第十五話 アサナシオスはネブラ・マクラを渡る
15 アサナシオスはネブラ・マクラを渡る
第三ルドラ軍は予定通りの日程で帝国正規軍と会敵した。
第三ルドラ軍の戦力は、弩級戦艦一隻、戦列艦二隻、巡洋艦七隻、駆逐艦十隻、フリゲート艦二十隻の計四十隻。
対する帝国正規軍『セケトワン』駐留艦隊の先遣艦隊は、戦艦五隻、巡洋艦二十隻、駆逐艦四十隻、空母二隻の計六十七隻。
単純な数としても一・五倍だが、ルドラ陣営の半数がフリゲート級艦艇であることを考えると、戦力比は三倍では済まない。そして帝国側はあくまで先遣艦隊であり、後詰の艦隊もいれば、『セケトワン』に詰めている艦隊も存在する。総戦力では話にもならない差が存在することになるのだ。
こちらの四十隻というのも、辺境の一領主が用意した戦力としては多い。嵩増しに衛士艦隊まで寄せ集めたにしても普通はこんな戦力を保持してはいない。
それはそうなんだが……ガイア帝国は比べるべくもなく強大なのだ。
これはそれをわかっていながらの行軍。
独立を成立させるにはやるしかないのだ。
当初の帝国中枢部の思惑通り、大した抵抗もなく容易く鎮圧されて、資源ともども領土を接収されてしまうわけにはいかないのだ。
互いの艦隊距離が近付き長距離砲撃が可能な距離になる直前で予め決められていた配置につく。
第三ルドラ軍は魚鱗陣形。帝国の先遣艦隊は横陣形。
『各艦に通達。これより戦闘を開始する! 陣形維持に注意し、連携を密にするように。この戦いに我々ルドラの独立が懸かっていることを忘れるな。奴らに我等が飼い犬ではなく、群狼だという事を知らしめるのだ!! 我等の物を奪おうと無警戒に巣に手を突っ込んだ帝国のアホ共に、誰を怒らせたのか分からせてやれっ!!!』
艦隊総司令官であるアイザック・オルレアンが吠える。
それを合図に、じわりと互いに前進しつつ艦隊戦が始まった。
『砲撃開始!!』
各艦艇が搭載している誘導妨害装置――宇宙型のクリーチャーが持つレーダーや長距離通信を妨害する波動を発生する能力を参考に造られた――『笑う黒瑪瑙』が、無音のはずの宇宙空間に音とは違う独特の波動を響かせる。
それは波打ち際で大きな巻貝を耳に当てた時のような波動。物悲しいエーテルの鳴き声。
この波動の影響範囲ではレーダー誘導による精密射撃は出来なくなり、射撃は目視か、補助電脳の計算による予測射撃となる。だが、回避運動もまた予測計算されるため、そう簡単には当たるものではない。
仮に当たったとして、艦艇にはシールドがある。艦艇の持つシールドは、近距離の味方艦艇のシールドと周波を合わせることにより相互補完し、強化されるようになっている。受けたダメージを艦艇数の分だけ分散させるように出来ているのだ。戦列を崩されない限り、大きな被害が出ることはない。
それでも防壁の薄い位置というものは存在し、運悪くそこに有効弾が当たると艦艇に被害が出る。一時的にシールド出力が衰えた艦艇は位置を入れ替え、やや後方へ移動し修復を図る。その間、控えている艦艇がその穴を埋め、戦列を維持する。これらの艦隊運動を戦闘速度で前進しながら行わなければならない。
戦列が維持できなくなり、集団としてのシールドの強度が保てなくなった時、そこに敵の攻撃が集中すると一帯の艦艇は壊滅することになる。
相手の陣形の防壁の薄い位置、シールドが上手く連携できていない位置に如何に砲撃を集中できるか。翻って、艦隊運動を制御し如何に戦列を維持してシールド出力を下げないか。
艦隊戦の趨勢はこのようにして決定されていく。
遠距離から巡洋艦以上の等級の艦艇が持つ主砲、長距離粒子砲が火線を放つ。長距離粒子砲を備えていないそれ以下の艦艇は、シールド補強に全力を尽くす。ダメージ分散の比率を変え、巡洋艦などの攻撃可能艦艇の損害を出来る限り抑える必要がある。目まぐるしく位置を変え、防衛と補修を繰り返す。
