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第二話 鋼鉄の巨人

2 鋼鉄の巨人


 俺が転生したのは、惑星ルドラという星らしい。

 いや、まぁいきなり星って何さ……。って思いは確かにあるんだけれど、もうね、人外に転生した時点で、他の事は些事だと思って考える事を放棄することにした。どうせ考えたって、納得できるような説明は思いつかない。

 デウス・エクス・マキナよろしく、天から神様でも降りて来て説明でもしてくれない限り無理だろう。


 で、このルドラはアスター星系に属する惑星だ。この星系は、太陽に似たG型恒星であるアスターを中心にスプンタ、クシャスラ、ルドラ、ハルワという順に四つの惑星を抱える恒星系。


 ガイア帝国の支配星系の内の一つで、帝国で公爵位を与えられているゾロ家が治めている。

 未踏宙域と接する謂わば辺境部にあり、常に未踏宙域からの敵対生物や未知の勢力の侵攻の危険に曝されているような星系が、何故公爵領になっているのかは知らない。俺は爵位ってのには全く関りが無かったので詳しくはないのだけれども、公爵って王様の親戚とか身内とかじゃなかったっけ? もっと中央の華々しい領地にいるのが普通だと思うんだが……。仲が悪いとか、そんなのだろうか? きっと俺なんかが知り得ない何等かの政治的思惑でもあるんだろうね。


 惑星ルドラはこの星系で唯一、惑星環境改造装置で環境の最適化処置がなされた居住可能惑星で、領都も此処に在り、あらゆる意味でアスター星系の中心的な惑星と言える。尤も、他の惑星でも様々な資源を採掘するため、採掘基地や作業員の居住区はあるし、宙域に点在するコロニーやステーションに住んでいる人々もいるので、此処にしか人が住んでいない訳ではない。

 ルドラでは少量とは言え、戦術資源であるオレイカルコスや魔晶石が採掘できるし、クリーチャーの脅威はあるものの自然環境も整っている。スプンタではガス資源が、クシャスラでは鉱物資源が、ハルワでは水や水産資源が採取でき、それらの惑星の周りを取り囲む小惑星帯からも、鉱物資源や希少金属が得られる、といったように全域的に資源が豊富であり、当然それを求めての商取引も盛んだ。

 まとめると、辺境ではあるものの資金力のある豊かで活気に溢れた星系と言えるだろう。

 ガイア帝国に所属してはいるけれど、公爵としての権力と星系から得られる資金力を背景に、半ば自治領のような状態で運営されている。ガイア帝国の中枢部は面白くないだろうが、様々なバランスから手が出せず、黙認されているらしい。



 あれから数日。

 俺は寄宿舎から士官養成学校に通いながら、ヨギ君の日常をなぞるように生活している。

 自身の状態の把握や、各々の記憶の確認。以前までの彼の行動との齟齬が出ていないかを探り探り生活する。


 結果として、もっとも懸念していた不死者の王というクリーチャーである俺が、普通の人間として生活していけるのかについては、概ね問題ない事は分かった。


 本質的には魔法生物に近いこの身体は、食事や排泄、睡眠、挙句の果ては呼吸さえ必要としていないのだけれども、食事を摂ることは出来るし味も分かる。尤もメニューの方は、ヨギの記憶からは普通でも、俺の前世の記憶からはかけ離れた物が多い。使われている食材など見た事の無い物ばかりだ。不味くはないと思うんだけどねぇ……。お米とか、ないんだろうなぁ。

 摂取した食物は直ちにマナに分解還元され取り込むことになる。

 呼吸は酸素呼吸をしているわけではないが、大気中のマナを呼吸動作で吸収しているので、見た目に区別はつかないだろう。

 吸血衝動や食人衝動などのやばそうな欲求もない。ちょっと状態的に不完全なので魔力や生命力を吸い取りたい衝動はあるけれど、自制内だ。

 排泄はトイレに行くだけ行ってさえいれば問題ないし、睡眠は共にする相手が居ないので、今のところバレる心配はない。万が一、野営でもする機会があれば、目を瞑って瞑想でもしていればいいだろう。

