表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/145

80、迷宮 〜通路をふさぐ集落

 迷宮の壁は予想以上に薄く、僕はすぐ向こう側の通路に、通り抜けてしまった。


 今の僕は、透明化し霊体化しているから、その気配さえ察知されないはずだ。ふわふわと、通路を進んでいく。


 霊体化していると、幽霊状態で飛んでいるから、イマイチ進むのが遅い。だけど、攻撃を受けることもないから、この方が楽だよね。


(あの壁もすり抜けなきゃ)


 僕は、迷宮都市を目指して進む。僕が『眼』のチカラを使って見つけたのは、都市とは呼べないような集落だけど、迷宮都市の特徴はわからない。


(まさかのひとりぼっちだよね)


 今の状況を考えてしまうと、また、泣きたくなってくる。幽霊が泣くと絶対こわいよね。泣いちゃだめだ。


(まぁ、見えないだろうけど)


 たぶん、僕の声は聞こえるんだと思う。だからといって、迷宮を通る人を驚かしたりはしないけどね。



 僕は風魔法を使うことを覚え、加速しながら、しばらく進んだ。


 通路も壁も、何の抵抗もなく通り抜けることができるから、全然、迷宮って感じはしない。


 そして僕は、集落に続く通路を見つけた。


 ここで、霊体化を解除してもいいんだけど、もし、転移魔法陣を踏んでしまったら困るよね。


 集落の入り口を目指して、僕はふわふわと飛んでいった。




「この集落は、獣人の立ち入りは、お断りだ!」


「でも、待ち合わせをしているんです」


(何か、もめている)


 水色の髪の男の子が、集落に入ろうとして拒絶されているみたいだ。


(確かに獣人だな)


 男の子の頭の上には、耳がついている。少しクセのある水色の髪は、とてもツヤツヤしていて触りたくなる。


(ダメだ、幽霊に触られたらトラウマになるよ)


 僕は、霊体化を解除し、そして透明化を解除した。



「なっ? こんな場所に、転移だと?」


 突然、現れた僕に、集落の入り口にいた人は、驚きで表情を引きつらせている。


(そこまで、ビビる?)


 あー、そうか、ここは、人族の集落なのかな。迷宮都市は、ハーフや、いろいろな人が逃げ込むと聞いている。ということは、ここは、違うかな。


(一応、確認しておこう)



「あ、あの、すみません。ここは、迷宮都市ではないですよね?」


「あぁん? ここは、おまえみたいな子供の来る場所じゃないよ。それに、その戦闘力……魔族だな? いや、迷宮都市を探しているなら、ハーフか。なぜ、こんな場所に飛ばされたか知らないが、とっとと立ち去れ」


(子供には厳しい。でも、何か変だな)


 なんだか見た目は魔族っぽいのに、なぜ、人族みたいな反応なのかな。魔族は子供には優しいのに。



 すると、水色の髪の男の子が、パッと振り返った。その目には、涙がいっぱいたまっている。見た目は、5〜6歳に見える。獣人だから、年齢は、わからないけど。


(なんだか、保護欲をかきたてられる)


 男の子は、僕をすがるような目で見てくる。犬系の獣人なのかな。とてもかわいらしい。頭を撫でたくなる。


 でも今の僕は、この子と同じくらいの見た目だよな。友達として接する方がいいよね。



「ねぇ、キミ、ここで待ち合わせをしているの?」


「は、はい。通路の先の街で、待ち合わせをしています」


(礼儀正しい子だな)


「通路は、たくさんあったけど、この通路で間違いない?」


「はい、この通路を進むようにと言われました」


「警備隊の人に?」


「いえ、あ、警備隊の人……?」


 男の子は、首を傾げている。獣人なら、警備隊を知らないのかもしれない。



 僕は、男の子ともめていた男性に目を向けた。


「待ち合わせをしているみたいだから、集落に入れてあげてくださいよ。それが無理なら、この子と待ち合わせている人を、連れて来てください」


 すると、その男は、怒ったのか、目を吊り上げている。こんな表情って……変だよな。


「ここで待ち合わせをするわけがない。その子供が道を間違えたのだろう。さっさと立ち去れ」


(やっぱり、変だな)


「貴方は、魔族なのに、なぜ僕達に、そんな言い方をするのですか」


「は? な、何を……」


(動揺してる? もしかして……)


 僕は、ゲージサーチをしてみた。この星の住人なら、ゲージは、体力と魔力が1本ずつの合計2本だ。


 だけど、目の前の男は、体力2本、魔力1本。


(やっぱり、外来の……神ではない気がするけど)