放たれる主砲は、各艦艇が無秩序に砲撃しているわけではなく、艦隊司令が目標を定め、連携して狙っている。
帝国先遣艦隊は第三ルドラ軍艦隊の魚鱗陣形の先頭へ。
第三ルドラ軍艦隊は帝国先遣艦隊の中央部、戦列の綻びを狙って。
艦隊が組んだ隊列によってシールドを同調強化しこれに対抗していく。多少の被害は出るものの、未だ決定的な綻びは見えない。
第三ルドラ軍側の巡洋艦以上の艦数は十隻、帝国側は二十五隻。第三ルドラ軍側に弩級戦艦があるとは言え、その差は歴然だ。
それでもまだこの距離では決定打とは成り得ない。
お互いに陣形を維持したまま数時間という時間を費やしながら、距離だけが近付いて行く。
中距離にまでなると、今度は防戦一方だった駆逐艦のレーザー砲、フリゲート艦の実体弾主砲も有効射程となり、交わされる砲撃の数は加速度的に増えていく。
此処で選択した陣形による差異が現れる。
ルドラ軍側がほぼ中央に砲火を集中できるのに対して、横陣で広がる帝国側は角度の問題で先頭に集中しきれない艦艇が出始め、それらはサイドに斜めに展開した艦艇に砲撃することとなる。
正面から向かってくる艦艇を砲撃するのと、斜めに艦隊運動を繰り返しながら航行する艦を砲撃するのでは命中率が違う。
結果、帝国側の中央部とルドラ軍側の外縁部に被害が出ていくが、艦艇の数の差、砲門数の差が激しいのにも関わらず、損耗は拮抗していた。
「さて、そろそろ出番が近いぞ。グランヴァリエ隊は発進準備!」
此処まで何とか戦列に穴を開けずに艦隊運動を熟してきたレンドラン艦長が、コンバットスーツで待機する俺達に告げた。
間もなく近距離戦に入るのだ。
近距離は今迄の艦隊砲撃戦とは様相が大きく変わり、グランヴァリエや小型戦闘機が入り乱れて乱戦になる。
遠中距離では主にシールドの補強を行っていたフリゲート艦の役割は、この辺りから味方艦艇に敵のグランヴァリエや小型戦闘機を近付けさせないことに変わっていく。主砲よりも対宙砲火に重点を置くのだ。
巡洋艦クラスの装甲が簡単に抜かれるものではないのだけれど、シールドの効果半径より内側まで入られての攻撃ならば損害は出るし、当たり所によっては艦隊運動やシールドの維持に支障をきたす。そこから突き崩されるとあっと言う間に壊滅の憂き目にあうのだ。
ここが最も損害の発生する距離だ。
シールドの削り合いとも言える遠中距離砲撃戦と違い大破・中破する艦艇が次々と出てくるのだ。
艦内で感じる微妙な揺れが、乱戦に突入したことを知らせてくれる。
『グランヴァリエ隊、順次発進せよ。やることは分かってるな?』
「ええ。大丈夫です。しっかり守りますよ」
大尉に答えを返し、グランヴァリエを起動。
発艦許可を待って、開かれたハッチから外部へ機体を進める。余り乱暴にやるとデッキを痛めるので、ゆっくり目に歩行し、端まで来てから魔導スラスターでふわりと発艦する。外へ出て艦と速度を合わせ、順次出てきた僚機と配置につく。
マグスギアでやることは敵艦への攻撃ではなく、味方特に自艦の防衛だ。対宙砲火を潜り抜けてくる敵機を狙撃して撃墜するか追い返すのが主な仕事。
「戦闘機は当たれば落ちるだろうが、グランヴァリエはそうはいかない。無理に撃破する必要はないが、しつこく狙ってやれ。クリーチャー狩りの時の要領だ。俺が狙った機体を連続で狙撃して休ませるな! 推進剤を消費させてやれば帰るしかなくなる。あいつ等に無理して突っ込んでくる気概なんてないし、その理由もない」
『彼方さんにとっちゃ、勝って当然の戦争ですからねぇ』
『腰が引けてる奴なんて脅せば十分ってことですな』