 後は、暑くても寒くても顔色が変わったり、汗をかいたり、息が白くなったりしないと思うが、その辺りは、まぁ、気が付く方がどうかしている。

 寄宿舎の部屋が個室だったのは良かった。鍵をかけた上から更に魔術で施錠しておけば、滅多な事では他人は入って来れないだろう。こうして完全な密室にすれば、無理に寝たふりをする必要もなく、睡眠時間を有効活用でき、怪しまれる事なく各種調整が出来る。暗闇は見通せるので灯りは必要ないため外に光が漏れる事はない。防音結界で音漏れも万全。壁ドンされる事もないはず。


 目下、一番力を入れているのは今の肉体の素脈管ナーディーを数、質共に鍛える事だ。

 素脈管ナーディーというのは体内の魔力の通り道、魔術的な血管やリンパ管のようなものだ。密度、太さ、強度が扱える魔力の量や質に直結する。これを鍛え、魔術回路を形成しておかないと真面な魔術は使えないのだ。

 魔術師にとってこれの鍛錬は基本中の基本であり、魔術を扱う上で全てに影響することから、基本にして奥義とさえ言われていた。ただ古代魔導王国の衰亡から遥かな時間が経過したことで、現代にはあの頃の魔術師と同じぐらいのレベルの使い手は数少なく、その知識や技術、基本でさえ埃をかぶって廃れてしまっているようだった。世代を重ねた事で魔法的資質が薄れてしまい、やりたくとも出来なくなったというのも原因だろう。


 通常、不死者の王へと転生するのは魔導を極めんとする者。当然その身体の素脈管ナーディーは鍛えに鍛えられている。

 しかし、俺の場合、身体自体はヨギ君の物だ。若く、肉体的には良く鍛えられているとは思うが、素脈管ナーディーは鍛えるという発想すらないのか、全く鍛えられていなかった。

 これでは魔力を取り戻しても、魔術の行使に支障が出る。

 部屋に籠っても問題ない時間は、ずっと魔力循環や魔力操作を繰り返し、素脈管ナーディーの鍛錬をしている。あまりにも酷い状態なので、正直、片手間にやってる場合じゃないのだけれど……。

 力を取り戻して、早く万全の状態に戻りたい気持ちはあるけれど、今の社会的位置をかなぐり捨ててまで優先するほどじゃない。差し迫った危機がある訳じゃないからね。


 ☤ ☤ ☤

 

 今日の教練は実機慣熟訓練。

 士官養成学校の誇る広大な演習場で、四機の訓練機が教官の指導の下、砂埃を上げながら歩行や走行、戦闘機動、近接武器の素振りなどを行っている。

 士官養成学校といえども実機の数には限りがあるので、四つのグループに分かれて各々訓練を受けているのだ。順番に搭乗するので、皆搭乗用のコンバットスーツに身を包んで待っている。

 コンバットスーツはフルフェイスのヘルメットにライダースーツを合わせた様な見た目だが、搭乗時の衝撃などから身を守ってくれるし、多くの軍事行動は宇宙空間で行われるので、宇宙服の機能も兼ね備えている。カラーリングは自由なのだけれど、小学生のランドセルと同じ様な雰囲気で、男性は黒、女性は淡いピンク色を着ていることが多い。

 前世の記憶を持つ俺からすると、某有名ロボットアニメのコスプレをしている様にしか見えない。勿論、俺も同じ格好だ。ちょっと、いや、かなり恥ずかしい。

 でもね。今からこれに乗れるのかと思うと、ワクワクが止まらない。巨大ロボだよ? 人型だよ?

