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✒　領主邸　８　／　中庭　８

マオ

「光（ひかり）の道（みち）を通（とお）って≪ 神（しん）界（かい） ≫から神（しん）民（みん）が大（たい）陸（りく）に降（お）りて来（き）て、大（たい）陸（りく）全（ぜん）土（ど）に広（ひろ）がるんだ。

　〈神（かみ）の遣（つか）い〉として、陸（りん）民（みん）達（たち）に〈久遠実成(大陸神／信仰神) 〉が定（さだ）められた大（だい）自（し）然（ぜん）の法（ほう）則（そく）と正（ただ）しい教（おし）えを弘（ひろ）めてくれるんだ。

　強（きょう）制（せい）じゃないから、自（みずか）ら求（もと）める者（もの）だけが〈久遠実成(大陸神／信仰神) 〉が定（さだ）められた大（だい）自（し）然（ぜん）の法（ほう）則（そく）と正（ただ）しい教（おし）えを學（まな）べて、〈久遠実成(大陸神／信仰神) 〉と意（い）(意（い）)思（し）(志（し）)の疎（そ）通（つう）をする為（ため）に必（ひつ）要（よう）な霊（れい）観（かん）を授（さず）かれるんだ。

　霊（れい）観（かん）がないと〈久遠実成(大陸神／信仰神) 〉の存（そん）在（ざい）もお力（ちから）(エネルギー)も感（かん）じられないし、〈久遠実成(大陸神／信仰神) 〉の御（ご）意（い）趣（しゅ）も正（ただ）しく知（し）る事（こと）が出（で）来（き）ないし、体（たい）験（けん）も修（しゅう）学（がく）も出（で）来（き）ないからな」

ゼリンネル

「 …………。

　想（そう）像（ぞう）も付（つ）かないよ… 」

マオ

「まぁ、実（じっ）際（さい）に見（み）てないと絵（え）に書（か）いた餅（もち）なんじゃないかな？

　オレだって実（じっ）際（さい）に〈神（かみ）の遣（つか）い〉を見（み）る迄（まで）は半（はん）信（しん）半（はん）疑（ぎ）だったもんな」

ゼリンネル

「マオは〈神（かみ）の遣（つか）い〉を見（み）た事（こと）あるの？」

マオ

「セロに頼（たの）んで…な？

　１日（にち）限（げん）定（てい）で〈皇（コウ）〉が治（おさ）めてる大（たい）陸（りく）に連（つ）れて行（い）ってもらった事（こと）があるんだ」

ゼリンネル

「マオ、其（そ）の話（はなし）、聞（き）きたい！

　聞（き）かせてほしい！」

マオ

「そうか？

　じゃあ、貝（かい）殻（がら）を返（かえ）して、剣（けん）術（じゅつ）の稽（けい）古（こ）した後（あと）でな！」

ゼリンネル

「 …………分（わ）かったよ… 」

　ゼル(ゼリンネル)は明（あき）らかに落（らく）胆（たん）している。

　綺（き）麗（れい）な貝（かい）殻（がら）を元（もと）の場（ば）所（しょ）に戻（もど）したゼル(ゼリンネル)は本（ほん）当（とう）に残（ざん）念（ねん）そうな顔（かお）をしている。