「良く分かってるじゃないか。『ネラトル』に傷なんかつけさせるなよ?」
『了解です』
俺は左手に装備した大型の魔力式シールドを構え、その銃眼から突撃銃の狙いを定めて敵を待つ。
流石に同士討ちが発生する可能性がある核撃光槍は使用の許可が下りなかった。他の魔導ライフルも速射力や弾数に難があり、対宙防御には向かないので却下。大型艦艇の主砲とかじゃなければ弾く事が出来る盾と、弾幕用のラドグラ突撃銃を装備している。
視界の先に蛍のように舞い散るバーニアの噴射光や交差する光のライン、距離があるのか思ったよりも小さい火球が見える。爆発四散したのは艦艇か、グランヴァリエか、戦闘機か。瞬いては消える光達。
あの光一つ一つが誰かの灯火かと思うと何とも言えない気分になる。
「……来たぞ」
光の尾を引いて向かって来たのは『ケレス』一機と帝国の戦闘機『バルランサ』二機。
周囲の艦艇から放たれた対宙砲撃を躱したところを狙い撃って、二機の戦闘機を沈める。戦闘機の防御性能など無いに等しいので、掠っただけで爆発四散していく。
その間に、僚機が『ケレス』を翻弄。指示通りに休ませないよう砲撃を置いていく。近付けない位置で釘付けにしているところを狙って片足のバーニアに命中させ破壊することに成功した。撃破とはいかないが、慌てて撤退していったので問題はないだろう。
その後も散発的に来る敵機を撃破若しくは撤退に追い込み続ける。
最外縁とはいうものの後方なので、此処まで到達する敵機の数は知れている。この位置で敵がわんさか来るようならば、それはもう包囲が完成しているという事になるからだ。
射撃距離ギリギリの敵機にも牽制射撃を行い。流れ弾をシールドで弾く。
何とか『ネラトル』周辺に損害を出さずに過ごせている。
二つ目の予備弾倉が尽きそうなタイミングで母艦の艦橋へ通信を入れる。
「乱戦になってから、結構経ちますけれど、戦況ってわかりますか?」
『そうだな。正確なところまでは分からんが、概算だと双方一割損耗に届きそうなところか。今の処、優劣はない。同じ様なペースで損害が出ている。泥仕合の消耗戦だな』
「そうですか」
相手側にとっての一割と、此方側にとっての一割では意味が違ってくる。
此方側が一割損耗すると突破力が著しく落ちてしまうからだ。
その辺りに気付かれたら、忽ち包囲されて殲滅されるだろう。
総数が違うので、実数ならば帝国側の損害の方が多いのは確かだけれど、流石に此方が動ける内に三割の損害を叩き出す離れ業は無理だったようだ。
『おっと、敵さんが引き気味に陣形を変えるぞ。此方も中央突破を諦めて防御陣形に変更だ。砲撃戦に戻るかもしれん。一旦帰ってこい』
「了解」
何とか誤魔化しきれたようだ。
帝国側はこれだけ損害が出るとは思っていなかったのだろう。中距離から遠距離に近い位置まで戦線を下げて、再び長距離砲撃戦の構えを見せる。
実際のところ、損耗を気にせず追撃すればお互いの被害を拡大出来ていたが、戦闘前にアイザックが言っていたように無理に追うことはせず、帝国側の動きに合わせ、砲撃戦で戦闘を継続することを選んだようだ。
一番穏当なのはこのまま物資切れでの痛み分けって形だが……そうは上手くいかないだろうなぁ。
前夜のアイザックの苦しそうな顔が浮かぶ。
このままでは帰れないか……。
「レンドラン大尉……お願いがあります」
俺は行動に出ることにした。
☤ ☤ ☤
『ヘーベ』にバレルロールをさせながら、核撃光槍を二丁両手にそれぞれ装備してアステロイドベルトの中を突き進む。
ゼランタス宙域の外側、航行不能宙域を形成する小惑星とデブリが満ちた危険な場所。
右へ左へ。
機体を逆さにしながら小惑星の下を潜る様に。
