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32、ミミット火山 〜最古の魔王の探偵ごっこ

「あーはっはっはっは。わぁーっはっは」


 名探偵サラドラだと名乗り、両手を腰に当て、いつまでも笑っているこびと……サラマンドラの魔王サラドラ。


 リュックくんは、彼女のことは放っておいて、次だと言う。いいのかなぁ? 話題を変えると、面倒なことになりそうな気がする。


 だけど、リュックくんが気にするなと言うので、僕は、生首達の族長さんの方を向いた。



「族長さん、リザードマンの領地の沼の臭いを改善したいんだ。適当な魔物を従えてない?」


「ライトさま、それなら……」


「ちょっと、待ちなさい! 沼の臭いが何なの?」


 生首達の族長さんに話を振ると、すぐさま彼女が、口を挟んできた。


 僕はまだ、リュックくんの指示通りに話す腹話術中なんだ。リュックくんの思惑通りに上手く進んでいるみたいだけど、僕には、よくわからない。



「アージ沼が外来の魔物のせいで、変な臭いがするんですけど、サラマンドラの魔王さんには、関係ない話です」


 僕が視線を向けると、僕の半分くらいの背丈のこびとは、ビシッと僕を指差した。このポーズ、気に入ってるのかな。


「はぁ? そんなことなら、この名探偵サラドラに、任せればいいのよ!」


 ドーンと自分の胸を叩くこびと。


「でも、リザードマンの領地のアージ沼ですよ?」


 僕は、リュックくんの指示に従って、思いっきり怪訝な顔をしてみた。意味はわからないけど、リュックくんがそういう顔をしろって言うんだ。


「問題ないわよっ。リザードマンも剣士だけど、あたし達の方が格上だもの」


「ですが、リザードマンは、悪魔族に従っていますよ? サラマンドラさんはドラゴン族と親しいんですよね?」


(えっ? ドラゴン族?)


 僕は、自分の言葉に驚いた。確かにサラマンドラは、小さなドラゴンっぽいけど、ドラゴン族に従っているのか。リザードマンもドラゴンっぽいけど。


 もしかすると、従う種族が異なると、手伝いができないのかもしれない。


「ライト、何を言っているの? あたしが行くと言ったら行くの! それに、イロハちゃんには解けない謎を、あたしが解いてあげるって言ったでしょ。あはっはっは」



 すると、クライン様が口を開いた。


「魔王サラドラ、彼の記憶がある程度戻るまでは、ライトではなく、翔太と呼んでやってくれない? 女神様は、そんな配慮をしてくれないから、彼は地底に逃げてきたんだ」


(それが理由ではないんだけど)


「ふぅん、イロハちゃんには、繊細な気遣いを求めても無駄よっ。相手が気分を害していても、全く気づかないんだもの」


(それは、サラドラさんも同じだと思うけど)


 なんだか、女神様へのライバル心がすごいよね。妖精族って、みんなこんな感じなのかな。



「でも、魔王である貴女が、リザードマンの領地に行くと、恐れられますよ」


 僕がそう言うと、彼女は、腕を組んで考え始めた。やはり、領地を侵略しに来たように見えるよね。


 リュックくんの指示通りに話しているけど、こんなことを言ったら、やっぱりやめると言うはずだ。断りたいのかな。


『ライト、逆だぜ。コイツ、絶対に行くぞ。しかも、最高の提案をしてくるはずだぜ』


(うん? リュックくん、意味がわからない)


『まぁ、見てなって。腹黒女神と似た奴らは、みんなチョロいんだよ』


 なんだか、リュックくんも、女神様を敵視しているというか、仲悪そうだよね。女神様が創った魔道具だからなのかな。




「あーはっはっは。名探偵サラドラに解けない謎はないわっ!」


 突然、また僕をビシッと指差して笑ってるこびと。


 笑い終えると、なぜか、くるりとリザードマン達の方を向いた。


「あんた達の魔王は、大魔王の座を狙うかしら?」


 すると、門番のリザードマンが、慌てて首を横に振っている。トンガリと呼ばれている、僕がお世話になっている家族の父親だ。


「我々が、大魔王様に逆らうわけがありません。ずっと悪魔族に従ってきているんですからな」


「じゃあ、さっきのあたしの提案はどう? 神族のライト……じゃなくて、翔太が、生まれ変わって、イロハちゃんのお世話が嫌になったから、地底で大魔王をするって言い出したことにすれば、他の星の神々は、大魔王メトロギウスを狙うことを諦めるかもしれないわよっ」


(もともとは、クライン様の提案なんだけどね)


