子供?」


「あはは、大人は俺より、もっと大きいぞ。ほら、あそこにいるのが大人だよ」


 トラックをグイと持ち上げられた。彼の肩の高さだ。あまりの急上昇に、あやうく転がり落ちそうになった。なるほど、子供だからわかってないんだ。


 僕が見やすいようにと、向きを変えられた先には、雲に届きそうなくらい巨大なロボットが歩いている。高層マンションよりも、高いよな。


「めちゃくちゃ大きいですね」


「だろ? 俺が子供なのがわかるだろ。この村の大人は、小型化している人が多いけどな。小型化すると、移動に時間がかかるんだ」


 ズシン、ズシンと歩いていく彼の一歩は、とても大きい。なるほど、確かにそうだよな。


 そして、ここは、村だと言っているけど家がない……と思っていたら、大間違いだった。いま、彼が歩いているのは、村の中の道のようだ。左右には、かなり離れた場所に、巨大な壁がある。


 だけど、この身体なら、壁までは、数十歩なのかもしれない。天にまでそびえ立つ壁は、おそらく住宅の外壁だ。


 そして、この高さから見ると、遠くまで見通すことができる。地面近くは、空気が濁っているのかな。




「さぁ、着いたぞ」


 一気に急降下するような感覚に、思わずヒヤリとする。地面ギリギリのところで、降下はゆるやかになり、そっと地面にトラックは置かれた。


「ありがとうございます」


「えっ? あぁ、まぁ、あはは。たいしたことないよ。小型車両は、壊れてないよな?」


(なんか、照れた?)


「大丈夫だと思います」


「よかった。今度壊したら、お小遣いもらえなくなるところだったんだ。あはは、じゃあな」


 ドシン、ドシンと、すごい音を立てて去っていく。やっぱり、ロボットみたいに見えるよね。




「ロバートのやつ、小型車両ごと置いていきやがって」


 ゴーグルをつけた人が、トラックに向かって歩いてきた。さっきの子は、ロバートというのかな。


 確かに、トラックを置いていくと、邪魔だよね。やはり、子供だから、わかってないんだ。


「おっ、これはまた、小さな生き物だな。言葉はわかるか?」


「はい、わかります。あの、さっきの子は、ロバートという名前なんですか?」


「あはは、聞いていたか。そうなんだ。神に仕える村に生まれたのに、何もできない困った子だよ」


「えっ? でも、いま、村の大人と子供のことを教えてくれましたよ。とても優しかったです」


「ええっ!? 本当かい? 小さな生き物には、優しくできるのか。少しは成長したのかねぇ」


(なんだか、信用されてないな)


 ジジッ


 無線か何かの機械音だ。


「はいはい、えっ? あー、わかった、昨日のと一緒だな。エサは? あー、はいはい、了解」


(マジで無線通信機?)



「坊や、えっと、二人か? 歩けるか」


「はい」


「こっちだ」


 僕は、シャインと手を繋ぎ、荷台から飛び降りた。そして、案内の人の後ろからついていく。


 エサがどうのと言っていたけど、食べ物を用意してくれるのだろうか。だけど、この星の食べ物って……。



 広いホールを、どこまでも歩いていく……と感じたけど、これは、たぶん、普通に通路だよね。


 さっき、トラックを置いた場所が、門なのかもしれない。


 すべてのサイズが、百倍くらいなのかな。迷宮を箱庭だと言っていたことが、なんだか、スッキリと理解できる。



 巨大な扉の前で、僕達は、別の人達に引き渡された。


「ようこそ、スチーム星へ。かわいいお客様」


 この人は、ゴーグルをしていない。背は2メートルくらいだけど、やはりロボットみたいに見える。


(この星の人は、ロボットなのかな)


 僕がぺこりと頭を下げると、シャインも真似をした。


「うふふ、かわいい。疲れたでしょう? さぁ、どうぞ」


 扉が開かれた。とんでもなく広い部屋だ。まぁ、予想通りだけどね。


「あの、ここは……」


「心配しなくても大丈夫よ。ここは、神スチーム様が作られた遭難者の一時保護施設よ。たくさんの遭難者がいるけど、ケンカしちゃダメよ?」


 シャインは、鼻をヒクヒクさせている。


「あ、はい。あの、食べ物があったら嬉しいんですけど」


「うふふ、大丈夫よ。さぁ、どうぞ。今夜、担当の人が来るから、それまでゆっくりしていてね」




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― 新着の感想 ―
[一言] なんか…◯◯が揃っていきそうな予感…|д゜)ジー
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