互いに決定打が出難い遠距離での砲撃戦に戻ったと言っても、何時までもその状態が続くわけではない。物資の枯渇、戦列の崩壊、まぐれ当たりの只の一発であっと言う間に戦況が動く可能性もある。
時間はない。
ないことは分かっているが、それがどれぐらいないのかは分からない。
今出来ることは最速で此処を抜ける事だけだ。
無重力空間を慣性を生かし、断続的に魔導スラスターを起動させることで加速し続ける。
思考加速の世界にいてさえ、一歩間違えればそろそろ小惑星に激突してもおかしくない。
ギリギリで機体表面を掠めたデブリが斥力フィールドに弾かれ、高速で後方へと跳んでいく。
俺が隊の皆にお願いしたのは、単独での『セケトワン』への襲撃。
たかだかグランヴァリエ一機で軍事コロニーが落とせるなどとは欠片も思ってはいない。だが、映像で見たあの構造ならば、核撃光槍が命中しさえすれば多少のダメージは与える事が出来ると考えた。
宇宙空間での居住施設の損害というのは、それが僅かであっても、大きな被害に繋がる。何せ外装の隔壁の外に生物の生存可能環境はないのだ。気圧や温度、重力の変化、空気の流出。そもそもコロニーというのは微妙なバランスの上で運用されている。はっきり言って砲火が届いた時点で大問題なのだ。
『セケトワン』に損害が出れば、それが軽微であったとしても、先遣艦隊はじわじわと後退し、終いには撤退することになるだろう。帰る場所がなくなる可能性を看過できる航宙艦乗りはいない。
後退した時に、此方が追撃の構えを見せれば、下がるに下がれなくなるだろうが、それはないと断言できる。アイザックは敵が引いてくれるのならば、迷うことなく帰還を選択する。今、近距離乱戦から遠距離砲撃戦に戻っていることからもそれは確実。多少の損耗を与え撤退させたとなれば、戦果は十分だ。胸を張って帰れることだろう。
問題は、どうやってそこまで到達するかなのだけれど、宙域の外縁に沿ってアステロイドベルトを通れば、宙域図の上では到達可能だ。そこに敵艦隊は存在しない。
高速で流動する小惑星やその欠片、デブリ等を避けながら長距離を航海出来れば、である。
連続した回避機動を取りながら進むことは勿論、ここから『セケトワン』までの距離を通常のグランヴァリエや小型戦闘艇が踏破することは不可能だ。仮に障害物がなかったとしても推進剤や魔力が到底足りない。全体の一割も踏破出来ずに漂う宇宙ゴミとなるだろう。道中の回避機動はそれを更に助長する。
その上、それを全速でとなると、挑戦すること自体が無茶だ。
だが…………俺ならば。
俺がマグスギアを使えば。
少なくとも、推進剤や魔力の問題はなくなる。
「そんなことが本当に可能なのか?」
「確約は出来ません。ですが、失敗したとして損害はグランヴァリエ一機です。『ネラトル』の護衛が減ってしまいますが、そこは諦めてください」
「……少尉が色々おかしいことはクルー全員が承知している。出来るのかもしれないが……それは片道切符だぞ?」
当たり前の事だった。
コロニーの索敵範囲ギリギリから砲撃したとして、その後は直ぐに防衛戦力に無力化される。シールドを強化され二発目は届かない。あっと言う間に数えるのも馬鹿らしい数の砲撃が飛んでくることだろう。グランヴァリエ一機で抵抗出来るものではない。
「承知しています」
でも、そうしないと父が家に帰れないんですよ。俺がそう続けると、艦のクルーたちは一様に渋い顔をした後、黙って行かせてくれた。
「皆さん、生きて帰ってくださいね」
『ネラトル』に向けて、最後の通信を送った。
機体制御の限界まで加速した『ヘーベ』で小惑星を避けながら、出発前の一幕を思い返していた思考を引き戻す。
今は速く。少しでも速く。
我が艦隊が、撤退も出来なくなる損害を受ける前に。