 ここは、まさかの神々の隠れ集落なんだ。だから、立ち去れとうるさく言ってるんだな。



「この通路の先には、他に集落はないんですか」


 僕がそう尋ねると、その男性は、チッと舌打ちした。


「おーい、子供を外に放り出せ」


 その男がそう叫ぶと、集落の中から、魔物が出てきた。いや、違うかな。顔は黒い人間みたいだ。四足歩行なんだけど。



 すると、僕をブワンとバリアが覆った。男の子が僕にバリアを張ってくれたみたいだ。


「ありがとう、どうしよっか。戦える?」


「はい、大丈夫です。たぶん、通路がこの集落に塞がれているんです。術者を見つけないと、本当の通路が現れません」


「そっか。じゃあ、術者を探そう」



 僕達に襲い掛かってきた四足歩行の何かは、男の子が使った魔法で、地面にペチャリと、突っ伏した。重力魔法みたいだ。


(すごいな、この子)



「チッ! 使えないな」


 その男は、剣を抜いた。まずい、僕は剣を持ってない。


(リュックくん!)


 心の中で、そう叫ぶと、僕の手に剣が現れた。鎧は身につけてない。ちょ、これ、鎧も必要だよ。


 そう文句を言っても、返事はない。何か、話せない事情があるのかな。



 キン!



 僕は、その男の剣を受け流した。


(子供の身体では、キツイ)


 剣術は、体格差が大きく影響する。


 リュックくんが、僕に奴の動きの予告を見せてきた。右側に回り込んで、叩き斬るような重い斬撃か。


 僕は、右に飛び、奴の回り込むスペースを潰した。


 そして、奴が振り下ろした剣をギリギリ避けると、がら空きになった背に、男の子が雷撃魔法を落とした。


(す、すごい)


 その男は、地面に転がって、ピクピクしている。だけど、死んではいない。体力は大幅に削られて、ゲージはオレンジ色になっている。一撃で、半分以下に減らしたんだ。



「なんだ? 一体、これは」


「子供の襲撃者か」


 わらわらと、人が出てきた。ゲージサーチをしてみると、やはり、みんな3本ある。



 男の子は、何かを見つけたのか、突然、駆け出した。


(は、速い)


 集落の中を人を避けながら、走っていく。


(放ってはおけない)


 僕も、男の子の後を追った。リュックくんの鎧がないから、あまりスピードが出ない。だから、捕まりそうになったら、半分だけ霊体化した。


 すると、みんな僕を通り抜けていくんだ。


 しかし、半分でも霊体化すると、さらにスピードが落ちるから、調整が難しい。それに、この姿は、男の子には見せたくない。


(見られたら、絶対、泣くよな。気をつけよう)



 パリン!



 何かガラスのようなものが、割れる音がした。


 男の子が、何かの術を使って、集落に飾られていた像の一部を壊したみたいだ。


 ブワンと、見える景色が一瞬ゆがんだ。



「おまえ、何だ? まさか、神族の子供か」


 男の子が捕まりそうになっている。だけど、必死に逃げているだけだ。外来の侵略者だとは知らずに、殺さないようにしているのかもしれない。


 男の子が立ち止まり、やっと追いついた。


(どうしよう)


 助っ人と合流してから、隠れた神々を狩ると言っていたよな。今はまだ、その時ではない。下手をすると、気づかれて、逃げられるおそれがある。



「僕達は、迷宮都市に行きたいだけです! 門にいた人が、勝手に勘違いしたんです」


 僕は、子供らしく、ふくれっつらをしてみせた。


「なんだ、それでキーパーを壊したのか。それなら、そう言えばいいのに」


(キーパー? 像の一部のことらしいけど)


 男の子は、駆け出したときとは違って、オドオドしている。僕は、彼の手を握った。小さな手だな。


(いや、僕もだけど)


「ふん、子供など要らん。あれこれと破壊されてはたまらんからな。キーパーを知っているなら、配下にした者の子供か。さっさと行け。おまえらが出るまで、キーパーは、直さないでおいてやる」


 そう言い放った男に、他の奴らは従うようだ。この人は、神なのかもしれない。



「じゃ、行こう!」


 僕は、男の子の手を引き、集落の外へと向かった。


(あれ? 違う)


 集落の中から見える景色が、さっきとは、明らかに違う。壁の色も、暗く変わったし、何より、この集落の先に新たな通路が現れている。


 そうか、何かの術を使って、この場所を隠しているんだ。その術を維持するためのものが、さっき壊したキーパーという何かなんだな。


 その存在を知っていた男の子は、外来の子なのだろうか。


 男の子のゲージサーチをしてみる。


(この星の子だ)


 さっき、魔法を連発していたけど、全然魔力も減っていないみたいだ。



 集落を出て、繋いでいた手を離すと、不安そうな顔をされた。見捨てると思ったのかな。


「通路の先の街へ、一緒に行こっか?」


「はい!」


 男の子は、ふにゃりと笑った。



皆様、いつもありがとうございます♪


金土お休み。

次回は、10月17日(日)に更新予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この子供は一体?…(白目) 誰の子なんだろう?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