 些細な羞恥に悶えている場合ではない。

 前世の俺はこういうのが活躍するアニメの全盛期、直撃世代だ。かなりの数の作品に埋もれて育ったし、玩具や模型、ゲームなんかも持っていた。何でこう言う記憶だけ鮮明なんだと思わなくはないが、それは一旦置いておくとして……。憧れが無いわけがない。自然と上がる口角を抑えるのにかなりの努力が必要だった。

 周りの同期達は真剣な表情。実機だと揺れが酷かったり、怪我の心配もあってか、浮かない顔をしている者も多い。

 こんな貴重な体験を楽しめないなんて……こいつ等、人生損してるなぁ。


 全高十数メートルの大きさを持つ人型有人機動兵器――グランヴァリエ。この世界の軍事力の中核を担う鋼鉄の巨人である。軍に於いて騎士とは、これの操縦士の事を指す。

 つまり俺が所属する騎士科とは、このGV(グランヴァリエ)の操縦士を目指す、謂わばパイロット候補生が通う学科なのだ。


 GV(グランヴァリエ)には幾つか種類があるが、主軸となる機種は近接戦型のリッターギアと遠距離砲撃型のマグスギアで、運用されている機体の大多数を占めている。

 今から訓練で乗る機体はリッターギアに分類されている。

 マグスギアの遠距離砲撃は通常の実弾を使う銃器や、攻撃魔法を撃ち出す魔導ライフルによって行われる。それ特有の訓練となると大部分が射撃訓練に占められるため、ここでは実機での訓練は行われていない。

 機体本体の基本操作については両機種に大きく変わりはないので、実機慣熟訓練としては問題はないのだ。


 実機で基本操作の慣熟訓練を行い、それ以外の、機体が損傷したり、資材が多く消費される可能性があったり、操縦者が負傷しかねない模擬戦闘訓練や射撃訓練はシミュレーターで行うのがスタンダードだ。


「踏み込みからの袈裟斬り! その後、切り払って開始位置に戻れ!」


 教官の指示に従って、鈍色の訓練機が駆動音を響かせる。


 騎士科で剣術が重要視されるのは、リッターギアの標準武装の中に剣があるからだ。

 これには幾つか理由があって、GV(グランヴァリエ)は基本的に起動時には常時、斥力フィールドで守られている。この斥力フィールドは瞬間的な衝撃に強く、宇宙空間でのデブリは言うに及ばず、実体弾や攻撃魔法等の接触時間の短い攻撃は、ある程度弾くことが出来る。勿論、出力の問題があるので、連続で攻撃を受ければ徐々に薄くなって消え去り、再形成するまでの間は無防備になるし、フィールドの許容量を越える威力の攻撃であれば当然防げない。

 対GV(グランヴァリエ)を考えた時、この斥力フィールドがあるため、GV(グランヴァリエ)に効率良くダメージを与えようとするのならば、一撃でフィールドを貫通する威力の攻撃を当てるか、接触時間の長い攻撃をするかになる。

 一般的な遠距離攻撃では威力が足りず、フィールドを消し去るのに何発かの有効弾を必要とする。

 その点、剣の様な近接武器での攻撃は、接触時間が斥力の発生時間より長く、斥力フィールドをほとんど考慮する必要が無い。コスト面でも優秀だ。

 但し斥力フィールドを越えた先には機体の装甲があるため、それを切り裂けるビームブレード等の半実体剣が主流である。

 このように対GV戦で優位性を見せる近接武装であるが、対クリーチャー戦でもある程度の役割を持っている。

 宇宙空間で遭遇するクリーチャー達は殆どの種類で、電子誘導機器に対するジャミング機能を有している。つまりは、遠距離からの電子誘導やレーダー索敵によっての砲撃は中々命中せず、攻撃は専ら有視界距離で行う必要がある。それの主役は実体弾を使う銃器や、攻撃魔法を撃ち出す魔導ライフルなのだけれど、何分有視界での誘導なしでの射撃となれば命中率に難が出る。撃ち漏らし、距離をつめられた時にはやはり近接武器が必要となり、この場合、一撃で仕留められなくともノックバック効果が期待でき、クリーチャーと機体の距離を取れる実体剣が有効となる。


 このように対GV、対クリーチャー共にある程度の有用性があるのも確かなのだけれど、それと共に今も尚貴族制を敷いている事からも分かるように、この世界の軍は武力の象徴としての騎士団から発展進化して来たもので、王への忠誠に使われた剣という物にある種の誇りと拘りがあるというのも大きな要因となっている。


