義理の兄(イケメン)が無愛想だが、私は絶対にめげないぞ!
冒頭と後半がすごく無邪気で可愛いですが、中盤が一番好きです♡
「こちらが咲良の兄になる、秀君、今16歳よ」
そう紹介されたお兄ちゃんは、容姿端麗という言葉が似合う人。笑えば良いのに、ずっと真顔でイケメンだとか、世の中不公平だなと思う。
「これからよろしくね、お兄ちゃん!」
「……」
興味なしかよ! どうせ私は平々凡々の容姿ですよ! 沢山の美女や可愛い子を見てきた? でも、再婚相手の娘くらい少し目を配って声をかけてもいいんじゃないかな!?
「えっと、これから妹になる咲良だよ! 今15歳! 敬語だと堅苦しいって思ったんだけど、駄目だったかな? 取り敢えず、よろしくね!」
「……よろしく」
声までイケボだったか……。世の中解せぬ。
「秀はちょっと静かなんだ。心では歓迎しているよ」
お父さん、フォローが辛いよ……。いい人なんだよ、お父さん。でも、傷に薬塗ったようなフォローしないで! 虚しいし悲しいから!
実はお父さん、大手企業の課長さんで、今39なんだとか。……20代にしか見えないんだよなぁ。しかもイケメン。何故お母さんがこんな好条件の旦那さんを連れてこれたのかは謎である。
「そうね、今日ははじめての顔合わせだし、緊張していない咲良が特殊なのかもしれないわね」
「お母さんの選んだ人の子供に緊張するも何もないもん、現にお父さん良い人だし……。そのDNA持ってるなら緊張も何もないもん!」
「それは嬉しいな」
お父さんがお母さんと顔を見合わせて笑ってる……。それを見て、本当に良かったなって思う私は……? お兄ちゃんは真顔でどこか遠くを見てるけれども!
「咲良、秀君、明日から同じ家に住むことになるけど、問題なさそう?」
「私は問題なしだよ!」
「……問題なし」
お兄ちゃんは……を入れないと会話できないみたいですね〜……。もうちょっと子供らしくてもいいんじゃないかな? ボケーっとするよりもお母さんとお父さん祝おうよ! そういう雰囲気だぞ!
「今日は解散にしようか」
「ええ、そちらに明日朝7時に行くわね」
「じゃあ、お父さんとお兄ちゃん、また明日!」
「父さん、母さん、えっと……妹? お疲れ様」
うん、私の名前忘れたな? 絶対に許さないからな? 私はお兄ちゃんの名前覚えてるぞ? 酷すぎるだろ、我が兄よ。
◆◆◆◆◆
「咲良! 酒! 酒持ってこい!」
「はい、今持っていきます。……お父さん」
「お父様……だろ?」
お父さんのグーがお腹に捻り込まれる。痛覚が鈍っているせいで、どのくらいの強さかわからないけれど、結構突き飛ばされたし、相当な力なんだろうな。
「……こちらでよろしいですか?」
「そうそう、わかるようになってきたじゃんか」
「お褒めに預かり光栄です」
「クーッ、うまいうまい、で、ババアはどうした?」
「……母は出かけています」
「男か?」
「違います、買い出しです」
「そうか、酒は?」
「買ってくるそうです」
「はやくにしろよ〜」
そう言ってから、穢らわしい手を腰に回してくる。気持ち悪い。でも、仕方がない。最初は痛かったけれど、今は何も感じない行為をして、そのままお父さんは寝る。それで良い。
お母さんに暴力を振るわないように、私が暗躍すれば、それで良い。お酒も、ちょっと遠いところにある不良の溜まり場のような酒屋で調達出来る。それでいい。はやく買いに行かなきゃ。
「あら、咲良ちゃん、またおつかいかい?」
「はい、頼まれちゃって」
「気をつけてね〜」
「ありがとうございます」
近所のおばちゃんは何かと私に気にかけてくるけれど、普通に接して、急いでいる風にしていれば逃れられる。はやく行こう。
その時、家の方から大きな音が鳴って……。急いで戻ると、お父さんが頭から血を流していた。
「た、助けろ、咲良……」
「え? やだ。死んで?」
さりげなく本心が出て、お父さんは意識を失う。私は、取り敢えず慌てるフリをした。その30分後くらいにお母さんが帰ってきて、急いで救急車を呼んでいたけれど、お父さんは助からなくて、息を引き取った。
お母さんは泣いていた。私はその時に漸く自分が父を殺したことを自覚した。その人のことをどれほど嫌いでも、殺してはいけない。なのに、殺した。後悔した。許されないことをしてしまった、ごめんなさいと、何度も何度も部屋で一人で言い続けた。
痛覚が戻っても、お酒を買いに行くのを辞めても、メイドみたいな行為を辞めても、殺したという事実から逃れられなかった。
だから、償いとして、聖人になった。無邪気で、人懐っこくて、誰からも好かれる聖人に。無邪気な思考回路を持つために、人懐っこくなるために、今までの行為を洗脳して、改めて。皆んなから好かれて、ここまで来るのは大変だった。
神様も、そろそろ許してくれるだろうか? 私の殺人を。
でも、偶にあの光景がフラッシュバックする。
「た、助けろ、咲良……」
「え? やだ。死んで?」
◆◆◆◆◆
ガバッと起き上がる。現在時刻は、朝の6時少し過ぎ。……また悪い夢を見た気がする。何の夢だっけ……? 忘れたけれど、今日も良い日になりそうな予感! 因みに、昨日は家に帰って風呂に入って、ベッドインだった。
あっ! お母さんを起こさなくっちゃ!
「おっはよ〜う! お母さん! 朝だよぉ!」
「ドタドタ朝から明るいわね、咲良は。まったく……。おはよう!」
にぱっとお母さんが笑う。守りたい、この笑顔。多分、この笑顔にお父さんは惹かれたのかもしれない、納得した。
「今日は軽めにフレンチトーストでいい?」
「ええ、ありがとうね、咲良」
いつも朝食は私が作る。いつ作れるようになったかは覚えてないけど……。ま、細かいことはいいよね! うん。
「……うん、美味しい。本当に料理上手ね、いつかできる咲良の旦那さんが羨ましいわ」
「へへ、それほどじゃないよー! 荷造りも終わっているし、あとはお父さんとお兄ちゃんの家にお邪魔するだけだね!」
お母さんがコクコクと頷く。気づけば、お皿にあったフレンチトーストはお母さんのお腹の中に入ってしまった。私も早くに食べよう!
「いただきまーす!」
口に入れると程よい甘さが広がる。今日も料理は満点かな! 美味しい!
「そういえばさ? 向こうの家でも私がご飯作るの?」
「どうだったっけ……あとで聞いてみるわね」
「うん! りょーかい!」
気がつくと私のお腹はいっぱいで、フレンチトーストは消えていた。お皿洗いを済ませて、いざ、戦場という名の新たなる家へ!
閲覧ありがとうございます!
無邪気になった無自覚ヒロインちゃんのお話でした!
可愛いですね、ふふふ。
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好評でしたら連載しようかな、なんて考えてます!