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51、ロバタージュ 〜ドラゴン族の魔王の秘密

 僕のステイタスは、かなり上がっていた。前に測定したときは、2歳児くらいだったから、当然かもしれないけど。


 だけど、回復魔法力は、他と比べると数値が低い。やはり僕は、回復特化の女神様の側近には戻れないんだ。



「へぇ、やっぱり違うね」


(うん?)


 振り向くと、レンフォードさんとジャックさんが、僕のギルドカードを覗き込んでいた。


「ライトさんは、神族だから、測定値は実際とは違うんだよ。体力と魔力だけは実際の数値だけど、それ以外は、だいたい半減しちゃうね」


 10代前半に見える女の子が、そう説明している。ということは、攻撃力や防御力って、この倍あるってこと?


「マリーさんには、ステイタスが見えてるんっすね。俺には、そういうチカラがないから、わからないっすけど」


 ジャックさんは神族だけど、人間っぽいもんな。地底では、多くの人達が僕のステイタスが見えているみたいだったけど。


「物攻、物防、魔攻、魔防の4つは、生まれ変わる前より既に高いよな。まだ、5〜6歳の姿なのにね。俺、こんなに魔攻ないぜ」


 レンフォードさんがポツリと呟いた。この数値って、わりと良いのかな。


「ライトさん、人間なら、冒険者以外の普通の大人は、体力1,000、他は100が基準値というか平均値だよ。だから、ステイタスを隠さないと、人間には見えないね」


「うん?」


「アンデッドでも、リッチなら、魔力は1万、魔攻、魔防は5万以上あるよ。でも、物攻はほぼゼロ、物防は測定不能だったりするけど。ゾンビ系は、物理が強いけど魔法に弱い。アンデッドで、物理と魔法の両方を備えているのはいないの。ライトさんのステイタスは、アンデッドには見えないわね」


(僕は、正体不明なのかな)


 マリーさんが、説明してくれた。彼女は、いま、ドラゴン族の魔王なんだよね? 妖艶な笑みを浮かべる女性マーテルさんが、前魔王だっけ。



「あの、マリーさん、なぜ魔王なのに、ここにいるんですか? なんだか、ステイタスに詳しそうですが」


「うん? あたし、ギルドマスターだからだよ?」


「ええっ? 人間の街ですよね? ここ」


「戦乱の時に、人間がギルドマスターをやるわけにいかないでしょ? ママがやってたんだけど、ライトさんがそんなことになっちゃったから、ママは、ハロイ島に行くことにしたんだよ」


(僕が、生まれ変わったから?)


 意味がわからない。ジャックさんが慌てているんだけど……ハロイ島の神族の街で、僕は何かをしていたのかな。あっ、街長? いや、まさかね。でも……女神様の側近だったんだっけ。



「ライトさん、ふふっ、そのうち思い出すわ。貴方が居なくなると、あの街は、魔族や他の星からの移住者が多いから、マリーでは抑えられなくなったの。だから、私が常駐することにしたのよぉ」


 マーテルさんは、ふわりと微笑んでいる。ドラゴン族の前魔王がいれば、そりゃ統制されるよね。でも、マーテルさんの方が強いなら、なぜ魔王がマリーさんに変わったのかな。


「マーテルさんって、強いんですね」


「ふふっ、単純な戦闘力なら、娘のマリーの方が強いわよぉ。ただ、私は、他の星からの移住者だからね。知識量の差かしら? 私の方が、あの街では役に立つみたい」


「えっ、移住者……」


「そうよぉ。あの街の半数は、移住者かもね。あー、マリーに魔王を譲ったのは、あの街には、魔王は住めないからなの」


 マーテルさんも、僕の考えが見えるんだな。もう、慣れてきたけど……魔族って不思議な力を持つ人が多い。


「そういう決まりなんですね。魔王が複数同じ街に住んでいると、争いが起こるからかな」


「ふふっ、ライトさんが決めたのよぉ。そっかぁ、あの街では争いは禁止されているから、まさかそんなことにはならないけど。なるほど、ライトさんらしいわね」


(えっと……いや、うん?)


 マーテルさんは、ふわりと微笑んだ。うーん、謎の微笑だよな。僕は、その街の長をやっていたみたいだ。それを僕に、わからせたかったのかな。




「ねぇ、さっきの話って、あたしも参加してもいいよね?」


 マリーさんは、聞いていなかったはずだけど、僕にその確認をしてくる。ジャックさんの方を見てみると、苦笑いなんだよね。


「ライトさん、マリーさんに聞かれたから教えたっす」


(念話は、コソコソ話ができるんだ)


「そうですか。でも、僕が個人的に動く感じなので……」


「えーっ? ちょ、ライトさん、ひど〜い。同郷なのにぃ」


(マリーさんと同郷?)