 リュックくんが、彼女がそう言うように誘導したんだ。


 リザードマン達は、頭を抱えている。彼らは、あまり知能が高くないんだよな。こんな風に、一気に、まくし立てられるのは苦手だと思う。


「難しいことは、わかりませんが、リザードマンが悪魔族に逆らうことはありえません」


 すると、彼女は、ふふんと笑った。予想通りの返答だったのだろうか。


「じゃあ、あたしの提案に乗るわね? それとも、剣士としてサラマンドラに戦いを挑むのかしら?」


「我々は、悪魔族に逆らうことはないと言ったのですよ?」


 門番のリザードマンは、ちょっとイラついているようだ。聞いている僕も、イライラするもんな。



 すると彼女は、また僕をビシッと指差した。


「よく、聞きなさい! 翔太は、悪魔族クラインの配下よ。翔太が大魔王の座を狙っても、悪魔族が魔族の国を統べることに変わりはないわ」


 事前にクライン様が、リザードマンに話したことだ。だから、門番以外のリザードマン達も、これがクライン様の提案だということは、わかっているはずだ。


 ただ、彼女が、あたしの提案と言っていることが、理解できないらしい。


 たぶん、リュックくんは、彼女にそう言わせたかったんだよね。理由はわからないけど。


「悪魔族に逆らうことにならなければ、リザードマンはそれでいいのですが」


 門番のリザードマンは、クライン様の方を見ながら、そう返事をした。クライン様は、彼らに優しい笑顔を向けている。


(念話で、打ち合わせたのかな?)


 僕は、リュックくんとの会話にしか使えないけど、魔族って、わりと念話を使うんだよね。



「じゃあ、決まりね! クライン、あんたが証人になりなさい。あたしが、翔太が大魔王の座を狙うという噂を広げて、他の星の神々を牽制するわっ。そのために必要な協定を結ぶ。すべての魔族にその名が知れ渡る、名探偵サラドラにしかできないことよっ」


 彼女がそう言うと、クライン様がニヤッと笑った。


「確かに、名探偵サラドラにしか、そんな種族を越えた協定を結ばせることはできないね。だけど、他の星の神々が操る魔王まで、うっかり仲間に入れてしまうと失敗するよ?」


「ふふん、あたしは、妖精でもあるのよ? それくらい『見える』わよ。それに、翔太の記憶のカケラの謎も解いてみせるわっ」


 クライン様を、ビシッと指差すこびと。やはり、これって、彼女の決めポーズなのかな。


「記憶のカケラの謎は、まだ俺にも解けていない。絶対的な法則があるはずなんだけど」


(どうでもいいのに)


「ライト……じゃなくて、翔太の記憶を預かるってことは、幻術士カースね。うーむ、おそらく、パターンは単純じゃないわね。アイツ、性格悪いもの」


(何も聞いてないのにわかるの? すごい)


「あぁ、場所と人物が鍵になるかと思ってたんだけど、翔太が来たことのないミミットでも、記憶のカケラが現れた。いくつかのパターンがあると思うよ」


「それなら、そういう状況を作り出せばいいだけよっ。イロハちゃんにはできないでしょうけど、名探偵サラドラに不可能はないわっ。あーはっはっは」



『ライト、完璧だろ?』


(リュックくん、僕にはよくわからないけど)


『魔王サラドラは、すべての魔王に知られている。最古の魔王だからな。コイツの探偵ごっこには、付き合わないとギャンギャンうるせーから、みんな参加するぜ。ぷぷっ、腹黒女神にはできねーことだ』


(女神様より、ギャンギャンうるさいもんね)


『あぁ、コイツは、ただ遊びたいだけだから無害なんだ。そこが腹黒女神との大きな違いだ』


(ふぅん、無害だから協力するのかな)


『そーゆーことだ。ぷぷぷ、女神がこれを知ると、乗り込んでくるかも知れねーけどな』


(ええっ? 大丈夫なの?)


『そのときは、そのときだ。面倒になったら、ドラゴン族を頼ればいい』


(ドラゴン族?)


『あぁ、オレの娘が、ついこないだ魔王になったからな』


(ええっ? リュックくんに娘がいるの? 魔道具なのに?)


『あー、そっか。まだライトは知らねーか。まぁ、そのうちわかるぜ。あっ、娘と言ったが、父親はオレだけじゃねーんだ。いろいろな遺伝子を混ぜたらしーぜ』


 リュックくんって、ただの魔道具じゃないの? そういえば、女神様が、不思議な鎧を身につけた僕を見て、魔人化したとか言っていたっけ。


(リュックくんって、魔人なの?)


 そう問いかけたけど、リュックくんの気配は消えていた。




「ライトさま、アージぬまへ、いどうしますか」


 生首達の族長さんが、声を掛けてきた。


「みんなのワープも頼める?」


「はい、かしこまりました」


 僕は、足元の生首達のクッションに乗った。



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― 新着の感想 ―
[一言] 魔道具にも子供が居るのに…|д゜)ジー オレハ… ナゼ コノヨニジュウジンガイナインダ
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