　そんなに貝（かい）殻（がら）が欲（ほ）しかったのかな？

マオ

「偉（えら）いぞ、ゼル。

　じゃあ、場（ば）所（しょ）を変（か）えよう」

ゼリンネル

「そうだな… 」

？

「 ──お待（ま）ちくだされ、マオちゃま」

　場（ば）所（しょ）を離（はな）れ様（よう）としたオレは誰（だれ）かに声（こえ）を掛（か）けられて、呼（よ）び止（と）められた。

　「誰（だれ）だ？」なんて野（や）暮（ぼ）な事（こと）は言（い）わない。

　だって、オレの事（こと）を “ マオちゃま ” って呼（よ）ぶ人（ひと）は領（りょう）主（しゅ）邸（てい）を探（さが）しても１人（り）しか居（い）ないからだ。

マオ

「どうかしたの、ジルじぃちゃん」

　ベテラン庭（にわ）師（し）のジルジットじぃさんだ。

　オレは親（した）しみを込（こ）めて “ ジルじぃちゃん ” って呼（よ）んでる。

　年（とし）寄（よ）りは生（い）きた先（せん）祖（ぞ）だから、優（やさ）しくしないとな！

ジルジット

「花（はな）園（ぞの）の手（て）入（い）れをしたいんじゃよ。

　ちょっち手（て）伝（つだ）ってくれんかの？」

マオ

「いいよ。

　ゼルと２人（り）で手（て）伝（つだ）わせてもらうよ」

ジルジット

「有（あ）り難（がと）うよ、助（たす）かる… 」

マオ

「拝（おが）まなくていいから！（////）

　何（なに）か運（はこ）ぶ物（もの）はある？」

ジルジット

「其（そ）処（こ）の貝（かい）殻（がら）を一（いち）輪（りん）車（しゃ）に入（い）れて花（はな）園（ぞの）へ持（も）って来（き）てほしいんじゃ」

マオ

「いいよ。

　一（いち）輪（りん）車（しゃ）とスコップはある？」

ジルジット

「農（のう）具（ぐ）庫（こ）にある筈（はず）じゃよ」

マオ

「分（わ）かったよ。

　ゼル、農（のう）具（ぐ）庫（こ）に行（い）って一（いち）輪（りん）車（しゃ）とスコップを取（と）りに行（い）くぞ！」

ゼリンネル

「其（それ）は構（かま）わないけど……、剣（けん）術（じゅつ）の稽（けい）古（こ）はしないのかい？」

マオ

「庭（にわ）師（し）の作（さ）業（ぎょう）もやり方（かた）次（し）第（だい）で剣（けん）術（じゅつ）の稽（けい）古（こ）になるんだよ。

　何（なに）気（げ）無（な）い日（にち）常（じょう）生（せい）活（かつ）だって意（い）識（しき）を変（か）えて動（うご）くだけで修（しゅ）行（ぎょう）になるし。

　ほら、行（い）くぞ！」

ゼリンネル

「分（わ）かったよ、師（し）匠（しょう）。

　行（い）こう」

　オレとゼル(ゼリンネル)は農（のう）具（ぐ）庫（こ）を目（め）指（さ）して走（はし）った。

　農（のう）具（ぐ）庫（こ）から一（いち）輪（りん）車（しゃ）を２台（たい）とスコップを２本（ほん）、拝（はい）借（しゃく）して貝（かい）殻（がら）が積（つ）まれている場（ば）所（しょ）へ戻（もど）った。

　スコップで貝（かい）殻（がら）を掬（すく）って、一（いち）輪（りん）車（しゃ）の中（なか）に入（い）れ終（お）えたら、一（いち）輪（りん）車（しゃ）を押（お）しながらゼル(ゼリンネル)と一（いっ）緒（しょ）に花（はな）園（ぞの）へ向（む）かって歩（ある）き出（だ）した。

　オレからしたら山（やま）盛（も）りの貝（かい）殻（がら）を一（いち）輪（りん）車（しゃ）に入（い）れる作（さ）業（ぎょう）は楽（らく）々(らく)だったけど、ゼル(ゼリンネル)には堪（こた）えたみたいだ。

　庶（しょ）民（みん）暮（ぐ）らしが長（なが）くて家（か）庭（てい）内（ない）菜（さい）園（えん）とか花（か）壇（だん）の世（せ）話（わ）をしていた経（けい）験（けん）者（しゃ）のオレと土（つち）弄（いじ）りすらした事（こと）のないボンボン王（おう）子（じ）の暮（く）らしをしているゼル(ゼリンネル)を比（くら）べたら駄（だ）目（め）だよな。

　手（て）加（か）減（げん）しないとゼル(ゼリンネル)が早（そう）々(そう)にへばっちゃうなぁ…。

　気（き）を付（つ）けないと！

　花（はな）園（ぞの）は前（ぜん）領（りょう）主（しゅ）の奥（おく）さんと庭（にわ）師（し）達（たち）の合（ごう）同（どう）傑（けっ）作（さく）らしい。

　現（げん）領（りょう）主（しゅ）の奥（おく）さんは花（はな）園（ぞの）に興（きょう）味（み）がないんだってさ。

✒ 領主邸 ８ ／ 中庭 ８

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