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18、ハデナ火山 〜外来の魔物と元大魔王

『ライト、おまえも、固定値の魔ポーションを飲んどけ。全回復には、あと7本だな』


(えっ……そんなに無理)


『腹黒女神は、すごい勢いで飲んでるぜ。だが、魔力の減るスピードの方が早いみてーだな』


(どういうこと?)


 リュックくんは、なぜそんなことがわかるのかな? 女神様が作り出した魔道具だから?


『意図的に星のエネルギーをマグマの中に凝縮させて、引き出している奴がいる。他の星の神かと思ったが、違うようだな』


(この星の住人?)


『あぁ、どさくさに紛れて、出てきやがった。腹黒女神は、まだ気づいてねーぜ』


(どうしたらいいの?)


『このままだと、マズイ。猫耳に電池をつけるか』


(電池? 女神様に?)


『あぁ、アイツが取り込めない氷の魔石なら、成長の妨げにならないから、大丈夫だろ』


 リュックくんの話の意味がわからない。でも、あまり時間がないようだ。リュックくんが少し焦っているように感じる。


『ライト、リュックの中に出して置いた。猫耳の付近につけておけ』


(へ? 頭に電池?)


 僕は、巾着袋を開けてみた。中には、キラキラと光る水色の花が入っていた。クリスタルガラスみたいに輝いている。これって、宝石なのかな?


 その横には、カルーアミルク風味の魔ポーションもある。これも、渡せということかな。でも、さっき渡した分がある。まだ、あれを飲んでいないよな。


『腹黒女神は、貴重なものは、ある程度のストックがないと使えない貧乏性なんだ。頭の猫耳を触らせてくれたら、これをやると言えば、チョロいぜ』


(わかった、やってみる)



「ティアさま、あの〜」


「な、なんじゃ? ちと、いま、忙しいのじゃ」


「猫耳を触ってもいいですか?」


「ふわぁっ? いきなり何を言っておるのじゃ」


 僕は、カルーアミルク風味の魔ポーションを、少女の目の前にチラつかせた。


「これ、あげますから」


「ぬぉっ、またコーヒー牛乳ができたのか! ち、ちょっとだけじゃぞ?」


(ほんとだ、チョロい)


 僕の手から、パッと魔ポーションを奪うと、蓋を開けて飲んでいる。10%回復の魔ポーションを飲んだから、電池はいらないんじゃ?


『いや、いる。さっさと付けろ。腹黒女神が潰されると、星が崩壊する』


(えっ……)


 リュックくんが焦ってきたみたいだ。僕は、猫耳を触るフリをして、水色の花を猫耳の横に乗せた。


 すると、するするとガラスのようなツルが伸びて、少女の髪に絡まった。水色の花飾りをつけているように見える。


「なっ? 何をしたのじゃ!! 頭が冷たいのじゃ」


 猫耳の少女は、頭に触れて、すべてを察したらしい。チッと舌打ちをしたけど、それ以上、何も言われない。


「わっ、ティアちゃん、それ……」


 赤い髪のハデナの守護獣ケトラ様が、驚いた顔をしている。


「リュックじゃな。余計なことをしよって」


「氷の魔石の花なんて……ティアちゃんは、氷のクリスタルは扱えないよね?」


「ふん、わらわに電池をつけよったのじゃ」


 猫耳の少女は、持っていた固定値の魔ポーションを僕に差し出した。いや、魔法袋に入ってるから、いらないんだけど……。


(あっ……フタを開けてる)


 僕に強制的に飲ませる気かな。たぶん、僕の魔力値は、今は半分以下だからか。


(仕方ない)


 僕は、無言で受け取り、胃薬味の魔ポーションを飲んだ。すると、また、フタを開けて渡された。罰ゲームじゃないか。


 だけど今は、そんなことは言っていられない。結局、4本いや5本、飲まされた。リュックくんが言っていた本数より少ない。僕の顔色を見て渡してたみたいだ。もう限界だもんな。




 猫耳の少女は、ケトラ様と何かを話した後、付近にブワンとバリアのような物を張った。


 ここは、登山者の休憩施設みたいだな。少し離れた建物から、冒険者風の人達が、不安そうな表情で草原に出てきた。


 さらに、地震と噴火が続く。


 でも、猫耳の少女は、先程までのような苦しそうな表情はしていない。だけど、道化の表情でもない。余裕がないということなのかな。



『ライト、外来の魔物が、ケトラを狙っているぞ』


(なぜ、ケトラ様を?)


『喰うんだろ。マグマの中で生きていられる魔物だ。ハデナを守る守護獣を喰えば、チカラが上がるんじゃねーか? ケトラは、火を扱うからな』


(そ、そんな、ダメだよ)


『しかも、ここに集まっている冒険者もエサだぜ。おそらく、全員、捕獲される』


(リュックくんは、予知してるの?)