 ただねぇ、有効性は確かにわからない事もないのだけれど、対GV(グランヴァリエ)戦限定ならまだしも、クリーチャー戦や艦隊戦ではやはり遠距離攻撃の優位性は覆らない。

 極端な話、近付かれたら離れれば良いわけで……。ヨギ君の価値観が薄れた俺からすれば、剣戟至上主義ってのは時代錯誤でナンセンスも良いところだと思う。

 なので、俺は今更、剣術云々に拘るつもりは一切ない。


 リッターギアが恰も甲胄を着込んだ騎士の様に剣を振るう。


 訓練機は軍から払い下げられた旧式のリッターギア『ドロテア』。

 元はコーティング剤で所属部隊の色に塗装されていたはずだが、今は装甲が傷付くような運用をされないからか、綺麗に剥がされて下地の鈍色が出ている。首が無いずんぐりとした機体で、頑丈ではあるものの機動性に欠ける現行機体の数世代前の量産機だ。ビームブレードという半実体剣とスクトゥムに似た大型の方形盾以外の武装は取り払われ、宇宙機動のための推進剤プロペラントも積まれていないので、各種姿勢制御用や加速用のバーニアも使えない状態になっている。リッターギアには移動用の魔導スラスターも搭載されていない。


 今乗っている訓練生は、体感で十分程の戦闘機動で限界に達したらしい。

 跪いた駐機の姿勢を取ると、開いた胸部の操縦席から操縦者が降りてきた。ヘルメットを早々に脱ぎ、魔力枯渇による疲労感からか肩で息をしている。


 GV(グランヴァリエ)の操作には量の多寡はあるものの必ず魔力が必要だ。

 GV(グランヴァリエ)は操縦席の下に設置されたジェネレーターからの動力で機動しているが、通常機動状態のエネルギーだけでは歩行や簡易動作しかすることは出来ない。それとて操作入力に微弱な魔力は必要だ。

 もっと出力の要る、人で言うならば、筋肉に意識的に力を籠めるような動作――走る、跳ぶ、重い荷物を持ち上げる、攻撃するといった所謂戦闘機動をするには、操縦者の魔力を使ってジェネレーターを高機動状態にする必要があり、その時の出力は、機体性能による上限はあるものの、注ぎこんだ魔力に比例する。

 つまりは、保有魔力量によって戦闘可能な時間や機体の出力が変わってくるのだ。

 そして、魔力は使えば枯渇する。

 同期の訓練生の戦闘機動での稼働限界時間は二から三戦闘単位といったところで、軍の正操縦士の稼働限界時間は倍以上はあると聞いた。

 一戦闘単位ってのは五ミルムのことで、この世界での五分にあたる。感覚的には前世の五分より少し長い気がしているが、較べられるものは無いので……。

 稼働限界時間の差は、機体の性能差が最も大きな要因だけれども、それだけではなく、魔力の使い方に無駄があるというのも無視することの出来ない要因なのだ。


 さて、次はいよいよ俺の番だ。

 魔力量にも剣術にも自信がなく、操縦技術が中々向上しないため、普段は注意を向けられないよう同期の多くが魔力枯渇でへばってから搭乗していたのだけれど、今日は早く乗ってみたくて比較的前の方に並んだのだ。


 少しでも魔力枯渇の症状を緩和しようと、支給されている魔力回復用のブロック状携帯食を噛って、余りの不味さに青ざめた顔をさらに顰めている同期訓練生から、バトン代わりのドロテアの起動キーを差し出される。