「えっ? マリーさんは、女神様の転生者なんですか」


「違うよ。あたしは、地球の神が転生させたの。アマゾネスの女王も、あたしと同じだよ」


(ええっ? 地球の神? 何それ)


「マリーさん、今のライトさんが知らないことをぽんぽん言わないでくださいっす。さすがにマズいっすよ」


 ジャックさんが焦って、女の子の口を封じた。ジャックさんに口を押さえられて、バタバタと楽しそうに笑ってる姿は、普通の女の子に見える。



「ジャックさん、大丈夫ですよ。リュックが気にするなって言ってるわ」


(うん? リュック? リュックくん?)


 あっ……リュックくんの娘が、ドラゴン族の魔王になったって、言ってたような気がする。


「まさか、マリーさんって、リュックくんの娘?」


 僕がそう叫ぶと、マーテルさんは妖艶な笑みを浮かべた。マーテルさんとリュックくんって、そういう関係なの!?


「あたしのパパは、たくさんいるの。リュックパパは、一番、お気に入りなの。だけど……」


 マリーさんは、少し寂しげな表情を浮かべた。


(あっ、会えないからか)


 リュックくんが、言っていた話を思い出してみる。


 そっか、マーテルさんは、いくつかの優秀な遺伝子を組み合わせて子供を作ったんだ。だから、マリーさんには何人もの父親がいるのか。


 そして、そんな特殊な個体に宿ったのが、地球から転生してきた人の魂なんだ。


(複雑な話だな……)


 マーテルさんは、強い子供を作り出したかったのかな。そして、実際に、母親よりも娘の方が強いんだもんな。


(魔族の価値観は、わからない)


 でも、地球人だった人、いや同郷ってことは日本人の感性を持って転生して来て、こんな複雑な環境って、大丈夫なのかな?


 10代前半に見えるけど、ドラゴン族の魔王だなんて……。


 さっきの職員さん達の反応を見ていても、女の子が怖れられていることがわかった。


(それって、孤独だよね……)


 まだ、遊びたい年頃だろう。でも、みんなに怖れられるなんて、めちゃくちゃ孤独じゃないか。



「ふふっ、やっぱり、ライトさんは、チビでもライトさんだね〜」


 目の前で、ニマニマしている女の子。なぜか、僕は頭を撫でられている。僕の考えが覗かれたみたいだ。


「生まれ変わっても、ライトさんは変わらないわね。安心したわ。マリーは、リュックが貴方を維持するために消滅したと思ってたの。呼びかけても姿を見せないから……」


 マーテルさんも寂しげな表情に見える。


「リュックくんは、消滅していませんよ」


「ふふっ、わかっているわ。姿を現す余裕がないのね。ライトさんの今の魔力では、リュックは自由に動けないだろうし、貴方が元の姿に戻れば、彼も以前のように離れることができそうね」


(マーテルさんも、リュックくんのことが好きなんだ)


 リュックくんは、そんな感じはしなかったけど。あっ、変なことを考えたらダメだな。彼女達に見られてしまう。


 マーテルさんは、表情の読めないような笑みを浮かべている。うん? 好きとか嫌いの感情はないのかもしれない。




「ジャックさん、私達も参加するわ。ライトさんが大魔王を狙うなら、私達が助けても何もおかしくはないわよね?」


(あっ、話が突然、戻った)


「そうっすか。クラインさんが、天使ちゃん達の地底のすみかに集合するようにと言ってたっす。そこで、打ち合わせをして、一斉に動き始めるみたいっす」


 ジャックさんが、クライン様の話を二人にしている。いいのかな? 


「サラドラちゃんの火山? あたし、仲良しだよ」


 マリーさんが、にこりと微笑んだ。そういえば、サラドラさんって、名探偵ごっこをしたり……なんだか日本の文化に影響を受けているよな。マリーさんからの影響か。


「魔王サラドラは、今回の作戦は、ただの牽制だと思っていますから……」


 ジャックさんが、そう言いかけると、マリーさんは頷いた。


「サラドラちゃんは、隠し事ができないから、その方がいいよ。侵略者にバレちゃうと、反撃の準備をされてしまうよ」


(これって、有名なことなんだ)


 サラマンドラは、妖精族だって言ってたよな。妖精って、嘘をついたり隠し事が苦手なのかもしれない。


 そういえば、女神様も……しらじらしいほどの知らんぷりをしていたっけ。




「じゃあ、みんなで、地底に行くっす。ライトさん、天使ちゃんを呼んでほしいっす」


「あたし達の分もだよ〜」


 マリーさんは、目を輝かせている。自力で行けるんじゃないのかな。



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― 新着の感想 ―
[一言] 自分が平凡だからなのか… 沢山居るらしいけど… 父親に会えないなんて可哀想と普通は思うよね…|д゜)ジー ライトじゃなくても そう考えないかなぁ?
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