直線状ではショートカットになるはずだが、それでも半日以上の時間を要した。
この間ずっと思考加速を発動し続けているので、体感ではもう考えるのも嫌なほどの時間が掛かっている。
機体の装甲をデブリに削られ、満身創痍の状態ではあるが、何とか航行不能宙域を抜け出した。
これ『ヘーベ』じゃなかったら、動けなくなっていたな。砲撃なんて無理だっただろう。流石将官用の上位機種。搭乗者の安全確保に余念がない。本当に希少金属に糸目を付けずに造ったんだな。何機製造したのか知らないけれど、勿体無いから乗ってやれよ。
光学補正に魔力補正までつけた視界ですら、小さく、遠くに構造物が浮かぶ。
「……やりますか」
以前ならば、こんな距離では掠める自信もなかったのだけれど……俺も成長したってことだね。
挙動の少しおかしくなっている『ヘーベ』の両腕を丁寧に操作し、左右同時に狙いをつける。一回撃てればいいのだ。後の事は気にしなくていい。
魔力導管を通じて魔導ライフルへ魔力を注いでいく。普段は抑え気味にしていたものを、今回に限っては限界まで注ぐ。範囲と威力を最大に。一回で魔導刻印が焼き切れてしまっても構わない。
臨界に達した魔導ライフルが聞いたことのない共鳴音を奏でだしたところで、ゆっくりトリガーを引く。
聴き慣れたヴァン、という古いネオン管に通電した時のような低いハムノイズとともに、銃口の少し先の空間に特大の魔法陣が投射展開され、二発の核撃光槍が発動する。
通常の何倍もの規模の光の槍が、空間そのものを震わせながら黒い宙を切り裂いていく。
発射の反動で魔導ライフルが自壊し、それを支えていた両腕も魔力の過負荷に耐えられず砕けて飛び散っていった。
役目を果たし両腕の砕けた機体が静かに漂う。
命中、しただろうか?
此処からでは確認する術はない。したはずだ。
遠くに見える構造物から、蜂の巣を突いたかのように小さな光の瞬きがぶわっと飛び出してくるのが見える。此処からだと小さな光だけれど、実際は……どうかな。
防衛戦力の緊急発進。
被害のほどは分からないけれど、砲撃されたことが認識されたのは間違いない。
光は見る間にその数を増やしていき……それらから放たれた光条が視界一杯に広がる。
流石にグランヴァリエ一機にその反撃は過剰じゃないですかね?
最後にそんなことを思いながら、俺の視界は迸る閃光の渦に呑み込まれ、その圧倒的な火力は、鉄壁なはずの不死者の王の魔法障壁でさえ押し止める事は出来なかった。
☤ ☤ ☤
その後、艦隊がどうなったのか、父アイザックや『ネラトル』の皆がどうなったのか、俺には分からない。
数か月もすれば情報が届くんじゃないかな。
上手く撤退出来ていればいいのだけれど……。
推測に推測を重ね、希望的観測まで加わっているので、本当に予想した結末が迎えられるのかは分からない。
あの時点では、俺にはあれ以上の事は出来なかったのだし、結果にまで責任は持てないので、御容赦願おう。
ここは辺境の通商コロニー。
猥雑な繁華街の一角にあるボロアパートの一室だ。士官養成学校を卒業して寄宿舎を追い出された後に拠点として借りていた。
勿論、棺桶のポイント指定のためだ。
ヨギ・オルレアンは『セケトワン』の対宙砲火で爆散し、作戦行動中行方不明となったことだろう。
家族は悲しむかもしれないが……許してほしい。
実際のところ、彼はもっと前に死んでいるのだから。
俺は不死者の王。
不老不滅のただの一匹のクリーチャーだ。
「んじゃ、溜め込んだクレジットで中古艦艇でも買ってミーレスにでもなりますかね」
俺を縛る柵は、もう存在しない。
これにて一応、この物語は終了となります。
時間を割いてくださった皆様、ありがとうございました。
では、また、次回の講釈で……。