「おっと。お前の様な雑魚が、俺様より先に搭乗しようとするとは、どういうつもりだ?」


「は?」


 後ろから肩を押し退けられ、起動キーを横取りされた。

 横取りした相手を見遣る。

 茶髪に派手な紫のコンバットスーツ。確か、こいつは……イーラ・イバンカル。伯爵家の次男とかだったか。


「お前の様な落ちこぼれが同期とは恥ずかしいが、今までは己の立場を弁えて控えていたから見逃してやっていたのだ。図に乗るな!」


 奪った起動キーのストラップを持ってチャラリと揺らしながら、嫌悪の目を向けてくる。

 どうやらこいつは俺がいつもはビビって最後に回っていると思っていたようだ。

 まぁ、完全に間違いでもないが……。


「見逃してもらう必要などないし、落ちこぼれた覚えもない。何故先に並んだだけで文句を言われなければならない?」


「お前の稼働時間は合格ラインぎりぎりではないか。十分落ちこぼれだ。偉そうに口答えをするなっ! いいから代われと言っているんだ」


 騎士科に入るための試験では、GV(グランヴァリエ)を最低でも一戦闘単位である五ミルム稼働させる必要があり、これが保有魔力量の目安としても使われている。飽く迄目安であり、実際の保有魔力量は数値化されているわけではないのだが、その試験でヨギ君はぎりぎりだったし、それ以後の教練でも稼働時間を延ばす事はなかった。それがこの評価に繋がっている。当時の魔力量では仕方のない事だ。


「何を粋がっているのか知らないが、稼働時間が短いのを知っているのなら、その時間ぐらい待てよ。たったそれだけも待てない程急ぐ理由でもあるのか? トイレだったら先に行ってきた方が良いと思うぞ」


「はんっ! 舐めた口を……。単に親のコネで入学したような奴の後になど、例え訓練機の座席であっても座りたくないだけだっ!!」


 前から態度のでかい奴だとは思っていたが、面と向かって絡んでくるような事はなかった。俺に対する態度にしても、剣術限定ならまだしも、喧嘩なら殴れば確実に勝ててしまうので、全く気にも留めていなかった。面と向かって罵倒されたのはこれが初めてだ。鬱憤が溜まってたんだろうか?

 大体、こいつは伯爵家ではあるものの次男であるので、継承の目は薄く、そうなると扱いとしては平民。士官養成学校にいるので、無事に卒業すれば少尉の軍籍は得るだろうが、それだけだ。

 対して、俺は男爵家とは言え長男。厳密には相続前に爵位は存在しないが、普通は長子相続なので、この段階で男爵相当として扱われるのが慣例だ。

 下手をすると貴族を平民が罵倒している形になるのだが、この男がそれをわかっているのかいないのか……。その上、さっきの物言いだと俺の父が軍で准将の地位にあることも知っているようなのに……。

 まっどっちでもいいか。

 かなりイラっときたし、とっとと肉体言語で黙らせよう。


「貴方は何をおっしゃっているのですか? そんな無法が通るとでもお思いで?」


 拳を握り前に出ようとした俺を押し留める様にして、白いコンバットスーツの女性が前に出た。


 エレノアール・ラル・ナノラグド。

 お隣のヤザン星系にある惑星カットラにあるラグドール人の国の王族で、ヨギ君の想い人だ。

 この士官養成学校に留学生として通っているが、他所の国の軍属になる訳は無いので、社会見学と社交、あわよくば青田刈りが目的ってところなのだと思う。御付きの人達もいるが、教練中は距離を置いて見守るに留めているようで、少し離れた場所から此方を窺っている。

 凛とした佇まいの細身の女性で、王族らしく公明正大な人柄をしている。どんな相手に対しても偉ぶった態度は取らないので人気は高い。猫系獣人の特徴である猫耳が可愛らしく揺れていた。

 

「エレノアール様までその様な……。私は貴方様のためにも、と」


 他の星系とは言え王族が出て来たことで、あからさまに顔色と口調を変えるイーラ。


「おっしゃられている意味が解りません。横入りなど規律を重んじる軍の士官候補生がすることではないと思いますよ」


 庇われているのだが、微妙にイーラの罵倒内容は否定していない気がして、少し悲しくなる。どうやら俺の評価は概ねそんな感じだったようだ。今まで周りが見えていなかったのか、自覚していなかったな。


 そして、どうやらイーラが何故このタイミングで出て来たのかも察しがついた。


 隣のグループで訓練機に乗り込んだのがアルフォンスだったからだ。

 彼に対抗して訓練機を乗りこなし、エレノアール様に良いところを見せたかったに違いない。


 イーラも同期なので二十歳のはずなんだが…………行動原理が小学生だな。

 一気に馬鹿らしくなって、怒る気が失せてきた。付き合ってられるかっ!

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