『予知とは違う。奴らの思念を傍受している感じじゃねーか。奴らの動きに合わせて、地底から出て来ようとする元大魔王は、女神狙いだ』


(元大魔王が、女神様を狙ってるの?)


『あぁ、アイツは、もともと野望が強かったみてーだからな。青の神がそそのかしたんだろ。女神イロハカルティアを討てば、この星の神にしてやるとか言われたんじゃねーか』


(そんな……)


『青の星系の神々は、この星にかなり潜んでいるからな。地底は、かなり、やべー状態だぜ』



 さらに、大きな噴火が起こった。


 この付近は、山頂からは、かなり離れている。それなのに、何か、石のようなものが飛んできている。猫耳の少女が張ったバリアが弾いているけど。


『ライト、山肌を溶岩が流れてくるぞ!』


(えっ? あっ!)


 ケトラ様が姿を変えた。真っ赤な毛が美しい狼だ。そして、この休憩施設から、飛び出して行った。


 彼女は、押し寄せる溶岩の流れを変えているようだ。真っ直ぐに、向かってきているように『見えて』いたけど、ケトラ様の数メートル手前で、オレンジ色に燃えるの川は、二つの流れに分かれている。


(すごい力だ)


 この施設の横をオレンジ色に燃える川が、流れていく。とんでもなく高温なはずなのに、暑さは変わらない。バリアのおかげなんだな。


 それに、冒険者の人達も、何かの魔法を使っているみたいだ。オレンジ色の川を冷やしているのかな。施設に近い場所は、岩の塊があちこちにできている。


 だけど岩の塊は、溶岩の流れに触れると、また赤くなっているようにも見える。


「なかなか固まらないな」


「こんなにサラサラな溶岩流は、初めて見たぜ」


 冒険者達は、まるで力を誇示するかのように、ガンガン魔法を使っている。冷えた溶岩で、低い岩壁ができてきたように見える、バリアは、魔法を通してしまうのか。


 突然、横を流れていた溶岩流が向きを変えた。


(うそっ?)


 バシャッと水しぶきのように、休憩施設に張られたバリアにかかる。いや、覆うように、バシャバシャと、オレンジ色の燃える川が襲ってくる。



『ライト、完全に覆われたら、出るぞ』


(リュックくん、意味がわからない)


『ケトラが狙われていると教えただろ。この付近を溶岩で囲み、ケトラを孤立させる気だ』


(でも、こんな溶岩で覆われたら、どうやって……)


 バリアもあるじゃないか。魔法は通すみたいだけど、石や溶岩は完全に防いでいるし、暑くもならない。


『霊体化すれば、おまえは溶岩流の中でも、泳げるだろ』


(えっ? うそっ)


『ここにいるメンバーでは、おまえしか、ケトラを助けに行けねーぞ』


 ぐるりと周りを見回した。僕は、完全に放置されているんだよな。大人達は、溶岩の対処に必死だ。


 猫耳の少女は、バリアの維持のためか、追加の魔力を放ちながら、難しい顔をしている。


 ジャックさんは、そんな彼女を守っている。


 レンフォードさんは、建物の中から冒険者を外に出しているみたいだ。建物のすぐそばを溶岩の川が流れている。建物が燃えると大変だもんな。



 空がほとんど覆われた。バリアの上に溶岩が貼りついているかのようだ。


(暑くなってきた)


『バリアのマナが、溶岩に吸収されて、一体化してきているんだ』


(なぜ? マナを吸収するの?)


『あぁ、たくさんの魔物が溶岩の中に……ほれ、うじゃうじゃと出てきたぜ。奴らが熱いんだよ』


(オレンジ色のナマズ?)


 空は、ほとんど塞がれているのに、一気に明るくなった。ナマズは火をまとっている。


 ジャックさんが動いた。すごい! やはり剣士なんだ。めちゃくちゃ速い。ナマズみたいな魔物を斬ってる。


 猫耳の少女が、氷魔法を放っている。ジャックさんが斬ったナマズみたいな魔物を凍らせているみたいだ。


 レンフォードさんは、冒険者達のサポートをしているようだ。ポーションを配って、回復係かな。


 冒険者達は、ナマズには、全く近寄れないみたいだ。



『ライト、そろそろ行くぞ』


(う、うん)


 僕は、霊体化! を念じた。


「ちょっと、ケトラさまをたすけてきます」


 一応、女神様にそう伝えると、彼女は頷いた。僕とリュックくんの会話がわかっていたのか。



(うわー、ナマズが襲ってくる)


 僕に体当たりをしようと、溶岩の中から飛び出してくる。通り抜けてしまうんだけどね。


 僕は、さらに透明化! を念じるると、全く襲われなくなった。ほんとに気配が消えるんだな。



 僕は、溶岩の壁をすり抜けた。


(うわぁ)


 外は、大地が燃えている。


 そして、ケトラ様は、巨大すぎるナマズみたいな魔物と、対峙していた。



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[一言] よしナマズはナマス切りにしちゃえ…|д゜)ジー
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